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純情―梶原一騎正伝―

小島一志/著

1,760円(税込)

発売日:2021/02/25

書誌情報

読み仮名 ジュンジョウカジワライッキセイデン
装幀 新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 286ページ
ISBN 978-4-10-301455-3
C-CODE 0095
ジャンル ノンフィクション、コミック
定価 1,760円
電子書籍 価格 1,760円
電子書籍 配信開始日 2021/02/25

超人気マンガ原作者はなぜ転落したのか? 〈漢(おとこ)〉の真の人生が明らかに!

昭和58年、梶原一騎は傷害や暴行の容疑で逮捕された。が、その背後には驚きの真実が隠されていた! 当時の取調べ担当刑事の告白など、徹底した取材で新事実が続々。警察と報道によって作られた横暴・乱暴のイメージを根底から覆す、圧巻のノンフィクション作品。謎に包まれていた「アントニオ猪木監禁事件」の詳細も。

目次
序章 逮捕前夜
第一章 仕組まれた罪
仏のカメさん/“留置人八五〇号”はみんなの〈大先生〉/事件の真相、起訴と不起訴のはざま
第二章 アントニオ猪木監禁事件
伏線、そして偶然と必然/当事者たちの証言/淫行と背徳の流布
第三章 高森朝樹から梶原一騎へ
出自と飛び交う噂/高森家の原風景/噂の〈高森三兄弟〉/挫折と夢の始まり
第四章 時代に牙をむいた男
夜明けの咆哮/力道山と大山倍達/浅草純情篇/祝福されない結婚
第五章 大山倍達との蜜月と訣別
キックボクシングと沢村忠/大山倍達への接近/『空手バカ一代』と二つの利権/『四角いジャングル』を巡る確執と憎悪/大山倍達の反撃、屈辱の敗北
第六章 スキャンダルの舞台裏
篤子の奇行と失踪/梶原一騎、排除の構造/最後の墓参り/絶望的な病魔/復縁、怒声と非難の嵐のなかで/亀澤優の証言より、篤子の薬物常習と実刑判決
終章 母と妻による二つの墓
三十五年後の『あしたのジョー』〈亀澤優の手記〉
あとがき
参考資料・文献

書評

まるでマンガのような“純”な人生

今田耕司

 小島一志さんが『純情―梶原一騎正伝―』で明らかにした梶原一騎さんの姿は、とても意外なものでした。いや、意外というより、梶原作品のファンとしては、うれしかったと言ったほうが正確ですね。梶原さんは、昭和58年に暴行などの容疑で逮捕されましたが、やはりファンとしてはショックでしたし、がっかりしました。梶原さんと言えば、ファッションが強烈で、それが世間に暴力的な印象を与え、いかにも裏社会とのつながりがありそうにも見えました。でもこの本を読んでみると、それは違った。
 純粋な人だった。うれしかったですね。
 僕が最初に梶原作品に夢中になったのは、「あしたのジョー」の再放送です。僕は小学生のときからブルース・リーが大好きで、それからプロレスもよく見ていました。極真空手の映画「地上最強のカラテ」も見に行きましたね。猪木vsアリ、ウィリー・ウイリアムスの熊殺し、猪木vsウィリー……。梶原作品では、『空手バカ一代』にハマり、『プロレススーパースター列伝』が大好きでした。それらの作品からは、梶原さんの「格闘技が好き!」という気持ちがよく伝わってきます。
 本書『純情』でも、梶原さんが強い男を探し求めて、力道山に出会い、大山倍達にめぐり会う様子が描かれています。その姿は、まるで目を輝かせた少年のようです。強いと思っていたキックボクサーが実はそうではなかったと知ってショックを受けたりして、それはぼくたち一般の格闘技ファンと変わりません。
 ぼくも格闘技が好きでジムに通っていますが、最初に行ったのは32~33歳のときでした。パンクラスというプロレスの道場の一般会員となりました。当時パンクラスが好きだったので、見学に行って、そのまま入ったんです。
 パンクラス旗揚げのすぐ後、アメリカでアルティメット大会という、ほぼケンカのような大会が始まりました。たいへんな衝撃でした。優勝したのは、体の小さな柔術家のホイス・グレイシー。一方で、体重290キロのエマニエル・ヤーブローがあっさりと負けちゃったりする。で、そのホイスが「兄貴はオレの10倍強いんだ」と言って、「兄貴? 誰?」と驚かせて、ヒクソン・グレイシーが登場してきた。ヒクソンは400戦無敗(!)だと言います。そしてプロレスラーの安生洋二がヒクソンの道場に殴り込みをかけて、やられちゃう。でもついには桜庭和志がホイス・グレイシーを破り……と、ほとんど梶原一騎さんが書いていた世界そのもののようでした。マンガ的世界が現実に現われたのです。そのとき梶原さんはもう亡くなっていましたが、あれを見たら、彼はどこをどう切り取って、いったい何を書いたのでしょうね。
 梶原さんの最後の作品『男の星座』は、自伝的作品で、そこで描かれている主人公は、不器用で、一途で、すぐにカッとなってしまったりします(内容には脚色があるのかもしれませんが)。『純情』で明らかにされている梶原さんの素顔と、その点ではよく似ているように思えます。
『純情』は、300頁近い大作ノンフィクションで、驚きに満ち溢れた作品です。終盤では、梶原さんが逮捕されたときに、実はかつての奥さんをかばっていたのだ、という衝撃的な事実が明らかにされます。さらに梶原さんは、まわりの大反対を押し切って、一度は別れた奥さんと再婚します。何を言われようと惚れた女をかばい通す、このストーリーは、まるで梶原さんの作品のようです。『愛と誠』を思わせる、ちょっとクサイくらいの梶原節ですが、彼は実際にそんな人生を生きた男だったんですね。
 ちなみに僕は、十数年前から、放送作家の鈴木おさむさんと舞台をやっています。4月からその第7弾(「てれびのおばけ」下北沢・本多劇場)に挑戦します。セリフも覚えないといけないし、憂鬱なんですが(笑)、舞台は、テレビやコメディの仕事とは違います。テレビの今田耕司のままではダメなんです。自分の内側の“何か”が表出しないと、見ている人に伝わるものがない。それは梶原さんの作品にも通じるものがあるのかなと感じます。少年のように強い男に憧れて、純粋で、不器用で、惚れた女には一途。だからこそ、あれほどの名作の数々が書けたのではないでしょうか。彼の内なる「純情」が作品に立ち現れていたのだと、そう思うのです。

(いまだ・こうじ お笑い芸人)
波 2021年3月号より
単行本刊行時掲載

著者プロフィール

小島一志

コジマ・カズシ

栃木県出身。県立栃木高等学校、立教大学社会学部(中退)、早稲田大学商学部(産業社会学専攻)卒業。無外派磐城流居合術・剣舞目録。柔道・極真空手弐段。武徳会柔道(椎名道場)初段。芦原裏殺SABAKI・一撃会主宰。(株)MUGEN代表。作家。著書『大山倍達正伝』『大山倍達の遺言』『芦原英幸正伝』他30余冊。

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