TEDトーク 世界最高のプレゼン術
1,320円(税込)
発売日:2013/07/18
- 書籍
- 電子書籍あり
聴衆を魅了するスーパープレゼンテーションのテクニックをあなたに伝授。
ビル・ゲイツ、アル・ゴア、ジェフ・ベゾス、ボノ、ジェームス・キャメロン、マイケル・サンデル、シェリル・サンドバーグ──。世界の一線で活躍する著名人が、最上のプレゼンを披露するイベント「TED」。中でも選りすぐりのスピーチを12のポイントから徹底分析、ストーリーの組み立て、話し方など、その極意を解き明かす。
普通の人でも、感動のスピーチができる
「TEDの十戒」から、何をどう学ぶか
Part I CONTENT, STORY, & STRUCTURE
相手の心を動かす近道
オバマ演説に学ぶ、コアメッセージの作り方
【要点】
アイデアは短いキャッチフレーズで伝えよう
対照的な2文は並べる順序が大切
【要点】
必ず自分の紹介原稿を用意する
紹介とスピーチのトーンをシンクロさせる
【要点】
聴衆をドキッとさせて、心をつかめ
効果的なのは「なぜ」ではじまる質問
プレオープニングで会場のテンションをコントロール
絶対に役に立つ「3つの◯◯」
オープニングでやってはいけないこと
【要点】
メインパートは3つのセクションで
スピーチの構造は3つのタイプから
論理的な事実と感情に訴えるストーリーの組み合わせ
話題の移動には時間とテクニックを使おう
【要点】
終わりが近いことを明確に知らせる
締めくくりをめぐる“永遠の論争”
【要点】
決して語り手がヒーローになるな
キャラクターを上手く使い、聴衆をストーリーに引き込む
「苦難を克服」で、聴衆を心の旅に連れて行こう
【要点】
Part II DELIVERY & DESIGN
「えーっと」「あのー」を防ぐには
つねに「あなた」という言葉を使おう
【要点】
ジョークの頻度は1分間にひとつ
笑いを取る秘訣は、より多くのジョークを試すこと
【要点】
棒立ちにならないように自然なジェスチャーで
笑顔を絶やさず、まっすぐに立ち、聴衆とアイコンタクト
ステージ上を動く際のテクニックと注意点
【要点】
“ゴーディン・メソッド”と“高橋メソッド”
あなたのメッセージに合った書体を選ぶ
スライド「3分の1」法則を活用しよう
【要点】
冒頭は暗記し、概要を書いたメモを用意する
【要点】
書誌情報
読み仮名 | テッドトークセカイサイコウノプレゼンジュツジッセンヘン |
---|---|
発行形態 | 書籍、電子書籍 |
判型 | 四六判 |
頁数 | 208ページ |
ISBN | 978-4-10-506491-4 |
C-CODE | 0098 |
ジャンル | ビジネス実用 |
定価 | 1,320円 |
電子書籍 価格 | 1,320円 |
電子書籍 配信開始日 | 2014/03/28 |
書評
TEDという「黒船」に対する傾向と対策
私もいつの間にか五十歳で、この年になると緊張はめったにしない。それはむしろ寂しいことでもあって、脳科学的に言えば、自分の今までの経験の幅を超えた新しい挑戦に、向き合う機会がなかなかないということである。
そんな私が、かつてないくらいのプレッシャーを感じる舞台があった。二〇一二年二月二九日。米国、カリフォルニア州ロングビーチ。年に一回開かれているTEDのメインステージで、三分間のスピーチをすることになったのだ。
NHKの番組「スーパープレゼンテーション」などを通して、日本でも広く知られるようになったTED。TEDには、ロングビーチで行われる「本会議」と、さまざまな場所で開かれるTEDxと呼ばれるイベントがある。TEDの本会議のメインステージで話したのは、どうやら日本人ではその時の私が初めてだったらしい。
なぜ、たった三分のスピーチで、そんなに緊張していたのか。それだけ、TEDのメインステージの「家賃」が高いということ。ビル・ゲイツ氏やアル・ゴア氏などの超有名人が登壇し、客席にもキャメロン・ディアス氏などの「セレブ」がちらほら、という雰囲気も当然関係する。
