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毒親の棄て方―娘のための自信回復マニュアル―

スーザン・フォワード/著 、羽田詩津子/訳

1,650円(税込)

発売日:2015/10/30

  • 書籍

「毒親」の名付け親、Dr.スーザンが贈る、“母娘問題”最終解決メソッド。

恋人やパートナーと長続きしない、夫婦や家族関係がうまくいかない、仕事のトラブルが続く……そんな貴女、母親との問題を抱えていませんか? ベストセラー『毒になる親』の著者が、自己チュウ、過干渉、ネグレクト……愛のない母親に苦しむ娘たちに、解決への道筋を具体的に明示する。娘たちよ、人生を切り拓く勇気をもとう!

目次
まえがき

第一部 母親から受けた傷を確認する

一章 母親の愛情を疑問視することのタブー「母親を悪く言うことは決して許されない」
他人はあなたが見ているものを見ていない
いかに母親の拒絶が自己の一部になるか
タブーと対決する
パターンを繰り返すこと

二章 きわめて自己愛の強い母親「だけど、わたしはどうなるの?」
自己愛の範囲
三つのD――ドラマ(Drama)、偏向(Deflection)、拒絶(Denial)――を持つ女性
デーナ――メロドラマの主人公に人気をさらわれ、無視された
崇拝に対する中毒
批判をそらすことは防御になる
嘘をつく、正気ではないと思わせる、否定する
シャロン――自己愛による怒りに傷つけられる
「あなたは役立たず」
「悪い母親」がかつていい母親だったとき
ジャン――かつては母の娘、今は母のライバル
競争しないではいられない気持ちの下にあるもの――むなしさ
母親があなたの成功をけなすことに対処する
彼女はあなたの家族間のライバル意識やあなたの嫉妬心をかきたてる
あなたは決して母親を満足させられない
見たとおりのものが結果に反映される

三章 過剰に関わってくる母親「あなたはわたしの人生よ」
トリシュ――いかにして絆が束縛に変わったか
独立は許されない
ステイシー――母の贈り物に束縛されている
「あなたのためにやらせて」という罠
ローレン――受け入れがたいことを受け入れることを学ぶ
過剰に関わる母親の愛のルール
過干渉は共依存を生む

四章 コントロールばかりする母親「だってわたしがそう言ったから」
カレン――追いつめられ、脅される
コントロールされた娘は簡単に踏みつけにされる
完璧主義者――あなたに不可能な水準を突きつける
ミシェル――批判はいかにして批評家を作るか
暴君が生まれるまで
コントロールするサディストの母親
サマンサ――怒りは受け継がれ、矛先は自分に、そして他者に向けられる
反抗への道
何がコントロールする母親を駆り立てるのか?

五章 世話を必要とする母親「あなたが何もかもやってくれるでしょ、頼りにしているわ」
「小さな大人」として成長したことをはっきり示す徴候
アリソン――「なんでも修理屋」になってしまう
母親が鬱状態だからといって、あなたに対する責任はなくならない
鬱状態は受け継がれるように運命づけられているわけではない
ジョディ――母親の飲酒、薬物依存症、鬱状態とともに生きている
薬物とアルコール――そして助けることに誘惑される
母親ではなく、あなたの人生を正す勇気を見つけよう
子ども時代の喪失――今も続く苦しみ

六章 ネグレクト、裏切り、虐待をする母親「あんたはいつもやっかいごとを引き起こす」
エミリー――見えない娘
求められないと感じることの傷痕
守れない母親
キム――昔のつらい記憶と対面する
信頼が大惨事になるとき
ニーナ――犠牲者が悪者になるとき
母親が怒りをコントロールできないとき
デボラ――怒りに対処することを学ぶ
「ごめんなさい」と言うのはかまわない
性的虐待の二重の裏切り
キャシー――手当てしなくてはならない傷
見て見ぬふりをする母親の否定と非難
裏切りの第二レベル
傷ついたが、取り返しのつかないほどではない
第二部 母親に与えられた傷を癒す

第二部のまえがき

七章 真実の始まり「すべてわたしのせいではないということがわかりはじめる」
プログラミングの基礎「あなたは~だ」が「わたしは~だ」になる
見ることのできない考えと感情の力
本当は何を信じているのか?
真実から嘘を区別する

八章 つらい感情を認識する「すべてを吐きだすのはとても気分がいい」
真実の瞬間

九章 怒りと悲嘆から英知は生まれる「わたしは長いあいだ抑えこんできた感情と
向き合う準備ができている」
悲嘆の裏に潜む怒りを見つける
怒りをときほぐして悲嘆を見つける
いい母親という幻想を埋葬する
怒りと悲嘆を扱う手法
負のサイクルを断ち切るためにあなたの感情を利用する

十章 行動を変え、人生を変える「変わることはとてもむずかしいが、変わらないことはもっと大変だ」
大人の娘の責任と権利
自己防衛的にならないコミュニケーション方法を利用する
行動を変えれば、感情が追いついてくる

十一章 境界をもうける「ノーという権利があるとはこれまで思ってもみなかった」
境界をもうける
簡単ではないが、ともかく実行しよう

十二章 今どういう関係を望んでいるかをはっきりさせる「やっと大人の女性になれた気がする」
選択肢1 新しく手に入れた正常な状態を補強するために新しいスキルを利用する
選択肢2 よりよい関係のために交渉する
選択肢3 ティーパーティー関係

十三章 もっともむずかしい決断「わたしの母か、わたしの幸福か、という選択になる」
母親に終わりだと告げる
罪悪感をとり除く
家族や友人の反応に対処するための作戦

十四章 老い、病気、孤独。急に頼ってくる母親「母を助けてあげなくてはならない。だって彼女はまだわたしの母親だから」
デボラ「母が癌になった」
どのぐらいで充分なのか?
新たに手に入れた権利を手放さないように

結びの章 ついに、いい母親と絆を作る
いい母親を観察して学ぶ
あなたを心から愛してくれた人々を思い出そう
かつての傷ついた子どもを癒す

謝辞

訳者あとがき

書誌情報

読み仮名 ドクオヤノステカタムスメノタメノジシンカイフクマニュアル
発行形態 書籍
判型 四六判
頁数 256ページ
ISBN 978-4-10-506961-2
C-CODE 0098
ジャンル 妊娠・出産・子育て
定価 1,650円

書評

「ママを棄てるわけにはいかない」のか?

