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「まだセンチメンタルな旅は終わっていない」――写真で綴る処女小説。

死小説

荒木経惟/著

2,052円(税込)

本の仕様

発売日:2013/10/31

読み仮名 シショウセツ
雑誌から生まれた本 新潮から生まれた本
発行形態 書籍
判型 A5判変型
頁数 216ページ
ISBN 978-4-10-380010-1
C-CODE 0072
ジャンル 文芸作品
定価 2,052円

震災後、被災地に赴いてカメラを向けることをかたく否定し、あくまでも都会に留まりながら、ひたひたと押し寄せる死の気配を写し取ることを選んだ荒木。自身もまた年齢を重ね、癌に冒されながら、生の中にある死を、日常の中にある此岸と彼岸をカメラで切り取ってゆく――写真家が本気で「書き」下した、写真による死(私)小説。

著者プロフィール

荒木経惟 アラキ・ノブヨシ

1940年東京都台東区三ノ輪に生まれる。1963年、千葉大学工学部写真印刷工学科卒業。同年、(株)電通に入社。1964年、「さっちん」で第1回太陽賞受賞。1971年、電通に勤めていた青木陽子と結婚、新婚旅行を撮影した『センチメンタルな旅』を限定1000部で自費出版。1972年よりフリーに。以来、妻・陽子との生活や東京の情景、過激なヌード作品などを次々に発表。写真界のみならず社会をも揺るがす「天才アラーキー」として広く認知されるようになった。欧米では「グラン・マエストロ」(大巨匠)と称され高い評価を受ける。2008年、オーストリア政府より科学・芸術勲章受章。また2002年より日本全国の人たちの肖像写真を撮影する「日本人ノ顔」プロジェクトを続けている。主な展覧会は「Tokyo Comedy」(セセッション、ウィーン/1997年)、「センチメンタルな写真、人生。」(東京都現代美術館/1999年)、「ARAKI:Self,Life,Death」(バービカン・アート・ギャラリー、ロンドン/2005年)、「東京人生 東京人生、写真人生、Aノ人生」(江戸東京博物館/2006年)ほか。主な著書に『さっちん』『センチメンタルな旅・冬の旅』『荒木経惟 トーキョー・アルキ』(すべて新潮社)、『愛しのチロ』(平凡社)、『空』『東京ゼンリツセンガン』(すべてワイズ出版)、『広島ノ顔』(荒木経惟「日本人ノ顔」プロジェクト)、“ARAKI”(Taschen)、“ARAKI:Self,Life,Death”(Phaidon)などがある。

公式ホームページ (外部リンク)

インタビュー/対談/エッセイ

波 2013年11月号より 死を生きる

荒木経惟

『死小説』たって、別に遺書というわけじゃないよ(笑)。自分が癌になったり、3・11があったり、確かに直接的な「死」が身近にあったことは確かだけど、でもそんなことを意識する前から――もしかしたら生まれた時から――「死」は私の中に染み込んじゃってるんだよね。「小説家」として言うなら、「死を生きてきた」。
死に惹かれるというのは、確かにある。死というのは、どんな時でもドラマチックだよね。昔、昼間っから日が落ちるまで、お寺の墓地でずっと一人、枯れていく彼岸花を撮ったことがある。「朽ちていく」とか「消えていく」とか、そういうものに惹かれるというか、要するに未練がましいんだよ。
「死を生きる」というテーマを小説で表現するとき、小説家は主人公の心情を時の流れに沿って言葉にしていく。私はそれを写真でやってみたかったんだ。昔から写真集のタイトルに「小説」はよく使ってきた。『写真小説』、『小説ソウル』……『断腸亭日乗』にならって『包茎亭日乗』なんてのもある。小説とか日記とか、そういうのを写真でやってみたいという気分はずっとあったんだ。
一枚の写真で一語、一行を語る。一章でもいい。今回は二〇九枚の写真を、撮った順に並べただけ。編集だとか、構成だとか、デザインだとか、そんなことはいっさいなし。撮った順の流れ自体に、ドラマというか、物語があったから、そこにストーリー、つまり「小説」が生まれた。「時代」って言ってしまうと大げさだけど、その時その時に起こったことを連ねることが、「時の持続」なんだ。その流れは、最初の『センチメンタルな旅』から始まって、今も続いている。「センチメンタルな旅」はまだ終わっていないんだ。
「流れ」は、自分で決めるものじゃなくて、大げさにいえば神が決めてくれること。「次はこういう女の人が登場してくれるんだよ」とか、「この女は去っていくぞ」とか、小説だと作家が考えて書いていくでしょう。でもそうじゃなくて、誰かに決められたものを、私がなぞっているだけ。だから「創作」というよりは「翻訳」だね。人と人との関係とか、時代との関係とか、それがどうなったということじゃなくて、その時のそのままの姿。私は、基本としては何か感じたらシャッターを押す、考えるな、っていう主義だから。あとは、この「神の指」に頼るだけ。写真機で歪曲しちゃダメなんだ。そのまんま即、写す。
今回は、雑誌の隔月の連載でやったのが、案外よかったのかもしれない。二ヵ月に一回、その流れに従って、時がストーリーする、というか小説する、そういう感覚で膨らんだものなんだ。たった一ヵ月前、二ヵ月前の自分自身に触発されて続けられたことも、いい方向に導いてくれた。
写真っていうのは、その瞬間に表現されちゃう。まず被写体を呼ぶ。写真家はワクワクするじゃない。それを撮ると、今度は「写真」がワクワクさせる。見る人をワクワクさせるんだ。だから「見せるとき」が写真家の「表現」なんだ。
近頃はみんな一生懸命、見せるための工夫をするでしょう。写真集にする、写真展をする、アップする……そうするうちに、写真を加工したりして、現代アートってやつになっていってしまう。デジタルがそんな風潮に拍車をかけた。でも、そういうのじゃなくて、もう一度原点に戻って、被写体に出会ったときの最初のワクワクがそのまま写った「写真」というものを、私は見せたかったんだ。
せっかくその時の面白いこととか、つまらないことがあったのに、編集して、意図的に流れを作ろうとか、結論を出そうとかしちゃだめなんだ。そのまんまだからいい。朝見る朝顔と夕方見る朝顔は違うでしょう。それくらい、単純なことなんだ。そこにもしストーリーや物語が生まれたとしたら、それは時代が、時が味方してくれたってことなんだろう。
淡々と撮っていくしかない。それが私においては生きていることだから。それの報告しかない。私の場合、どうせ、考えてやってないからいいんだ。見る人によって、見る時によってストーリーが変わる。それでいい、それがいい。
それにしても、この本、かなりいいよ! 帯に「芥川賞受賞(予定)」って載せたいね。(談)

(あらき・のぶよし 写真家)

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