藤沢周平 心の風景
1,540円(税込)
発売日:2005/09/22
- 書籍
失われた“日本の美しい風景”を、作家・藤沢周平の作品に導かれて訪ね歩く。
「生まれた田舎の風景がいいことをエッセイばかりか、こっそりと小説の中にまで書き散らして」と語る作家は、故郷・鶴岡を海坂藩として作中世界に昇華させた。作家の「原風景」は読者を魅了し、憧憬の念さえ寄せられている。その魅力の秘密を探しながら、ヴィジュアルに藤沢ワールドに迫る。名作『蝉しぐれ』を歩く旅案内付。
グラフ
鶴岡・海坂の四季
文 藤沢周平 撮影 八尾坂弘喜
金峯山は母なる山 藤沢周平
グラフ
古写真に見る鶴ヶ岡城
海坂ミクロコスモス論 佐藤賢一
名作『蝉しぐれ』を歩く
たとえば、橋ものがたり 山本一力
書誌情報
読み仮名 | フジサワシュウヘイココロノフウケイ |
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シリーズ名 | とんぼの本 |
発行形態 | 書籍 |
判型 | A5判 |
頁数 | 120ページ |
ISBN | 978-4-10-602136-7 |
C-CODE | 0395 |
ジャンル | 文芸作品、文学賞受賞作家、ノンフィクション |
定価 | 1,540円 |
担当編集者のひとこと
藤沢周平 心の風景
先人の書いたものにひかれて旅に出ることは、ままあることでしょう。〈とんぼの本〉シリーズでも『奥の細道を歩く』があり、現代の作家によるものでは『白洲正子と楽しむ旅』などがあり、『近江路散歩』は司馬遼太郎氏の次の一節に出会わなかったら、はじまらなかったかもしれません。「下り列車が関ケ原盆地をすぎ、近江の野がひらけてくると、胸の中でシャボン玉が舞いあがってゆくようにうれしくなってしまう」(『街道をゆく』)
私が、藤沢周平氏の故郷・鶴岡へ思いをはせるようになったのは、いつ、どの作品、どの場面からかは、さだかではないのですが、『蝉しぐれ』の冒頭、主人公・文四郎の眼前にひろがる朝の田園風景にひかれたのかもしれません。そして、はじめて訪れたそこは、空が高く、その下にたんぼが豊かにひろがっており、類稀な穀倉地帯を実感しました。
鶴岡に通い出してから幾度目かの早朝のことでした。寝坊助の私の部屋を、この世の終りとも思えるような轟音と振動がおそいました。とびおきましたが、何が何だかわかりません。窓を打つ雨の音に、日本一の雷多発地帯といわれ、「雷サミット」なるものが毎年開催されている鶴岡が実感されたというわけです。と同時に、ここの風景の秘密がとけた気がしました。今まで横のひろがりばかりにひかれていましたが、その中に垂直のひろがりがかくされていたのです。詳述できませんが、本書中の旅案内の記「名作『蝉しぐれ』を歩く」を出羽三山で終りにしようと考えるようになったのも、この朝ゆえでした。
国宝の羽黒山五重塔
2016/04/27
著者プロフィール
藤沢周平
フジサワ・シュウヘイ
(1927-1997)山形県生れ。山形師範卒業後、結核を発病。上京して五年間の闘病生活をおくる。1971(昭和46)年、「溟い海」でオール讀物新人賞を、1973年、「暗殺の年輪」で直木賞を受賞。時代小説作家として、武家もの、市井ものから、歴史小説、伝記小説まで幅広く活躍。『用心棒日月抄』シリーズ、『密謀』、『白き瓶』(吉川英治文学賞)、『市塵』(芸術選奨文部大臣賞)など、作品多数。
佐藤賢一
サトウ・ケンイチ
1968(昭和43)年、山形県鶴岡市生れ。東北大学大学院でフランス中世史を専攻する。1993(平成5)年、『ジャガーになった男』で、小説すばる新人賞を受賞。1999年、『王妃の離婚』で直木賞を受賞。2014年、『小説フランス革命」で毎日出版文化賞特別賞を受賞する。2020(令和2)年、『ナポレオン』全3巻で司馬遼太郎賞を受賞。2023年、『チャンバラ』で中央公論文芸賞を受賞する。『傭兵ピエール』『双頭の鷲』『二人のガスコン』『オクシタニア』『カポネ』『女信長』『新徴組』『ラ・ミッション 軍事顧問ブリュネ』『ファイト』『遺訓』『最終飛行』など、多数の著書がある。
山本一力
ヤマモト・イチリキ
1948年高知県生まれ。東京都立世田谷工業高校電子科卒業後、様々な職を経て、1997年『蒼龍』でオール讀物新人賞を受賞してデビュー。2002年、『あかね空』で第126回直木賞を受賞。その後、2012年に第1回歴史時代作家クラブ賞、2015年に第50回長谷川伸賞も受賞している。困難にあっても誇り高く生きる人々を描いて熱い支持を集め、飾らない人柄の滲むエッセイや人生相談も好評。『大川わたり』『いっぽん桜』『ワシントンハイツの旋風』『だいこん』『かんじき飛脚』『べんけい飛脚』『ずんずん!』『カズサビーチ』「損料屋喜八郎」シリーズ、「ジョン・マン」シリーズなど著書多数。
八尾坂弘喜
ヤオサカ・ヒロキ
1951年北海道生れ。1974年東京綜合写真専門学校研究科中退。1984年鶴岡市にてスタジオ「写真工芸やおさか」開設。2003年庄内ゆかりの作家50人をテーマにした写真展「文学のある風景」発表。