より本質的なのは、TEDで求められているスピーチのレベルが、極めて高いということ。出だしからトップ・スピード。自然に、しかし集中して。米国の心理学者チクセントミハイの言うところの「フロー」状態で、「広めるに値するアイデア」を聴衆に伝える。「内気な人にも言い分がある」といった、誰にでも思い当たり、共感できる身近な話題から、貧困や格差の解消などのグローバルな課題まで、カバーされるテーマはさまざまである。
TEDのメインステージは、内容的にもパフォーマンスにおいても、最高水準が求められるいわば「トークのオリンピック」。そのTEDの舞台で、二〇一一年の東日本大震災の経験と、そこから立ち上がる日本人の強靱な精神についてスピーチをする機会が与えられたことは、私の人生の中でも特筆すべき体験だった。
TEDが今注目されているのは、それが、日本の「講演文化」に対する一つの「黒船」だからだろう。何事も根回しが得意な日本人。聴衆の前でのスピーチも、人間関係や、社会のしがらみに気配りしたものが多い。
一つの芸とは言えるが、そこに「広めるに値するアイデア」があるとは限らない。また、たとえ「広めるに値するアイデア」があったとしても、余計な配慮が働くことで、かえって伝わりにくくなってしまう。
「来賓」が紹介され、なんだかわかったような、わからないような儀礼的な話をする。「偉い」先生に限って、自慢話に終始したり、つまらないジョークをくどくどと言い続ける。そんなスピーチ文化に慣らされている日本人にとって、確かに、TEDのトークは衝撃的である。
組織も、肩書きも関係ない。意味があるのは、伝えるべきアイデアだけ。そのアイデアをいかにわかりやすく、ストレートに伝えるか。人類の文化が進化する、壮大な実験場。TEDは「二一世紀のハーバード大学」という声があるのも頷ける。
この度刊行される『TEDトーク 世界最高のプレゼン術』は、原書が出版された時から注目し、読んでいた。数々のトークの中でも、人気の高いものを厳選し、その秘密を探る。一つの科学的なアプローチであり、その分析結果は大いに参考になる。
自身の体験から説き起こす「パーソナル・ストーリー」。聴衆に衝撃を与える「ショッキング・ステートメント」。そして、「インパクトのある質問」。これらの基本的な要素を押さえつつも、敢えて、ロビンソン卿の教育改革に関するトークのように、期待を「外す」ことの価値まで説く。TEDという「黒船」に対する傾向と対策、そして、自身のプレゼン術を大幅にヴァージョンアップするノウハウ本として、必読であろう。
ところで、日本に造詣の深いTED関係者と話していて、意外なことを言われた。「TEDって、日本の居酒屋みたいなものさ!」
さまざまな話題が、おつまみのように並ぶTEDは、確かに居酒屋の雰囲気に似ている。TEDは日本人にとって思ったより身近な存在かもしれない。『TEDトーク 世界最高のプレゼン術』は、ぜひ気楽に、リラックスして読んでいただきたい。あなた自身の「広めるに値するアイデア」が見えてくるはずだ。
(もぎ・けんいちろう 脳科学者)
波 2013年8月号より
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著者プロフィール
ジェレミー・ドノバン
Donovan,Jeremey
米国コネチカット州スタンフォードに本拠を置くIT分野のリサーチ・アドバイザリ企業、ガートナー社(Gartner)のマーケティング担当副社長。TED×イベントのオーガナイザーであり、講演家でもある。トーストマスターズ・インターナショナルのメンバー。著書に『Speaker,Leader,Champion:Succeed at Work Through the Power of Public Speaking,Featuring the Prize-Winning Speeches of Toastmasters World Champions』(Ryan Averyとの共著/未邦訳)がある。
中西真雄美
ナカニシ・マユミ
翻訳家。大阪外国語大学卒業。主な訳書に『TEDトーク 世界最高のブレゼン術』(基礎編)、『世界の一流だけが知っている 成功するための8つの法則』(以上、新潮社)、『ザ・プレゼンテーション』(ダイヤモンド社)、『情報を捨てるセンス 選ぶ技術』、『脳が教える! 1つの習慣』(以上、講談社)などがある。