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小説作法ABC

島田雅彦/著

1,430円(税込)

発売日:2009/03/25

書誌情報

読み仮名 ショウセツサホウエービーシー
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 254ページ
ISBN 978-4-10-603631-6
C-CODE 0395
ジャンル 文芸作品
定価 1,430円

「プロのこつ」は極めてシンプルでありながら、奥が深いものです――。

人は誰でもストーリーテラーになる。「物語る能力」を最大限に生かすための基本的技術とは何か? 一行目をどう書き始めるか、自分の無意識など信じるな、一〇〇字あらすじ企画書法、プロの証は原稿料……最前線の現役作家がすべてを投入して語り尽くした「小説の教科書」。蓮實重彦氏も「21世紀の『小説神髄』」と推薦!  

目次

0 はじめに
人は誰でもストーリーテラーになる
1 小説のジャンルとは
(A)自分の無意識など、信じない
(B)「文学」を大別すると
〈1〉神話 〈2〉叙事詩 〈3〉ロマンス 〈4〉小説 〈5〉百科全書的作品 〈6〉風刺(サタイア) 〈7〉告白
(C)ナビゲーション・システムとしてのジャンル意識
2 小説の構成法
(A)タブラ・ラサになにを書くか
(B)読者の心をつかむ、ファースト・ドロップ
(C)小説は、WHYとBECAUSEで推進される
(D)BECAUSEの快楽を超えるもの
(E)安っぽい物語に陥らないために
3 小説でなにを書くのか
(A)日記ではなく、小説を書きたいなら
(B)小説の企画書を書いてみる
(C)タイトルは作品の顔である
(D)キャラクター設定の変数
〈1〉年齢 〈2〉性別 〈3〉性格 〈4〉階級 〈5〉名前 〈6〉それ以外
(E)小説家は一人で何役もこなすべし
4 語り手の設定
(A)人称の設定により、小説は動き出す
(B)意識的な一人称の使いかた
〈1〉愚行自慢――センセーショナリズムで勝負 〈2〉自分との対話――多層性の構築 〈3〉一人ツッコミ&ボケ――内なる自分との対話
(C)語り手の存在を際立たせる二人称の使いかた
(D)上級者向けの三人称の使いかた
〈1〉神の場合 〈2〉作者の場合 〈3〉個性をもった語り手の場合 〈4〉特殊な人間を語り手とする場合
(E)語り手の設定の戦略、いろいろ
5 対話の技法
(A)十返舎一九の系譜につらなるのは
(B)方言マスターのために、友人関係を活用する
(C)行き交う人の会話を模倣する
(D)噛みあいすぎる会話には要注意
6 描写/速度/比喩
(A)小説を読む快楽を担うものとは
〈1〉風景描写 〈2〉静物描写 〈3〉描写の細分化
(B)歩く人とタクシーの乗客では見えるものがちがう
(C)身体感覚に訴える比喩の強み
(D)比喩を最大限にいかすには
7 小説におけるトポロジー
(A)ヨソモノの視点で場所を見ること
(B)東京=資本主義の快楽センターである
(C)土地のディテールに淫する
(D)自分にとって特別な土地を描くこと
(E)いかにして、マタギになりきるか
(F)旅と小説
8 小説内を流れる時間
(A)小説を流れる時間はひとつではない
(B)今この瞬間だけの世界
(C)記憶喪失の人物を描くには
(D)どの時点から出来事を語るのか
(E)現在形を用いて、過去の出来事は語れるか?
(F)記憶の基盤の脆弱さ
9 日本語で書くということ
(A)日本語をローマ字表記にしてみると?
(B)青森県民と鹿児島県民の、言葉が通じる理由
(C)方言の効用
(D)小説は多声で構成せよ
10 創作意欲が由来するところ
(A)なぜ人は小説を書くのか
(B)作家をめざす、五つの動機
〈1〉「ヒーローになりたい」 〈2〉「女にモテたい」/「男に愛されたい」 〈3〉「遊んで暮らしたい」 〈4〉「愚行の研究」 〈5〉「恨みを晴らす」
11 番外篇――私の経験に即して
(A)デビュー作に、アイディアはすべて投入せよ
(B)追いつめられることの効用
(C)小説の職人であれ
(D)戦いの記録としての小説
(E)私が小説を書く理由
(F)作家を縛る象徴システム

