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「友だち」の意味、やっとわかったよ――心を揺さぶる、珠玉の長篇!

  • 映画化きみの友だち(2008年7月公開)

きみの友だち

重松清/著

1,728円(税込)

本の仕様

発売日:2005/10/21

読み仮名 キミノトモダチ
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 318ページ
ISBN 978-4-10-407506-5
C-CODE 0093
ジャンル 文芸作品、文学賞受賞作家
定価 1,728円

頭がよくてちょっと意地悪な恵美ちゃんと、何をやってもぐずな由香ちゃんは、ある事故が起きてから誰とも付き合わなくなった。勉強もスポーツも抜群でライバル同士だったブンちゃんとモトくんは、あることがきっかけで全然チグハグになった。それでも……衝突や痛みや喪失を乗りこえて輝く「友だちという関係」を描く最高傑作。

著者プロフィール

重松清 シゲマツ・キヨシ

1963(昭和38)年、岡山県生れ。出版社勤務を経て執筆活動に入る。1991(平成3)年『ビフォア・ラン』でデビュー。1999年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、同年『エイジ』で山本周五郎賞を受賞。2001年『ビタミンF』で直木賞、2010年『十字架』で吉川英治文学賞、2014年『ゼツメツ少年』で毎日出版文化賞を受賞。現代の家族を描くことを大きなテーマとし、話題作を次々に発表している。著書は他に、『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『きみの友だち』『カシオペアの丘で』『青い鳥』『くちぶえ番長』『せんせい。』『とんび』『ステップ』『かあちゃん』『きみ去りしのち』『あすなろ三三七拍子』『ポニーテール』『空より高く』『また次の春へ』『赤ヘル1975』『一人っ子同盟』『たんぽぽ団地のひみつ』など多数。

書評

波 2005年11月号より ここに私もいる  重松清『きみの友だち』

角田光代

 読みやめることが、できなかった。次の章、次の章へと、気ぜわしくページをめくった。いつ私自身が登場するか。小学生の、中学生の、いや、大人になってなお変わらない部分を持つ私が、次の章にもあらわれる気がして。
この小説が描き出すのは、学校、という過酷な場所である。読みはじめてすぐ、私はその場所がいかに過酷であったかをまざまざと思い出した。それは、経験や体験とはまったく関係がない。私は学校において過酷な体験をしたことがない。過酷だと、意識したこともない。それでもなおかつ、やはり学校は過酷な場所だったと、この小説を読んで思う。過酷さの原因は何か、といえば、関係だったのだと気づかされた。自分と他者との関係。「見る自分」と「見られる自分」の関係。ひとり、対みんな、の関係。
小説には、八人の「きみ」が登場する。「きみ」は、小学生だったり、中学生だったりする。ものしずかだったり、クラスの人気者だったりする。どんな子どもでも、しかし等しく重たい荷を背負っている。作者は、彼らの背負った荷の重さを、生々しくて目をそらしたくなるほど、リアルに描き出す。大人の目で俯瞰せず、安易な風穴も空けず、子どもっぽい言動を大人の力で断罪せず、淡々と描き出す。教師も、両親も、彼らの背負った荷を軽くすることはできない。彼ら自身が、どうにか工夫して、荷を降ろすか、重さに慣れるか、するしかないのである。八人の「きみ」は、そんなふうに、孤独に闘い続けている。
彼らの孤独を描きながら、作者は、友だちとは何か、というじつにシンプルな問いを投げかける。何度も、何度も。もちろん、この小説は道徳小説ではない。こういう人をこそ友だちと呼べる、などと定義づけているわけではない。作者が書くのはもっと根元的なこと――多大なプレッシャーを覚えながらもなぜ私たちはだれかと関係を結ばざるを得ないか、何を守るために闘い続けているのか――、学校という場所を出ていっても、生きていくかぎり私たちが逃れることのできないものごとである。
「みんな」という言葉がくりかえし出てくる。読み進むにつれて、そのなじみ深い言葉が、得体の知れない不気味なものに思えてくる。私が中学生のとき、口裂け女という都市伝説がものすごい勢いで流行し、当時、教師たちまでが、遅くまで学校に残るなとか、ひとりで下校するなとか、至極まじめに注意していたことを思い出す。実体の真偽がわからないのに、全員の共同幻想が、たしかに作り上げ存在させてしまう何か――「みんな」が、そんな何ものかのように、感じられてくる。
一方、「みんな」から解放された子どもが二人、登場する。恵美と由香。第一章に登場する彼女たちは、ほかの七人のエピソードにときおり登場する。七人の日々を読みながら、読み手は、彼女たちがどのようにして「みんな」というものを壊し、そこから脱却していったかが、うっすらと理解できるようになる。
ほかに友だちを作ろうとしない彼女たちの姿は、「みんな」というものの正体を暴くヒントを落としていく。彼女たちが言葉で何か伝えるわけではない、「みんな」に怯える子どもたちが、勝手にヒントを拾うのである。そのヒントによって問題はすべてクリア……作者は当然そんなふうには書かない。「みんな」の実体を垣間見たような気がしても、明日にはまた、共同幻想の作り手に戻らなければならない。そのようにしかできない子どもの姿を、作者はある肯定をもって、そのように描くのである。
いつ私自身が登場するか。びくびくしながら、しかし夢中で読み進み、そうして私は「私」に出会った。作者のことがちょっとこわくなった。この人私と同じ学校にいて、私のことを見ていたのだろうか(私は女子校なのでそんなはずは絶対にないのだが)、と本気で不安になった。小説に登場する中学生の私は、未だに私のなかにいる。読みながら泣いたのは、私のなかの、その部分だ。今はずっと遠くに感じられる、私の抱えていた孤独に、闘いの厳しさに、それでもそこをくぐり抜けたささやかな勇敢さに、私の内にいる中学生は、泣いた。
ところで、この小説のなかでは、最終章をのぞき、恵美が小学生の時代と、恵美の弟のブンちゃんが高校生の時代とを、時間が大きく行き来している。感服したのは、その時代の風俗をまったく登場させず、それでも時代の変化を書ききる作者の技である。恵美の小学校時代の、どこか牧歌的な感じ、ブンとモトの、今により近いあわただしい時間、それらをこと細かくかき分けながら、しかしもっと感服すべきは、時代の変化のなかで決して変わることのない本質をも、作者が浮き彫りにしていることだ。だからたぶん、二十年後、五十年後も、子どもたちはこの小説をリアルだと思うだろう。これから大人になってゆく読み手は、やっぱり、どこかしらに自分を見つけてしまうだろう。

(かくた・みつよ 作家)

判型違い(文庫)

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