新潮クレスト・ブックス 短篇小説ベスト・コレクション 記憶に残っていること
2,090円(税込)
発売日:2008/08/29
- 書籍
【創刊10周年特別企画】世界最高の短篇小説を堪能できる贅沢なアンソロジー!
創刊以来、定評あるクレストの全短篇集から10篇を選んだベスト・コレクション。マンロー、トレヴァー、マクラウドら世界を代表する名手から、ラヒリ、イーユン・リーらの新鋭まで。現代最高の短篇小説を一冊に束ねたかつてないアンソロジー。編者・堀江敏幸氏による解説「人はなにかを失わずになにかを得ることはできない」を収録。
もつれた糸/アンソニー・ドーア
エルクの言葉/エリザベス・ギルバート
献身的な愛/アダム・ヘイズリット
ピルザダさんが食事に来たころ/ジュンパ・ラヒリ
あまりもの/イーユン・リー
島/アリステア・マクラウド
記憶に残っていること/アリス・マンロー
息子/ベルンハルト・シュリンク
死者とともに/ウィリアム・トレヴァー
書誌情報
読み仮名 | シンチョウクレストブックスタンペンショウセツベストコレクションキオクニノコッテイルコト |
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シリーズ名 | 新潮クレスト・ブックス |
発行形態 | 書籍 |
判型 | 四六判変型 |
頁数 | 256ページ |
ISBN | 978-4-10-590070-0 |
C-CODE | 0397 |
ジャンル | 評論・文学研究、文学賞受賞作家 |
定価 | 2,090円 |
短評
- ▼Kakuta Mitsuyo 角田光代
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クレスト・ブックスは私にとって飛行場みたいなものだ。ゲートをくぐるようにページを開くと、その先にはいつも未知の世界が広がっている。たとえばアリステア・マクラウドの「島」の、島から出ずに暮らす女の鈍く光るような孤独と、それを飲みこむ荒々しい光景。アンソニー・ドーア「もつれた糸」のむせ返るような木々のにおい、澄んだ水の音、そしてとりかえしのつかない一瞬(私はここで思わず声をあげた)。アダム・ヘイズリット「献身的な愛」の、束縛と化す愛、その重さと哀切。イーユン・リー「あまりもの」の、恋愛という言葉には決しておさまることのない愛。読むことの先に、ことごとく未知の体験がある。短篇でしか味わえない広がりと余韻がある。読み終えてもなお、圧倒されるような光景と、幾多の濃密な生が私の内に残っている。幸福な読書であり、重厚な体験だった。
著者プロフィール
堀江敏幸
ホリエ・トシユキ
1964(昭和39)年、岐阜県生れ。1999(平成11)年『おぱらばん』で三島由紀夫賞、2001年「熊の敷石」で芥川賞、2003年「スタンス・ドット」で川端康成文学賞、2004年同作収録の『雪沼とその周辺』で谷崎潤一郎賞、木山捷平文学賞、2006年『河岸忘日抄』、2010年『正弦曲線』で読売文学賞、2012年『なずな』で伊藤整文学賞、2016年『その姿の消し方』で野間文芸賞、ほか受賞多数。著書に、『郊外へ』『書かれる手』『いつか王子駅で』『めぐらし屋』『バン・マリーへの手紙』『アイロンと朝の詩人 回送電車III』『未見坂』『彼女のいる背表紙』『燃焼のための習作』『音の糸』『曇天記』ほか。
アリス・マンロー
Munro,Alice
(1931-2024)1931年、カナダ・オンタリオ州の田舎町に生まれる。書店経営を経て、1968年、初の短篇集 Dance of the Happy Shades(『ピアノ・レッスン』)がカナダでもっとも権威ある「総督文学賞」を受賞。以後、三度の総督文学賞、W・H・スミス賞、ペン・マラマッド賞、全米批評家協会賞ほか多くの賞を受賞。おもな作品に『イラクサ』『林檎の木の下で』『小説のように』『ディア・ライフ』『善き女の愛』『ジュリエット』など。チェーホフの正統な後継者、「短篇小説の女王」と賞され、2005年にはタイム誌の「世界でもっとも影響力のある100人」に選出。2009年、国際ブッカー賞受賞。2013年、カナダ初のノーベル文学賞受賞。