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六十歳から家を建てる

天野彰/著

1,210円(税込)

発売日:2007/09/25

  • 書籍

待ちに待った定年。わがままいっぱいの家に住もう。終の住処はこれで決まり!

現役時代は会社や家族のための人生だった。定年後、はじめて夫も妻も自分の本当の人生を生きられる。そのために「新たな家」が必要だ。増築、減築、マンションのリフォームも含め、さまざまな実例と資金調達の工夫が満載。バリアフリーだけじゃない。もっと重要なことがある! ベテラン住宅建築家が薦める理想的な晩年の家。

目次

序章 なぜ六十歳で家を建てるのか
 夫婦は一つではない 家とともに朽ちてはいけない

第一章 決断すると見えてくる現実のいろいろ
 「この年で家を建てるとは思わなかった……」
 家を建てたら十歳も若返った
 まずは口論となる オレのリビングじゃないのか?
 あなたの居場所はどこ? ホンネvs.ホンネ
 自分のことだけを考えれば未来が見えてくる
 「アナタはアナタ、私は私」の実例 理想の寝室
 定年後、忙しくなる

第二章 マンション、二世帯、田舎暮らしの落とし穴
 マンション暮らしの盲点 何を選択基準にすべきか
 マンションは不動産ではない 団塊の世代向け商品にご用心
 「未来」のない世界で生き生きと暮らせるか 六十歳は若すぎる
 二世帯同居の危うさ 田舎暮らしの落とし穴
 まずは旅でいろいろ経験する

第三章 実例、六十一歳からの家
 趣味の館 サラリーマン時代の経験を生かせる
 見積書で家づくりの面白さを知る
 キッチンは妻だけの城ではない 来客が楽しみになる
 家族の変化に合わせてリフォームする
 古民家での暮らし方の一例 古民家再生は心のJターン
 旧家に思いがけない歴史 ないがしろにできない祖先への思い

第四章 資金の工夫あれこれ
 定期収入が変わる まずは現在の住まいの資産価値を知る
 売るためのリフォーム 今のマンションを生かす
 「増築」ではなく「減築」を
 「家曳き」で駐車スペースをつくった
 「ローンなし」で建てたアパート併設住宅
 安心して新商売を始められる家
 建売住宅を建てて売ってしまう
 コイン・パーキングや自販機

第五章 美しく老いるための家
 三世帯同居もありえる 千五百万円で建てた総ヒノキの家
 「増殖見込み住宅」を建てる 無計画な増改築は損
 「巣箱型同居住宅」「高床式住宅」 他人と契約同居
 「介護する家」が「介護してもらう家」に
 車椅子住宅の欠点 這ってでも行けるトイレ
 床を転がりながら身体を洗える浴室
 本当の「バリアフリー」を考える
 家と一緒に美しく老いたい

あとがき

書誌情報

読み仮名 ロクジッサイカライエヲタテル
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-603591-3
C-CODE 0377
ジャンル 建築、住宅建築・家づくり
定価 1,210円