あとがき

書評

波 2009年4月号より プレイヤーになるためのABC

江南亜美子

優れた選手が、優れた監督になるとは限らない。メジャー昇格の経験のないまま四年という短い捕手としての現役生活を終えたジョー・マドンが、昨年、就任三年目のレイズを率いてアメリカン・リーグを制したことは記憶に新しい。
こと小説に関しても同じことはいえる。現場で実績を上げること(=実作)と、技術を教え導くこと(=書き方の教授)とは、ともに言葉を媒介するとはいえ、別の能力と運動神経を必要とする。
かつて「青二才」や「ポストモダンの旗手(プリンス)」とよばれた島田雅彦も、早や筆歴二十五年。いまや「文学界の裏番長」との呼び声も高い(?)ベテランが、はじめて創作方法のレクチャーを(サービス精神旺盛に体験談をまじえて)体系的に試みたのが本書である。
本書は法政大学での講義を基にまとめられている。わたしは、著者がかつて所属していた近畿大学での講義に間近に接していた者であり、今回は本書編集補佐として最新版講義にも浴することができた。いわば、裏番長の下っ端のパシリのようなものとして、その講義の変遷に触れてきたわけだが、年々強度を増す講義内容のなかで、著者はこう教えている。
“小説は、脈々と続いてきた言語表象芸術の末っ子であり、叙事詩とも、サタイアとも、騎士道物語とも明確に異なっている”と。
末っ子は、つねに兄を意識し、兄に反発する。その暴れん坊であり、貪欲でもある末っ子としての小説の性格を、「構成法」「キャラ設定」「人称」「時制」「トポロジー」などの項目別に解説したのが本書といえる。それぞれの項目に関しては、実践的な課題(ドリル)も用意されていて、はじめて小説を書く人にとっての踏切板ともなるだろう。
また、自作をふくめた豊富な実例が示されることで、良質な読書案内(ブックガイド)の側面を持つ点も、本書の魅力ではないだろうか。十返舎一九からザミャーチンまで。古井由吉から金原ひとみまで。末っ子が作った家族の歴史の、最良にしてブリリアントな部分を、島田流の振り幅の大きさでたどることができるのだ。
小説のなんたるかを、原理原則で語ること。次のパラグラフ、次に主人公が出会う登場人物、次の作品の書き方を、手とり足とり教えること。“迎合やマンネリとは無縁であれ”と鼓舞すること。なぜ書くかの根源を問うこと。書き手の視点からの小説読解法を示すこと――。
野球の例をふたたびひけば、この監督の若手育成方法は、スパルタだが、効果は高い。これによって本書の読者は、良質なプレイヤーになるための基礎体力と精神力を存分に培うことになるだろう。この場合のプレイとは、書くことだけを指すのではない。小説を読むこと自体もまた、れっきとしたプレイなのだ。つまり本書は、すべてのひとのためにある。

(えなみ・あみこ ライター)

担当編集者のひとこと

小説家による小説入門

 最近、小説の書き方を案内する本が増えています。小説新人賞の応募者がどんどん増え、カルチャーセンターの創作講座も大人気です。「書く人」たちの台頭は、喜ぶべきことか、あるいは逆か? 二十歳でデビューし、四半世紀を越えるキャリアを持つ島田雅彦さんは、「人は誰でもストーリーテラーになる」という一節から、本書を書き始めました。言い方を換えれば、誰でも「書く人」になれる、ということでもあります。編集者として、たくさんの「書く人」の中から、どうすれば抜きん出ることができるのか、ぜひ考えて頂きたいと思い、企画した本です。

