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こんな小説を待っていた! 僕らの世代の新しい文学。新感覚青春ミステリ。

  • 映画化重力ピエロ(2009年5月公開)

重力ピエロ

伊坂幸太郎/著

1,650円(税込)

本の仕様

発売日:2003/04/22

読み仮名 ジュウリョクピエロ
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 338ページ
ISBN 978-4-10-459601-0
C-CODE 0093
ジャンル 文芸作品
定価 1,650円

連続放火事件の現場に残された謎のグラフィティアート。意味のない言葉の羅列に見える落書きは、一体何を意味するのか? 偶然事件に巻き込まれた兄弟とその父親が暗号解読に乗り出すが――。オーソドックスだけど古くない、地味で大人しいけど胸躍る。本当にカッコイイとはこういうことだ! 我らが同時代文学、堂々誕生。

著者プロフィール

伊坂幸太郎 イサカ・コウタロウ

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部を卒業後、2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビュー。2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で吉川英治文学新人賞、「死神の精度」で日本推理作家協会賞短編部門、2008年『ゴールデンスランバー』で山本周五郎賞と本屋大賞、2014年『マリアビートル』で大学読書人大賞を受賞。他の作品に『AX』『サブマリン』『陽気なギャングは三つ数えろ』『火星に住むつもりかい?』『ラッシュライフ』『重力ピエロ』『首折り男のための協奏曲』、阿部和重氏との合作『キャプテンサンダーボルト』などがある。

書評

波 2003年5月号より 寓話から寓意を引いて残るもの  伊坂幸太郎『重力ピエロ』

本多孝好

 これは、ミステリではない。青春小説でもないし、家族小説でもない。
と、そう言い切ってしまうと語弊があるのかもしれない。主人公と、母親がレイプされて生まれてきた弟(だから、主人公とは半分しか血のつながりがないのだけれど)と、その二人を温かく見守る、あるいはその二人に温かく見守られる父親(だから、弟のほうとは血のつながりはないのだけれど)と、三人の周囲で起こる連続放火事件のお話なのだから、ミステリ的趣向もちりばめられているし、青春小説の楽しさも、家族小説の微笑ましさも含まれている。本を開いた途端、思わせぶりな規則性から連続放火事件の真相を読み解こうと登場人物たちがやっきになって駆け回り、ときに世界の成り立ちと人の有り様との無神経な乱雑さに心から苛立ち、またときには家族というものの脆弱さに立ち止まって、思い悩む。だから、読者がこの本にミステリであることを求めるのならそれもいいと思うし、青春小説や家族小説であることを期待するのならそれも間違っていないと思う。テンポのいい文章があり、ウィットがあり、そのウィットに対する照れもあるから、嫌味がない。ミステリとしても、青春小説としても、家族小説としても、十分に楽しめる小説である。それでも僕は一読者として、勝手な感想を言わせてもらう。これはミステリではないし、青春小説でも、家族小説でもない。そういう体裁をまとうことを拒否しているのではないか、とすら思う。作家が、ではない(作家のことなんか知ったこっちゃない)。物語が、である。物語が、そういう体裁をまとうことを拒否している、と僕は思う。
では、この小説は何なのか?
それも知ったこっちゃない、と、そう言い切りたい。言い切りたいけど、そう言い切ってしまうと、話はそこで終わってしまう。みんな、読んでね、で終わり。この欄が埋まらない。この欄が埋まらなくたって、基本的には誰も困りはしないだろうし、空白を見ると埋めたくなるほど、僕は神経質でも偏執的でもない。だから、いっそ、「僕は読んだ。面白かった」で終わりにしちゃえばいいのかもしれない。けれど、そうなると、神経質で偏執的な編集者氏はこの欄を別な言葉で埋めようとするだろう。それはちっとも構わないのだけれど、別な人が別な言葉でこの欄を埋めると、その報酬は別な人の元に入る。それもちっとも構わないけど、癪である。だから、僕の言葉で埋めてしまおう。
これは寓話である。しかも寓意のない寓話である。
僕の言葉で言うなら、そういうことになる。
寓意のない寓話に意味があるのか?
そう聞かれたら、僕は胸を張って答える。
ない。
そう。この物語に意味はない。そう言い切ってしまうと、また語弊があるのかもしれないけれど、本質的に物語に意味なんてないものだ、と、僕はそう思っている。優れた物語は意味を必要としないものだ、と、そうも思っている。意味のない物語にも、けれど効用はある。読んだ人を楽しませる、という効用がある。それで十分だと思う。この小説は楽しい。主人公も楽しい。主人公の弟も楽しい。癌で死にかけているお父さんも楽しい。弟にまとわりつくストーカーの女の子ですら楽しい。これは楽しい小説である。重力から解放されることを夢見るピエロたちの話なのだから、楽しいに決まってる。たとえそのピエロの頬に涙のメイクがほどこされていたとしても、だ。この物語がかもし出す楽しさを、そこにある笑顔の健やかさを、それが作り出す人の性の美しさを、僕は信じる。
物語はか弱い。周囲が突きつけてくる現実に比べて、物語の力はとてもか弱い。本は閉じてしまえば、それで終わり。僕には僕の現実がある。ライフ・ゴーズ・オン。人生は続く。そういうものである。そこに他者の紡ぐ物語が関われる部分はとても小さい。それでも人は小説を読む。読まない人も多いけれど、読む人は読む。そこに求めるものは、意味なんかじゃなく、物語そのものなのではないかと思う。少なくとも僕はそうである。僕の人生とは違う、もう一つの物語。それに浸りたくて、あるいはそれを無責任に楽しみたくて、僕は小説を読む。
もう一度繰り返す。これは楽しい小説である。その物語に浸って、無責任に楽しむことを許してくれる一冊である。

(ほんだ・たかよし 作家)

判型違い(文庫)

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