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ヴァインランド

トマス・ピンチョン/著 、佐藤良明/訳

4,400円(税込)

発売日:2011/10/31

書誌情報

読み仮名 ヴァインランド
シリーズ名 全集・著作集
全集双書名 トマス・ピンチョン全小説
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 622ページ
ISBN 978-4-10-537210-1
C-CODE 0097
ジャンル 文芸作品、評論・文学研究
定価 4,400円

『重力の虹』から17年の沈黙を破った超ポップな快作、徹底改訳&絶品解説!

1984。夏の朝。いまだ元妻への思いを断ち切れぬ中年ダメ男ゾイド・ホイーラーと、母を求める14歳の娘プレーリーの運命が動き出す。巨大なシステムに追われながら〈時〉と対峙することになるとも知らずに――。ピンチョン全作品中屈指のリーダビリティ、満載のギャグ。圧倒的なドライヴ感を醸し出す改訳決定版、ついに登場。

目次
ヴァインランド
ヴァインランド案内 佐藤良明

訳者あとがき

書評

波 2011年11月号より ピンチョンと真剣勝負

佐藤良明

拙訳『ヴァインランド』(新潮社、一九九八)が、一昨年の河出書房新社「世界文学全集」に入れていただいたのに続き、このたび〈トマス・ピンチョン全小説〉の一冊として、三度目の刊行の機会を得た。つまりまた、眼の前にゲラが来て、格闘することを許された。だが今回はきつかった。『重力の虹』を長らく訳してきた成果なのか、今まで気づかなかった原文の意味や仕掛けが見えて、背筋が寒くなり通しだった。優秀な学生さんに既訳の原文照合をお願いしたら、予想以上に的確な指摘がバチバチ来て、ボディにこたえた。
ピンチョンのテクストは、冗談のようなエピソードが結ばれ合って、禍々しい歴史認識に読者を導く。一種のオーウェル的“一九八四年もの”であるこの小説は、同時に“一九六九年もの”(シックスティーズの崩落を描く)でもあって、両者を繋ぐ〈時〉の懐――さらに時代を溯って示される官憲国家アメリカの様態――の描出に、この小説のエッセンスがある。表面レベルの可笑しさを通してそうした禍々しさに触れてもらうには、どんな本作りの工夫が必要だったのか?
それを反省して、過去の版に訳註スタイルでついていた「訳者ノート」を解体し、「ヴァインランド案内」という独立した読み物にまとめることにした。USAと別物ではないこの国ヴァインランドの歴史について、その音楽、映画、テレビ、麻薬、車、宗教その他の耽溺物(ドラッグ)についての読み物を別個に用意する。つまり本文中の註や説明は最小限にして、真剣勝負で、原作の真似をする。原作がしていることを日本語でする。もちろん、原作に書いてあることも伝えなくてはならない。たとえばもしこの単語と、二〇〇ページ前のこの単語が響き合っているのなら、そこをくっきり目立たせる。挿入歌にリズムがあるなら、そのリズムに訳詞を乗せる。下らぬダジャレにも息を抜かない完全癖の業師の、中でもブッ飛んだこの作品を訳させてもらうなら、無理は承知で真似だけでもしたいじゃないですか。でもピンチョンってまったく生産性など無視した作家なんで、真似を始めたりしたら出版社には刊行予定というものがあるし、僕もまだ『重力の虹』が控えていて本当にわがままを言うならそっちにしないといけない、だから昨日、校了のゴングとともにすごすごとリングを降りた、のでした。
さて、この作文のポイントは以下の通り。ありがたくも既に多くの読者を得た本ですけれども、どうかこの版も、手に取ってみてはいかがでしょう。訳文はすっきりしたと思います。地図や年表の他、“時の森”を這う蔓(ヴァイン)のような語りの運動を図解したページも用意しました。憎むべきアメリカと愛すべきアメリカが、よりよく見える本になったと思います。

(さとう・よしあき アメリカ文化研究、東大名誉教授)

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著者プロフィール

1963年『V.』でデビュー、26歳でフォークナー賞に輝く。第2作『競売ナンバー49の叫び』(1966)は、カルト的な人気を博すとともに、ポストモダン小説の代表作としての評価を確立、長大な第3作『重力の虹』(1973)は、メルヴィルの『白鯨』やジョイスの『ユリシーズ』に比肩する、英語圏文学の高峰として語られる。1990年、17年に及ぶ沈黙を破って『ヴァインランド』を発表してからも、奇抜な設定と濃密な構成によって文明に挑戦し人間を問い直すような大作・快作を次々と生み出してきた。『メイスン&ディクスン』(1997)、『逆光』(2006)、『LAヴァイス』(2009)、そして『ブリーディング・エッジ』(2013)と、刊行のたび世界的注目を浴びている。

佐藤良明

サトウ・ヨシアキ

1950年生まれ。フリーランス研究者。東京大学名誉教授。専門はアメリカ文化・ポピュラー音楽・英語教育。代表的著書に『ラバーソウルの弾みかた』。訳書にグレゴリー・ベイトソン『精神の生態学』、ボブ・ディラン『The Lyrics』(全2巻)など。〈トマス・ピンチョン全小説〉では7作品の翻訳に関わっている。

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