遠藤周作と歩く「長崎巡礼」
1,540円(税込)
発売日:2006/09/22
- 書籍
遠藤文学の頂点『沈黙』、その200年後、300年後を描いた『女の一生』を辿る「感動の旅へ」、いざ出発!
奉行所跡でロドリゴの踏絵シーンに凜とし、大浦天主堂でキクの哀しい最期に泣き、浦上村でサチ子の被爆体験に祈る――。長崎を心の故郷と呼んだ作家は、その狭い路地で、雨に濡れる街角で、何を感じ、何を考え、何を見出したのか? キリシタンゆかりの地を名文と共に辿れば、遠藤文学の新しい読み方が見えてくる……。
長崎切支丹三部作
一枚の踏絵から始まる旅もある
トモギ村に栄光!
強い者も弱い者もない
キリストが求めたものは?
愛と哀しみの浦上村
キクの祈り
あたかも殉教のなきがごとく
生月 かくれ切支丹の島
平戸・五島列島 ある日、遠い海から……
キチジローの信心戻し
転び者の気持ち
サンタマリアとキク
あん痛さば知らんやろ
昔はもっと骨があった
神さまは……善きことのみなさる
サチ子の思い
享和二年肥州長崎図
書誌情報
読み仮名 | エンドウシュウサクトアルクナガサキジュンレイ |
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シリーズ名 | とんぼの本 |
発行形態 | 書籍 |
判型 | A5判 |
頁数 | 128ページ |
ISBN | 978-4-10-602149-7 |
C-CODE | 0390 |
ジャンル | 文学賞受賞作家、ノンフィクション |
定価 | 1,540円 |
担当編集者のひとこと
遠藤周作と歩く「長崎巡礼」
かれこれ四十年ほど前の、初夏のとある夕暮、遠藤周作は、初めて訪れた長崎の街を格別どこに行くあてもなく、歩いていた。大浦天主堂前の人混みを避け、ぶらぶらするうちに、十六番館という木造の西洋館に行き着く。時間つぶしに中に入る。そして、一枚の踏絵を見た――。
薄暗い館内でしばらく、じっと立っていたのは、踏絵自体のためではなく、そとを囲んでいる木に、黒い足指の痕らしいものがあったためであった。足指の痕はおそらく一人の男がつけたのではなく、それを踏んだ沢山の人の足が残したにちがいなかった。(『切支丹の里』より)
踏んだのはどんな人たちだったのか? どんな思いで踏んだのか? 私が当事者だったら踏まなかったか? いや、踏んでしまっただろうか?
一枚の踏絵から始まる旅もある。遠藤周作は〈黒い足指の痕〉をいわばパン種にして想像をふくらませ、あの名作『沈黙』を書きはじめた。キリスト教布教の使命に燃えて日本に密入国し、やがて捕縛されるポルトガル人宣教師ロドリゴの悲劇。作家は小説の構想を練りあげながら、三カ月に一度は必ず長崎を訪れ、県下の津々浦々、切支丹の面影を訪ね歩く――。
そうして生まれた作品『沈黙』、その精神的続編にして、200年後、300年後の長崎と隠れキリシタン(信徒たち)や宣教師の姿を描いた『女の一生』の舞台を、辿ってみよう。遠藤周作はその雨に濡れる街角で、狭い路地で、何を感じ、何を考え、何を見出したのか? もし現地へ行かれたのなら、原文を声に出して読まれることをお勧めする。作家の心を、より深く味わえるだろう。そして長崎巡礼が終わった時――、西欧、近代、キリスト教、我々日本人……、遠藤が生涯をかけて格闘した何かが、再び、見えてくるはずだ。では、出発!
2017/01/27
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著者プロフィール
遠藤周作
エンドウ・シュウサク
(1923-1996)東京生れ。幼年期を旧満州大連で過ごし、神戸に帰国後、12歳でカトリックの洗礼を受ける。慶応大学仏文科卒。フランス留学を経て、1955(昭和30)年「白い人」で芥川賞を受賞。一貫して日本の精神風土とキリスト教の問題を追究する一方、ユーモア作品、歴史小説も多数ある。主な作品は『海と毒薬』『沈黙』『イエスの生涯』『侍』『スキャンダル』等。1995(平成7)年、文化勲章受章。