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愛した男が「性的不能」だったら……。切なくも凄絶な究極の恋愛小説。

  • 受賞第5回 島清恋愛文学賞

欲望

小池真理子/著

767円(税込)

本の仕様

発売日:2000/04/01

読み仮名 ヨクボウ
シリーズ名 新潮文庫
発行形態 文庫、電子書籍
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-144014-9
C-CODE 0193
整理番号 こ-25-4
ジャンル 文芸作品、文学賞受賞作家
定価 767円
電子書籍 価格 767円
電子書籍 配信開始日 2017/02/24

三島由紀夫邸を寸分違わず模倣した変奇な館に、運命を手繰り寄せられた男女。図書館司書の青田類子は、妻子ある男との肉欲だけの関係に溺れながら、かつての同級生である美しい青年・正巳に強くひかれてゆく。しかし、二人が肉体の悦びを分かち合うことは決してなかった。正巳は性的不能者だったのだ――。切なくも凄絶な人びとの性、愛、そして死。小池文学が到達した究極の恋愛小説。

著者プロフィール

小池真理子 コイケ・マリコ

1952(昭和27)年、東京生れ。成蹊大学文学部卒業。1996(平成8)年『恋』で直木賞、1998年『欲望』で島清恋愛文学賞、2006年『虹の彼方』で柴田錬三郎賞、『無花果の森』で2011年度芸術選奨文部科学大臣賞、2013年『沈黙のひと』で吉川英治文学賞を受賞した。代表的な長編作品に『狂王の庭』『虚無のオペラ』『瑠璃の海』『望みは何と訊かれたら』『ストロベリー・フィールズ』がある一方、短編の名手としても知られ、『水無月の墓』『夜の寝覚め』『雪ひらく』『玉虫と十一の掌篇小説』『Kiss』といった短編集も多数発表している。また、エッセイ集に『闇夜の国から二人で舟を出す』などがある。

インタビュー/対談/エッセイ

波 2005年11月号より 肉体を得る  『欲望』

小池真理子

欲望』
小池真理子


 昨年の四月半ば、私は自作のロケ現場を訪ねた。『欲望』(新潮文庫)のロケである。その日は、八王子にある豪邸の広々とした庭で、ガーデンパーティーのシーンが撮影されていた。
自作のロケを見学する、というのも初めてなら、自分の小説が映画化される、というのも初めてだった。何やら感慨深いひとときであった。
小説を書き始めて二十年以上。その間、自作がテレビドラマ化されたことは何度かある。他の女性作家たちと文芸誌に短編小説を書き、それがオムニバス形式で映画化されたこともあった(『female(フィーメイル)』新潮文庫)。だが、長編小説が単独で映画になったことは一度もない。
映画化のための打診は、幾度となく受けてきた。そのつど、今度こそ、という思いがあったのだが、どういうわけか、いつも途中で話はうやむやになり、あげくの果てに、企画そのものが立ち消えになってしまうのだった。
私の書くものは、総じて登場人物が少なく、心理描写が多い。どちらかというと「動的」なものより「静的」なもの、「開かれていく」ことよりも「閉じていく」ことに重きが置かれる。一般商業映画としては明らかに作りにくいし、成功させることが難しい。
心理というものは、小説の中で言葉を使って表現されてこそ、十全に描写できるのであって、映像は悲しいかな、小説に劣る。演じる、というのはひとつの行為にすぎず、行為だけでは人の心理の微細な綾は表現しきれないのである。
したがって、この先も、自作の映画化は難しいに違いない、と諦めるようになった矢先のことだった。『欲望』の映画化が決まった。
あまりにあっさり、何の問題もなく決まったせいだろうか。ああ、これが自作の初めての映画化になるのだ、と手を打ち鳴らして喜ぶというよりは、その事実をかえってぼんやりと受け止めて、しみじみとしていたことを思い返す。
それにしても、自作小説の映画化というものは、実際にその製作現場に居合わせると、なんとも照れくさく、ふしぎな感覚にとらわれるものだ。
私が頭の中で生み出した人物が、俳優たちの肉体を借りて命を吹きこまれていく。私が作品の中で彼らに語らせたセリフが、実際の音声となって耳に届いてくる。
私が与えた登場人物たちの名前を俳優たちが名乗り、その名前の役柄になりきって、しゃべったり、歩いたり、笑ったりしているのである。小説に魔法がかけられて、本の中から生身の肉体をもつ人々が飛び出してきたとしか思えない。
さて、作家はあくまでも自分の自由意志で書き、自分だけが好む世界を表現する。どれほど親しくて、どれほど理解ある編集者がそばにいても、基本的に、書く、という行為は作家ひとりのものだ。言ってしまえば、他者の協力など、不要なのである。
一方、映像にかかわる人たちは、俳優もふくめて、集団で仕事をする。ひとりでは映画を作ることができない。俳優がいて、監督がいて、脚本家がいて、道具係がいて、照明係がいて、カメラマンがいて、スクリプターがいる。彼らは集団芸術に携わっている、ひとつのチームなのだ。
それは、ひっそりとひとりで自分の内面世界を泳ぎ、表現しようとする作家の仕事と、対極を成す。私はそこにこそ、興味を覚える。
孤独に書き紡いだ自分の作品が、大勢の人たち……製作だけではなく、宣伝や営業もふくめれば、百人、あるいはそれ以上の人間たちの力を借りて、上映される運びとなる。そしてそれを人々が観る。「読む」のではなく「観る」のであり、「読む」ことを目的に書かれた作品は、その時点で完全に作者の手を離れ、まったく異なる表現形態を得るのである。こんなにおもしろいことがあるだろうか。
撮影終了後、関係者だけの試写会には二度、出席して、自作の初映画化の感動を味わった。スクリーンの中の俳優たちが、『欲望』の世界そのものを演じてくれているのを見ながら、ああ、ここには肉体がある、と嬉しく思った。自作が俳優の肉体を得る、ということほど、原作者を嬉しがらせることはない。
『欲望』は十一月に公開される。

(こいけ・まりこ 作家)

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