太宰治と旅する津軽
1,650円(税込)
発売日:2009/09/25
- 書籍
名作『津軽』を道標に、その日、その時、太宰の目に映った光景を追憶する。
「ね、なぜ旅に出るの?」「苦しいからさ」……太宰が最も元気だった頃に書かれた紀行小説『津軽』のテキストをガイドに、故郷を旅した作家の足跡を追い、その悲喜こもごもの場面を追体験しながら、津軽半島を旅する。五度に及んだ自殺・心中の現場の心象風景もあわせて、文学紀行の名手・小松健一の写真でたどる。
太宰の生家、金木の斜陽館
撮影=小松健一
厳冬の竜飛岬
撮影=小松健一
小説『魚服記』の舞台といわれる藤の滝
撮影=小松健一
巡礼
蟹田
外ヶ浜
西海岸
滅びの風景
二 小動崎
三 鎌倉
四 谷川温泉
五 玉川上水
――小説家・太宰治と写真家・田村茂をめぐって/小松健一
書誌情報
読み仮名 | ダザイオサムトタビスルツガル |
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シリーズ名 | とんぼの本 |
発行形態 | 書籍 |
判型 | A5判 |
頁数 | 144ページ |
ISBN | 978-4-10-602192-3 |
C-CODE | 0395 |
ジャンル | ノンフィクション |
定価 | 1,650円 |
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担当編集者のひとこと
太宰治と旅する津軽
今年、2009年は太宰治生誕100年ということで、昨年末からたくさんの太宰関連の書籍や雑誌が刊行されました。そんな中、《とんぼの本》では思い切って小説『津軽』に焦点を絞った編集をしてみました。ご存知のとおり、『津軽』は太宰治が最も安定していた「中期」と位置づけられる時代の傑作で、出版社の求めに応じて自らの故郷とその周辺を歩いて記した旅紀行です。今回、厳冬の2月と、太宰が旅したのと同じ、春爛漫の5月に、太宰の歩いた道筋を忠実に辿ってみました。取材に際しては、改めて『津軽』を何度も読み返したのですが、太宰自身がこの小説で「愛」を追求した、と述べた、その意味がとてもよく理解できました。一度は義絶された故郷の津島家の人々との和解、家族の再生、そして東京に残してきた妻子への想いなど、珍道中の紀行文の体裁をとりながらも、その裏側には家族愛がしっかりと書き込まれていることを実感しました。
本書ではできるだけ太宰自身が書き記した小説のフレーズを引用することで、太宰治といっしょに津軽路を歩くような構成としました。写真も、ただ文章に合わせて説明的に撮影したものではなく、太宰の目に映ったであろう心象風景を再現しようと試みています。きっとこの本を読めば、もう一度『津軽』が読みたくなります。そして、旅に出たくなります!
もうひとつ、5度に及んだ自殺、心中の現場を訪ね、「滅びの風景」も追っています。さらに、太宰治の肖像写真を撮ったことで知られる写真家・田村茂氏について、弟子でもあった小松健一氏が書いたレポートも必読! あまり世に出ていないポートレートを掲載しています。
2009/09/25
著者プロフィール
太宰治
ダザイ・オサム
(1909-1948)青森県金木村(現・五所川原市金木町)生れ。本名は津島修治。東大仏文科中退。在学中、非合法運動に関係するが、脱落。酒場の女性と鎌倉の小動崎で心中をはかり、ひとり助かる。1935(昭和10)年、「逆行」が、第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。この頃、パビナール中毒に悩む。1939年、井伏鱒二の世話で石原美知子と結婚、平静をえて「富嶽百景」など多くの佳作を書く。戦後、『斜陽』などで流行作家となるが、『人間失格』を残し山崎富栄と玉川上水で入水自殺。
小松健一
コマツ・ケンイチ
1953(昭和28)年、岡山県に生まれ、群馬県に育つ。近代文学、作家の原風景をモティーフにした日本人の暮らしと風土、沖縄、環境問題など社会的テーマを追う。また厳しい大地の中で自然と共生する民族の撮影をライフワークに地球巡礼をしている。1999年『雲上の神々 ムスタン・ドルパ』(冬青社)で第2回飯田市藤本四八写真文化賞、2005年『ヒマラヤ古寺巡礼』(インデックス・コミュニケーションズ)で日本写真協会賞年度賞受賞。著書に『三国志の風景』(1995年 岩波新書)、『文学の風景をゆく』(2003年 PHPエル新書)、『太宰治と旅する津軽』(2009年 新潮社)、『宮澤賢治 雨ニモマケズという祈り』(共著 2011年 同)など多数。
新潮社
シンチョウシャ