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人口九〇〇万のスウェーデンで七五万部のベストセラー!

世界の果てのビートルズ

ミカエル・ニエミ/著 、岩本正恵/訳

2,090円(税込)

本の仕様

発売日:2006/01/31

読み仮名 セカイノハテノビートルズ
シリーズ名 新潮クレスト・ブックス
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 286ページ
ISBN 978-4-10-590052-6
C-CODE 0397
ジャンル 文芸作品、評論・文学研究
定価 2,090円

笑えるほどしょぼい最果ての村で、僕は育った。きこりの父たち、殴りあう兄たち、姉さんのプレーヤー、そして、アメリカのいとこが持ってきた一枚のレコード。十代の入口でビートルズを知り、ベニヤ板のギターをかきならし、セックスにめざめてゆく少年たち。英米独仏ほか20カ国をゆるがせた、北欧発、驚異のベストセラー長篇!

著者プロフィール

ミカエル・ニエミ Niemi,Mikael

1959年、スウェーデン最北部、フィンランドとの国境に近い北極圏のパヤラ村で生まれる。15歳で創作を志す。工学を学んだのち、教師、青少年カウンセラー、出版社でのアルバイトなどさまざまな職を経て、1988年に初の詩集を出版。その後も詩集、戯曲、児童書、ノンフィクションなどを発表。自伝的長篇小説である本書は、人口900万のスウェーデンで75万部の驚異的ベストセラーとなり、世界20カ国以上で翻訳。映画化もされている。

岩本正恵 イワモト・マサエ

(1964-2014)東京生れ。東京外国語大学英米語学科卒。翻訳家。主な訳書に、キャスリン・ハリソン『キス』、アンソニー・ドーア『シェル・コレクター』、ウィリアム・プルーイット『極北の動物誌』、アレクサンダル・ヘモン『ノーホエア・マン』など。

書評

波 2006年2月号より ロックンロール!  ミカエル・ニエミ『世界の果てのビートルズ』 (新潮クレスト・ブックス)

栗田有起

 こんなにおかしくて奇妙な小説、久しぶりに読んだ。
 不思議な響きを持つ語り口だな、という印象をまず持った。耳慣れない発音の地名や人名が頻出するというのも、理由のひとつにはあるだろう。
 ヴィットライェンケ、パヤラ、パルカヨッキ、キットキエヨッキ、ムオドスロンポロ、ペッロ。
 異国の言葉というより、昔話に出てくる架空の街の言葉のように聞こえてくる。あるいは魔女が唱えたまじないのような。
 小説の舞台は一九六○年代のスウェーデン、フィンランドの国境にも近い、小さな村だ。本国の経済成長によっていわゆる豊かな生活を手に入れながらも、ラジオ局によっては受信するのに自前のアンテナを張らなければならないような場所だ。
 主人公は思春期直前、この地でビートルズに出会い、衝撃を受け、やがて友人とバンドを結成する。
 本書はこの村で育った作者の半自伝的小説だという。少年がロックンロールにのめりこみながら成長していく話は世界中どこにでもあるだろうが、この小説は語り口の独特さから、そして登場人物たちの奇人っぷりから、とても現代の話を聞かされているとは思えなくなってくるのだ。