 島田さんによれば、その方法は、たった一つ。とにかく読み、すばらしい先達たちがどのような技術を持っていたのか、ひたすら学び、真似からやがて自分のものにすること。作家人生を振り返りながら、どうやって自分自身を磨いてきたのか、秘訣のすべてを明かしています。プロの書き手とはどういう存在なのか、これだけ正直に書いた本はないでしょう。

 とくに、番外篇に書かれたデビューの頃の思い出は印象的です。学生作家として颯爽と世に登場した島田さんが何を考え、どのような戦略で動いていたのか。

「いま持っているもののすべてをこの一作に投入せよ」

 この教訓は、プロ・アマ問わず、新しい可能性を拓こうとするすべての書き手にとっての至言でしょう。

2009/03/25

著者プロフィール

島田雅彦

シマダ・マサヒコ

1961年3月13日東京都生まれ。東京外国語大学外国語学部ロシア語学科卒業。小説家。法政大学国際文化学部教授。1983年、大学在学中に『海燕』掲載の『優しいサヨクのための嬉遊曲』でデビューし、芥川賞候補作となる。候補6度は最多記録。小説に『亡命旅行者は叫び呟く』『夢遊王国のための音楽』(1984年、野間文芸新人賞)『天国が降ってくる』『僕は模造人間』『ドンナ・アンナ』『未確認尾行物体』『夢使い――レンタルチャイルドの新二都物語』『ロココ町』『アルマジロ王』『彼岸先生』(1992年、泉鏡花文学賞)『預言者の名前』『流刑地より愛をこめて』『忘れられた帝国』『浮く女 沈む男』『そして、アンジュは眠りにつく』『内乱の予感』『君が壊れてしまう前に』『子どもを救え!』『自由死刑』『無限カノン』三部作(『彗星の住人』『美しい魂』『エトロフの恋』)『フランシスコ・X』『溺れる市民』『退廃姉妹』(2006年、伊藤整文学賞)『エリコ』『カオスの娘――シャーマン探偵ナルコ』(2008年、芸術選奨文部科学大臣賞)『佳人の奇遇』『徒然王子』(第1・2部)『悪貨』『英雄はそこにいる』『傾国子女』『ニッチを探して』『暗黒寓話集』『虚人の星』(2016年、毎日出版文化賞)『カタストロフ・マニア』『絶望キャラメル』『人類最年長』『君が異端だった頃』(2020年、読売文学賞)。随筆等に『中枢は末梢の奴隷 解剖学講義(養老孟司と共著)』『偽作家のリアル・ライフ』『汗のドレス(唐十郎と共著)』『語らず、歌え』『天使が通る(浅田彰と対談)』『愛のメエルシュトレエム 島田雅彦クロニクルズ1987-1991』『死んでも死にきれない王国から ある旅人のアフリカ日記』『植民地のアリス』『漱石を書く』『瞠目新聞』『彼岸先生の寝室哲学』『茶の間の男(語り下ろしロング・インタビュー大辻都、星野智幸編)』『ミス・サハラを探して チュニジア紀行』『世紀末新マンザイ パンク右翼vs.サヨク青二才(福田和也と対談)』『日本の名随筆 別巻85 少年(編纂)』『退廃礼讃』『郊外の食卓』『感情教育』『ヒコクミン入門』『ひなびたごちそう 島田雅彦の料理』『アジア自由旅行(佐藤治彦と共著)』『楽しいナショナリズム』『無敵の一般教養(パンキョー)(編纂)』『食いものの恨み』『衣食足りて、住にかまける』『快楽急行』『おことば 戦後皇室語録』『妄想人生』『一度死んでみますか? 漫談・メメントモリ(しりあがり寿と対談)』『酒道入門』『島田教授の課外授業 悩める母親のために』『小説作法ABC』『クオリア再構築 常識の壁を突き抜け、遡る5つの対話(茂木健一郎と対談)』『徒然草 in USA 自滅するアメリカ 墜落する日本』『オペラ・シンドローム 愛と死の饗宴』『迷い婚と悟り婚』がある。

島田雅彦オフィシャルサイト (外部リンク)

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