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言葉から日本人が見えてくる――日本語を軸に論じ尽くす「日本人論」の決定版!

日本・日本語・日本人

大野晋/著 、森本哲郎/著 、鈴木孝夫/著

1,320円(税込)

本の仕様

発売日:2001/09/18

読み仮名 ニホンニホンゴニホンジン
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 202ページ
ISBN 978-4-10-603504-3
C-CODE 0381
ジャンル 言語学、社会学
定価 1,320円

日本語の世界には、この国の風土を考える「鍵」がある――。漢字のおどろくべき力、「感じる」言葉と「見る」言葉、カタカナ語の不思議、そして島国独特の高度な適応力と外国観……。国語教育の問題から英語第二公用語論、さらには対米戦略まで、日本語を愛してやまぬ碩学三人が、日本の将来像を深く真剣に語り合った白熱の二十時間!

著者プロフィール

大野晋 オオノ・ススム

1919(大正8)年、東京深川生れ。東京大学文学部国文学科卒。学習院大学名誉教授。「日本とは何か」という問題意識から古代日本語の研究を始め、上代特殊仮名遣・万葉集・古事記・日本書紀などを研究し「日本語はどこから来たか」を追究。著書に『岩波古語辞典』(共編)『日本語の起源 新版』『係り結びの研究』『日本語練習帳』『日本語と私』など。研究の到達点は『日本語の形成』に詳述されている。

森本哲郎 モリモト・テツロウ

1925年、東京生まれ。東京大学文学部哲学科卒業。同大学院社会学科修了。朝日新聞東京本社入社、学芸部次長、朝日新聞編集委員を経て、1976年退社し、世界各国を歴訪。以後、評論家として文明批評や旅行記などの著述を中心に活動。1988年~1992年、東京女子大学教授。主な著作に、『サハラ幻想行』(河出書房新社)、『詩人与謝蕪村の世界』(講談社学術文庫)、『ぼくの哲学日記』(集英社)、『この言葉! 生き方を考える50話』(PHP新書)、『愛蔵版 ことばへの旅』『日本語 表と裏』『文明の旅―歴史の光と影―』『生き方の研究』『森本哲郎世界への旅 全10巻・別巻1』(以上、新潮社)など多数。

鈴木孝夫 スズキ・タカオ

慶応義塾大学名誉教授。1926年、東京生。同大文学部英文科卒。カナダ・マギル大学イスラム研究所員、イリノイ大学、イェール大学訪問教授、ケンブリッジ大学(エマヌエル、ダウニング両校)訪問フェローを歴任。専門は言語社会学。著書に『閉された言語・日本語の世界』をはじめ、『ことばと文化』『日本語と外国語』『武器としてのことば』『日本人はなぜ日本を愛せないのか』『日本語教のすすめ』『人にはどれだけの物が必要か』『日本の感性が世界を変える』など多数。

書評

波 2001年9月号より 意気軒昂なる三人の「愛国心」  大野晋・森本哲郎・鈴木孝夫 『日本・日本語・日本人』

藤原正彦

「二十一世紀日本の構想」懇談会が英語第二公用語化を言い出して以来、日本人にとって英語とは何か、日本語とは何か、の議論が活発になった。当初は懇談会の提言に驚き、呆れ、憤った私だったが、それ以後母国語に関する本質的議論が盛んになったのを見て、今では懇談会の功績かも知れない、などと思うこともある。

 大野晋・森本哲郎・鈴木孝夫『日本・日本語・日本人』は、あまたある関連書の中で最重要と言えないまでも、もっとも痛快なものと言えよう。英語第二公用語論については、さしあたり本書を読むだけでこと足りる。見事に終止符を打っている。

 三人の会話を柱に、それぞれの論文が一つずつ加わるという珍しい形式で、日本人、日本語、英語を縦横に語る。鼎談だけでは深い所まで達しにくいが、三つの味わい深い論文がしっかり補っている。逆に、論文だけでは堅苦しくなりかねないところを、三人の軽妙な会話が救っている。

 森本「日本は滅びつつあるじゃないですか……」

 鈴木「本当に。人間がすっかり駄目になりましたね」

 大野「じゃあ、滅びないように……。僕は滅びたくないんだ(笑)」

 森本「僕だって、そう思いますよ。でも、無理だな」

 大野「まあ、そう急がないで……(笑)」

 といった調子のやりとりが本質論の狭間に挿入されるため肩がこらない。

 深刻な対立があっては読みづらいが、この三人の場合、時折の対立はあるにせよ本筋で一致しているから、読みやすい。

 三人には敬服すべき共通特徴が二つある。まず物事を常に歴史的視点から考察するというところである。これは、日本語の形成にタミル語が大きく関わった、という独創的見解を唱えてきた大野晋氏、言語を社会の流れの中で捉えユニークな提言をしてきた鈴木孝夫氏、博識に豊富な実地見聞を絡ませ独自の文明論を展開してきた森本哲郎氏、ならではのものである。

 議論が決して軽きに流れないのは、分野は異なるものの歴史的考察という方法を共有する三人を配した人選の妙であろう。

 もう一つの特徴は愛国心である。無論偏狭なナショナリズムではなく、日本の文化、伝統、自然を心から愛するという意味である。三者とも憂国の士である。

 戦後の混乱の中、占領軍が日本を無力化する目的で定めた基本デザイン通りに、落ちるところまで落ちてしまった日本人を心底憂えている。流行りのグローバリズムに踊らされ、物心両面でアメリカの植民地となりつつある日本を嘆いている。

 ここでも歴史的視点が物を言う。占領軍の定めた基本デザインをありがたくおしいただいた日本と、同じ敗戦国でありながらそれを拒否したドイツを比較する。紀元前の昔から息つぐ間もなく戦争をしてきたユーラシア大陸の国家と、有史以来たったの六十年間ほどしか対外武力攻勢に出なかった日本との違いとする(七世紀に百済の求めに応じた朝鮮出兵、十六世紀末の秀吉による二度の朝鮮侵略、および日清戦争から第二次大戦終結までの五十年間)。

 すなわち負け方を知っているドイツと知らなかった日本ということである。そして異民族にひどい目にあわされた経験をもつ人間だけがもつゼノフォビア(外国人恐怖・不信)、ユーラシアのすべての民族が強く抱く自己防衛本能、をドイツはもっていたのに日本はもっていなかったということである。

 この戦争慣れの差という見方は、本書を読みながら私が意表をつかれた、いくつかの機会の一つである。

 意気軒昂な三人はそろって大正時代後半の生まれである。旧制の中学高校教育を受けた方々である。芯がしっかり通っているのは、年齢に伴う豊富な経験や知識のせいばかりではあるまい。

 十年もすれば、このような気骨と見識を備えた人々のほとんどが引退するだろう。真のエリートが日本からいなくなってしまう。「滅びつつある」という言葉が現実味をもって胸に迫ってくる。

(ふじわら・まさひこ 作家)

▼大野晋・森本哲郎・鈴木孝夫『日本・日本語・日本人』(新潮選書)は、九月刊

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