 主人公マッティにはニイラという幼なじみがいる。彼は幼いときから、親や兄弟の鉄拳を浴びながら育っていた。彼は口が利けなかった。人のいうことは理解できるし、口を開きもするのだが、なにかが引っかかっていて、ひとことも話すことができない。そんな彼が、ある日、教会にやってきたアフリカ人といきなり言葉を通じ合わせ、周囲をびっくりさせる。
 成長したニイラは、死んだおばあさんの姿を見るのだといって恐怖に怯え、なんとかすべく、奇薬を持つという人物のところへ主人公とともに訪れる。ここでマッティも、幽霊となったおばあさんの姿を、あろうことかそのペニスまでも目撃することになる。
 シビアな環境におかれると、人はそれに対抗するためか、逃避のためなのか、自分の内側に独自の世界を作ろうとするのかもしれない。
 北極圏という、過酷な自然のなかで生きる人たちには、だから夢想家がおおいにちがいない。
 主人公の目から見る周囲の人々は、現実の人物というよりもどこかおとぎの国の登場人物めいている。
 その姿が鮮明に描かれているのが、彼のおじさんの結婚祝いの場面だ。
 食卓には、女たちが腕をふるったごちそうがずらりと並ぶ。食欲旺盛な男たちがつぎつぎと皿を空け、酒をおかわりするうちに、新郎の親族は、いかに先祖が力持ちだったかという自慢話をはじめる。ほとんどホラにしか聞こえない話の数々に、新婦側の親族もだまっちゃおらず、いきおい、力競べがはじまる。一族の名誉をかけて、筋肉のりゅうりゅうと盛り上がる腕と腕がからみあい、おばあさんたちまでが指相撲で競りあい、ついには北国らしくサウナ競争にまで発展する。
 なんだか、古代の神話に出てくる、人間くさい神々が催した宴を見ているかのようなのだ。
 この背景に、エルヴィスやジミ・ヘンドリックスが流れているというのだから、不思議なおかしみを感じずにはいられない。昔話や民話には、あまりにも荒唐無稽に思われる逸話がたくさんあるが、あれらは実際にあったものなんだろうなと納得がいった。

 成長したマッティたちは、新しく出会った音楽の先生に指導を受けながらギターを練習し、おなじ曲を四回演奏して、二曲目がよかった、といわれるような演奏会を開いたりする。村のなかで連鎖していく殴りあいや、大人でも手の出せないひどいいじめやら、彼らの環境はあいかわらず生易しくないけれど、それらすら笑い話のように聞こえるのは、主人公の語り口がひょうひょうとした自然なユーモアにあふれているからだ。その楽しさの源は、厳しい寒さを生き抜いた肉体と精神力だろうか。そしてなによりも彼らのそばには、いつもロックンロールがあったのだ。

(くりた・ゆき 小説家)

短評

▼Ishii Shinji いしいしんじ
スウェーデンの北の果てトーネダーレン。密造酒を競って呷り、気絶するまでサウナにこもる荒くれ男の村で、春の雷のように「ロスクンロール・ミュージッス」が鳴り響く。体の奥で錯綜する現実と幻想に駆りたてられ、少年は板きれとゴムひものギターをかきならす。幽霊が見える親友、女装したかかし男、元ドイツ兵の作家、シベリアから帰還した老人。より所を失い、さまよう人々を、凍てつく川と大地が静かに支える。酒と汗の甘いにおいに満ちあふれた、下品で愚かで、懐かしく美しい、世代を越えた青春の音楽が、ページから聞こえる。

▼Los Angeles Times ロサンゼルス・タイムズ
いつまでも心に残るみごとな作品。ニエミが創り出した世界は、大人の抱く幻想の子ども時代でも、子どもが描く無邪気な未来像でもない。幻滅や後悔といった野暮な感情は、パヤラ村の凍結した川や薄明の森には入ることを許されない。未来は荒々しい幻覚であり、過去は不合理で驚きに満ちている。

▼Svenska Dagbladet スヴェンスカ新聞[スウェーデン]
凍結した川の氷が割れる壮麗な音……ニエミの作品は、その音を思い起こさせる。生命と、ユーモアと、痛みに満ちた本書は、まさに傑作だ。

▼The New York Times ニューヨーク・タイムズ
1960年代の夜明け、遊び場でふたりの少年が出会う。彼らはジョンとポール? ミックとキース? いや、そうではない。ここに描かれているのは、北極圏にある寒村を舞台に、木こりや鉱夫の子どもたちが成長してゆく姿だ。世界の片隅で繰り広げられる日常が、鮮やかに愉快に描きだされる。

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