ホーム > 書籍詳細:遠藤周作で読む イエスと十二人の弟子

名著と名画でわかりやすく綴ったキリスト教誕生史。

遠藤周作で読む イエスと十二人の弟子

遠藤周作/著 、遠藤順子/著 、芸術新潮編集部/著

1,430円(税込)

本の仕様

発売日:2002/12/12

読み仮名 エンドウシュウサクデヨムイエストジュウニニンノデシ
シリーズ名 とんぼの本
雑誌から生まれた本 芸術新潮から生まれた本
発行形態 書籍
判型 A5判
頁数 127ページ
ISBN 978-4-10-602097-1
C-CODE 0316
ジャンル 文学賞受賞作家、宗教
定価 1,430円

裏切り者はユダだけじゃなかった! ペトロやほかの弟子たちもイエスを裏切っていた。遠藤周作が名著『イエスの生涯』『キリストの誕生』で読み解いた、知ってるようで知らない師弟の魂のドラマ、弟子たちの壮絶な生き方が、ジオット、ミケランジェロ、レンブラントらの名画で甦る。

著者プロフィール

遠藤周作 エンドウ・シュウサク

(1923-1996)東京生れ。幼年期を旧満州大連で過ごし、神戸に帰国後、11歳でカトリックの洗礼を受ける。慶応大学仏文科卒。フランス留学を経て、1955(昭和30)年「白い人」で芥川賞を受賞。一貫して日本の精神風土とキリスト教の問題を追究する一方、ユーモア作品、歴史小説も多数ある。主な作品は『海と毒薬』『沈黙』『イエスの生涯』『侍』『スキャンダル』等。1995(平成7)年、文化勲章受章。1996年、病没。

遠藤順子 エンドウ・ジュンコ

1927(昭和2)年、東京生れ。慶応義塾大学仏文科卒。1955(昭和30)年、遠藤周作と結婚。著書に遠藤氏と暮らした日々をつづった『夫・遠藤周作を語る』(文藝春秋刊)をはじめ『夫の宿題』『再会 夫の宿題それから』(ともにPHP研究所刊)がある。

書評

「わかった」ことと「わからない」こと

檀ふみ

「わたし、わかったの!」と、ある日、友人が叫んだ。
「日本人が印象派の絵ばっかりもてはやすのはね、宗教画がわからないからなのよ!」
 なるほど、確かに私には宗教画がわからない。各国の名だたる美術館を訪ねるたびに、「ああ、もったいない、もったいない」と唱えつつ、宗教画の前は足早に通り過ぎ、印象派の絵に多くの時間を費やすことにしている。
 だがくだんの友人の執拗な勧めで、一年ほど「ルネサンス講座」に通い、聖書を片手に絵を読み解いているうちに思った。
「わたしにも、わかった!」
 この知識をもってすれば怖くない。先日パリに行った際、長らく敬遠していたルーブル美術館を歩いてみることにした。
 そして、またわかった。
 全然わかってないってことが、はっきりわかったのである。
 だが、「わかりたい」という思いは、相変わらずしつこくある。だってヨーロッパを旅行するとき、宗教画がわかるとわからないでは、楽しさに雲泥の差がある。
 だから、「イエスと十二人の弟子」の生涯が、遠藤周作の文章と名画で綴られている本が出たなんて聞くと、ついフラフラと手に取ってしまうのである。
 そういえば、そもそも「十二人の弟子」、つまり「十二使徒」が誰と誰と誰であったか、そんなことからして知らない。
「マタイでしょ、マルコでしょ、ルカとヨハネ」と、まずは福音書にある名前を指折ってみるが、福音書記者が十二使徒であったかどうか、どうも心許ない。そうだ、ヤコブがいたではないかと、思い出す。これはつい最近、サンティアゴ・デ・コンポステラへの巡礼道を取材して知ったこと。サンティアゴは、聖ヤコブのスペイン語読みと教わった。それから、ヴァティカンのサン・ピエトロ寺院の聖ペトロもいる。
 それぞれの弟子は、いったいどういう人で、どういう生涯を送ったのだろう。イエスを裏切ったユダは、その十二人に入るのだろうか、それとも入らないのか……。
 こういった長年ほったらかしにされていた疑問が、カラヴァッジョの《聖マタイの召命》や、ジオットの《ユダの接吻》などの有名な絵とともに、ゆるゆると解き明かされていくのは、なかなか気持ちのいいものである。
 一人一人の弟子の生き方を見ていくうちに、
「私たちがもし聖書をイエス中心という普通の読みかたをせず、弟子たちを主人公にして読むと、そのテーマはただ一つ――弱虫、卑怯者、駄目人間がどのようにして強い信仰の人たりえたかということになるのだ」
 という、遠藤周作の言葉がしみてくる。
 十二使徒は、ヨハネを除いて、みな悲惨な死に方をしている。ペトロは逆さハリツケに処され、その弟アンデレはX字型の十字架で息絶えた。ともに、「師と同じ十字架にかかるのは恐れ多い」と自ら望んだのだという。天寿をまっとうしたヨハネにしても、釜ゆでの恐怖を体験しているし、バルトロマイなどは、生きたまま皮をはがされている。それも、長く困難な布教の旅の果てに、である。
 人々の罪を贖うために死んだというイエスだが、そのキリストを信じて、いったいどれだけの人が命を落としたことだろう。イエスよりも、ずっとむごい生き方、死に方をした、名もない人も多いに違いない。
 少なくともイエスは、自分が神の子キリストであることを知っていた。やがて自分を憎む人の手にわたされ、殺され、そして三日後によみがえるということも、確信していた。
 そんな神の子に比べて、人の子たちの心のなんと頼りなかったこと。虚しかったこと。だが、そうした覚束ない心を抱えた弟子たちが、過ちや裏切りを繰り返しながら、どんな迫害にも困難にもくじけずに布教を続けていく強靱な魂を持つようになった過程には、すごいドラマがある。ひょっとして、イエスの生涯よりも感動的であるかもしれない。
 市井の人々が、より自分に近い存在をあがめ、心の支えとしたいと思うのは当然だろう。また、芸術家が、完璧な神よりも生きた心を描きたいというのも理解できる。
 つまり、聖人聖女の数だけ絵はあるわけで、イエスの生涯と十二使徒がちょっと「わかった」くらいでは、宗教画が「わかった」ことにはならない。結局、まだまだ「わかってない」ことを思い知らされた一冊なのであった。

(だん・ふみ 女優)
波 2003年1月号より

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