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新生オルセー美術館

高橋明也/著

1,980円(税込)

発売日:2017/01/31

  • 書籍

印象派からナビ派まで、新しいオルセーの名品94点を徹底解説!

パリの廃駅が印象派の殿堂になってから、早30年。かつて開館準備室に在籍していた著者が、オルセーが誇る絵画、彫刻、装飾芸術の中から、いま見るべき傑作を厳選。波乱の19世紀美術をテーマごとに辿ります。大リニューアル後の館内も撮り下ろしで紹介し、生まれ変わった美術館の全てが分かる、決定版鑑賞ガイドです。

目次
変わり続ける美の殿堂へ
名品94点でたどる!
波乱と激動のオルセー鑑賞ガイド
【案内人】高橋明也 [三菱一号館美術館館長]
はじめに
I 人体・肖像
II 風景
III 都市生活
IV 室内・静物
V 彫刻・装飾
VI 異郷・心象風景
おわりに――アスパラ1本に19世紀がつまっている
オルセー駅が美術館になるまで
インタビュー オルセーの仕事人たち
ギ・コジュヴァル[館長]
ヴィルジニア・フィエンガ[工事部門長]
クリスチャン・ガロショー[保存修復担当]
エレーヌ・フロン[企画展部門長]
コラム オルセーのウラのウラ 高橋明也
30周年を迎えたオルセー美術館
オルセー美術館準備室の頃
「ナビ派」再評価という新しいトレンド
美術館外観図+パリ周辺マップ
館内案内図
19世紀美術略年表
レストラン・カフェ

書誌情報

読み仮名 シンセイオルセービジュツカン
シリーズ名 とんぼの本
雑誌から生まれた本 芸術新潮から生まれた本
発行形態 書籍
判型 B5判変型
頁数 144ページ
ISBN 978-4-10-602273-9
C-CODE 0370
定価 1,980円

インタビュー/対談/エッセイ

パリへ行ったときには?

高橋明也

 パリに行くと、というか、もっと一般的に欧米に行くと、と言い換えてもよいが、とにかく日本にいるときにはめったに足を運ばないような人でも、海外旅行に出かければついつい訪れてしまうのが美術館である。私のような人間は商売柄、それこそ世界中の美術館をしらみつぶしに歩いている。でも一般の観光客の方々の多くは、おそらく日本では通常ありえないほどの絵や彫刻を短時間に見て、いい加減疲れ果て、辟易することもしばしばではないかと想像する。ではなぜそれほど美術館が欧米、そしてパリでは街の真ん中にあり、ひたすら観光客を呼び込んでいるのだろうか?
 よく知られているように、とりわけパリは美術の都として君臨して久しい。もちろん、フィレンツェ、マドリード、ロンドン、ニューヨーク……と、他にも立派な美術館のある街は多々あるが、古代、中世、ルネサンス、バロック、ロココ……と継続的に良質の美術作品を生み出し、加えて19世紀から20世紀にかけて、印象派以降のあらゆる美術運動の中心として爆発的な力をもった街は、世界広しと言えど、パリだけなのだ。
 でもそれだけではパリの美術館の説明にはならない。フランス大革命を契機として、国の諸制度の中心に国民の共有財産として、「ルーヴル美術館」が設置されたという歴史が重要なのだ。市民社会の真ん中にありつつ国民国家の制度の中核を担う、そんな美術館という組織に収められた美術品もまた、多彩な個性をもちながらも、公私にわたり深く社会生活に結びついている。そしてその延長線上に現代美術を扱う「ポンピドゥー・センター」ができ、さらに1986年にミッテラン大統領の「大計画グラン・プロジェ」の一環として開館したのが、ルーヴルとポンピドゥー・センターをつなぐ「19世紀美術館」としてのオルセー美術館だ。だから、パリの美術館というのは元来、ひどく政治的であり政策的なのだ。決してただの文化センターではない。国民のアイデンティティーの中心にあると同時に、海外に向けてのショーウインドーでもあるのだ。
 私は1984年から86年にかけて、縁あってこの美術館の準備室に籍を置き、新美術館の立ち上げを間近で見る機会に恵まれたのだが、このオルセーも2016年12月に30周年を迎え、さまざまな変化が出ている。
 世界最大級の19世紀美術の専門館として、常に世界でもトップ・テンに入るほどの集客力を見せるこの美術館の、最近とみに切れ味を見せる企画展はたいへん興味深い。だがしかし、圧倒的な魅力を放つのは、やはりその常設コレクションである。本書では、オルセー美術館の代表作を、定番の年代別ではなく新たな視点からテーマに纏めながら、新収蔵の作品を加えて渉猟する。ある意味で、気ままな美術体験を提供するような体裁の本にも見えるかもしれないが、30年を経てさらに脱皮しようとするオルセー美術館の、新たな案内人チチェローネとして手にとっていただければ幸甚である。

(たかはし・あきや 三菱一号館美術館館長)
波 2017年2月号より

イベント/書店情報

著者プロフィール

高橋明也

タカハシ・アキヤ

1953年東京生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了。専門はフランス近代美術。国立西洋美術館主任研究官・学芸課長を経て、2006年より三菱ー号館美術館館長。1984〜1986年には、文部省在外研究員としてオルセー美術館開館準備室に在籍。2010年には、フランス芸術文化勲章シュヴァリエ受章。主な著書に、『ゴーガン――野生の幻影を追い求めた芸術家の魂」(六耀社)、「もっと知りたいマネ――生涯と作品』(東京美術)、『美術館の舞台裏――魅せる展覧会を作るには』(ちくま新書)、『かわいい印象派』(東京美術、共著)など。主な企画展覧会に、「オルセー美術館展」(1996年、1999年、2006〜2007年)、「ジョルジュ・ド・ラ・トゥール――光と闇の世界」展(2005年)、「コロー 光と追憶の変奏曲」展(2008年)、「マネとモダン・パリ」展(2010年)ほか多数。

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