香山リカ

 毒親。
 見なれない単語だが、はじめて目にしても、ピンと来る人にはピンと来る。子どもへの本来の愛情が持てず、支配したり否定したり放置したりして、その人生をめちゃめちゃにする親のことだ。
 本書の著者、セラピストのスーザン・フォワードのベストセラー『毒になる親 一生苦しむ子供』(講談社+α文庫)を携え、私のクリニックに来る人にこれまで何人もお会いした。そして、そのほとんどは女性つまり「娘」で、その「毒親」にあたるのは「母親」だった。もちろん父親が毒親という場合も息子が母親との関係に悩む場合もあるだろうが、いずれもあるところで見切りをつけてそのそばから離れて行けるのではないだろうか。ところがこと「娘と母親」に限っては、いくら「この母は毒親だ」と気づいたとしても娘たちはなかなかそのもとを去れないのである。
 そんな娘たちに文字通り、「毒親の棄て方」を説いたのが本書である。
 興味深いのは、著者が徹底的に娘サイドに立ち、「あなたは悪くない」と励まし、「自己愛が強い」「過剰に介入する」「支配する」「世話を要求する」「明らかな虐待をする」といった五つのタイプの「毒(母)親」たちの姿をこれでもか、というほどリアルに描いていることだ。また、心理の専門家なら「なぜ毒(母)親たちは娘の人生を台無しにするのか」とその心の深層を探りがちなのだが、著者スーザン・フォワードは“加害者側の心理”をほとんど分析しようとはせず、「娘を救え」という姿勢を貫く。それも本書の特徴だ。
 では毒(母)親を持つと、その娘はどうなるのか。「コントロールばかりする母親」の章に印象的な一節がある。
「コントロールする母親は脅しやからかいや批判によって娘をずたずたにし、娘の尊厳と自尊心ばかりか意志までも奪ってしまう。」
 その結果、娘は「自分が望んでいるものを知り、それを求めること」ができない人間になっていく。そして、そこから無理やり逃れようして、アルコール、食べもの、セックスなど「自滅的な行動」に走って束の間の自由を味わった気になる娘もいる、と記される。こうして単に「うっとうしい」「面倒くさい」ではすまされない深刻な影響が、生涯にわたって続くのである。
 本書の後半は、娘たちへの具体的な“リハビリ・マニュアル”となっている。このリハビリには二通りの意味があり、ひとつは「毒(母)親との訣別の仕方」でもうひとつは「適切な感情と意思の取り戻し方」だ。中でも、「1.敬意を持って扱われる権利がある」「2.他人の問題やひどい行動の責任を負わない権利がある」と十項目が並ぶ「大人の娘の権利章典」は圧巻で、「そうだ、私はこう生きていいのだ!」と多くの娘たちを励ますのではないだろうか。ほかにも「境界の設定」「自己防衛的にならないコミュニケーション」など、母親とだけではなくその他の人間関係でも有用なアドバイスが数多く紹介されている。
 今さらだが、著者はアメリカで活躍するセラピストであり、本書で紹介されるケースは“アメリカの娘たち”である。驚くべきことに個人主義のかの国でもこれだけ多くの女性が、「ママを悪く思っちゃいけない」と自分に言い聞かせ、その支配やわがままに耐え、自分の人生を棒にふって生きているのだ。まして「親孝行はすばらしい」「母の愛は海より深い」などと言われる日本では、より多くの娘たちが「あなたは私なしでは何もできない」「あなたが何もかもやってくれるでしょ」と束縛され依存され、生きていることは言うまでもないだろう。
 とくに、母親の年齢が上がりケアや介護が必要になって来ると、やさしい日本の娘たちはますます「ママを棄てるわけにはいかない」といっそう熱心に奉仕する、いやさせられることになる。著者は未亡人になった母親、病気になった母親に対してもきちんと手を差しのべつつも、また支配される関係に戻ることなく、娘が「大人の女性」であり続けることは可能だ、と言う。それもまた娘たちにとっては福音だ。

(かやま・りか 精神科医)
波 2015年11月号より

著者プロフィール

南カリフォルニアを中心に医療関係のコンサルタント、グループ・セラピスト、インストラクターをつとめながら、テレビやラジオで活躍。ABCトークラジオ局で電話をかけてきたリスナーに応える番組を担当。著書に『毒になる親 一生苦しむ子供』(講談社+α文庫)、『ブラックメール 他人に心をあやつられない方法』(日本放送出版協会)、『男の嘘』(TBSブリタニカ)など。

羽田詩津子

ハタ・シズコ

英米文学翻訳家。お茶の水女子大学英文学科卒。小説、ミステリー、ノンフィクションなど幅広いジャンルで活躍。主な訳書にミレイユ・ジュリアーノ『フランス女性は太らない』(日経ビジネス人文庫)、アガサ・クリスティ『アクロイド殺し』(ハヤカワ文庫)、ジョン・ブラッドショー『猫的感覚』(早川書房)、P・D・ジェイムズ『高慢と偏見、そして殺人』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)、フィル・ホーガン『見張る男』(角川文庫)など。

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