書評

波 2007年10月号より 六十歳になるのが待ち遠しい  天野 彰『六十歳から家を建てる』

見城美枝子

 以前とあるテレビ番組で、家づくりの極意を説く天野さんと、一年間ご一緒したことがある。天野さんのアイディアはいつも実用的で、思わず住んでみたくなる気にさせる。その彼が最近「六十歳は家の建て時」と、強く訴えている。
 ――私たち(定年近い人)は、意外と大きなことを見落としている。それは「家」。リタイアが迫ると、旅や趣味、田舎暮らしに目はいくけれど、家をリフォームしたり新築したりする人は少ない。
 今まで、「メシ、フロ、ネル」で済まされていた夫婦が、ある日をもって「朝から晩まで」顔を突き合せる間柄になる。関係が変貌するのに、器である家がそのままでいいわけがない。
 また、天野さんはこうも言う。今まで住んでいた家を「自分のために」建てたと勘違いしていないか。マイホームは、実はアワホーム、ゼアホームだったのである。それは「家族」のため、子供たちのため(子育て)の家だったのだ。だから、子供が独立し自分のための人生が生きられるようになった時、新しい器を造る必要があるのだ。それは妻も同じこと。これからは子供や夫のためでなく、自分のために生きられる家に住もうではないか。逆を言えば、家を建てることは自分がこれから何をしたいのか、真剣に考えることにもなる。
 本書の魅力的なところは、様々な状況の家族の実例が平面図や写真とともに語られていることだ。
 家を建てることで孫世代と触れ合うようになり、十歳も若返った男性の例。家が新しくなると妻も美しくなる、人間は住む環境によって驚くほど変われるというくだりは、何人も若返った施主を見て来ただけに説得力がある。
 ある年齢から、夫婦は同居人関係に移る。ルームシェアならぬ、一軒の家の中で住空間を分け合って住むのだからホームシェアとも言える。趣味も違えば、起床就寝もまちまち。そんな二人を長持ちさせるには、夫婦別寝室がおすすめ。「いくら仲の良い夫婦でも、眠る時くらい一人になりたい」と、真ん中にしきりを入れたベッドと和室の寝室や、いざという時レスキューできるように中庭をはさんで並ぶ寝室などなど、天野さんの提案は、本当にそそられる。
 夫婦はいつか一人になる。そういったことも想定内にしている家づくりを、天野さんは具体例を上げて提案する。老人は二階に住め、踊り場のある階段、這ってでも行けるトイレ、床を転がりながら身体を洗える浴室……目から鱗の実例が盛りだくさんなのである。そして、一番気になる資金の話は、こんなアイディアもあるのかと思わず膝を打つ。
 六十歳になることが楽しみな、勇気が湧いてくる良書である。



(けんじょう・みえこ 青森大学教授)

担当編集者のひとこと

六十歳から家を建てる

家を建てると、夫も妻も10歳若返ります。
思わずナットク。ベテラン住宅建築家が教える「理想的な終の住処」のつくり方! 著者である建築家の天野彰さんは、今まで何冊も本を出している。最初に天野さんにお目にかかった時、こう言われた。
「僕を担当する編集者は、結局、僕に設計を頼む人が多いんだよね」
 ドキッ。おれ、マンション住まいだし、金もないし……、私はそう思った。しかしその後、仕事が進み、何度かお会いしているうちに、私も家を建てたくなってきたのだ。「これだな、きっと」と、私は施主になった編集者たちに思いを馳せた。
「家というものは、一軒一軒ちがうべきものですよ。一人一人がちがう存在であることと同じ。性格も好みも、家族構成も、生活もちがうはずでしょ。住む家族が違う以上、家もちがって当然なんです。私は洋服の仕立て屋のように家族に合った家をつくっているんです」
 考えてみれば、すごく真っ当なこと。洋服だって、自分に合ったサイズの、自分の好みのデザインと色のものを着ている。それと、少しも変わらない。
 そうして、彼が今まで設計した実例を聞きながら、実際にそこに住む人たちを想像してみると、こちらまでワクワクしてくる。リビングとつながった開放的なデッキ。大型プロジェクターのあるオーディオルーム。露天風呂のようなバスルーム。大きなキッチン……。
「60歳になったら、なおさら建てやすいですよ。大きな家なんていらない。だって、子供はもういないでしょ。子供部屋をリフォームするだけでも、全然違います。これまでは、会社のため、子供のため、妻(夫)のために生きてきたけれど、やっと自分勝手に暮らせるんですよ。好きな家に住みましょうよ」
「でも天野さん、資金は?」と一番気にかかることを聞くと、これもまた、思いもよらない秘策もあって勇気づけられた。詳しいことは、本書をお読みください。
 60歳まであと10年あるけれど、私もそろそろ天野さんに相談してみようかなあ……。

2016/04/27

著者プロフィール

天野彰

アマノ・アキラ

愛知県岡崎市生まれ。建築家。一級建築士事務所アトリエ4A代表。日大理工学部卒。日本住改善委員会を組織し、生活に密着した住まいを手がける。省庁の専門委を務め、テレビ、雑誌、講演など幅広く活動中。『六十歳から家を建てる』『建築家が考える「良い家相」の住まい』など著作多数。

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