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こんなにも明るく活気にみちた都があった。

万葉びとの奈良

上野誠/著

1,320円(税込)

本の仕様

発売日:2010/03/25

読み仮名 マンヨウビトノナラ
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 212ページ
ISBN 978-4-10-603655-2
C-CODE 0395
ジャンル 日本史
定価 1,320円

奈良の道はいにしえの平城京へと続いている――。整然たる条坊、壮大な宮城、寺院や仏像。のびやかな天平文化、やまと初のみやびをはぐくんだ国際都市・平城京。万葉集や正倉院御物を手がかりに、ミカドから庶民までの仕事と恋と日常をありありと甦らせる。万葉学者が独自の視点で日本の源流に案内する、かつてない奈良論。

著者プロフィール

上野誠 ウエノ・マコト

1960年福岡県生まれ、奈良大学文学部教授。国学院大学大学院博士課程単位取得満期退学。万葉文化論を標榜し、歴史学・民俗学・考古学など周辺領域の研究を応用した『万葉集』の新しい読み方を提案している。著書に『古代日本の文芸空間―万葉挽歌と葬送儀礼』(雄山閣出版)、『大和三山の古代』(講談社)、『万葉集から古代を読みとく』(筑摩書房)など多数。

書評

内側から眺め、内側から語る

佐佐木幸綱

 平城遷都一三〇〇年。ゆるキャラのせんとくんが大活躍。奈良は多くの観光客で活気づいているようで、さまざまな場面で話題になる昨今である。平成十年に平城宮の朱雀門が復元され、大極殿正殿もいよいよ復元・公開される。
 本書は、そんないま話題の奈良を、内側から眺め、内側から語った楽しい一冊である。
 平城京は「律令国家の官人の街、天皇・皇族と役人、さらにはその家族の街だった」。
 平城京は「今日でいえば国立大学に当たる寺院群を各所に配置し、研究学園都市としての一面を持っていた」。
 私たちは「あおによし奈良」という観光ポスターを見て、「古都」というイメージで遠い街のように奈良をながめる。鹿が平気であるいている街、巨大な古代遺跡が広々とひろがっている街、公道をあるいているとそのまま古い大寺の境内にはいってしまう街。私たちが奈良をエキゾチックな街とおもうのは当然なのだが、本書は万葉集という視点、奈良に住む人の視点で、そのイメージをぐっと現代の方にひき寄せてくれる。じつにスリリングである。
 人口約十万ほど。万葉集時代の奈良は、中央集権国家、仏教国家という当時の日本が選択した国家の枠組みの方位にそって建設され、整備された活気のある首都だった。
 その奈良は過去完了ではない。たった一三〇〇年の時間ではないか。奈良を内側から語る著者の語り口のはしばしに、そうした実感が読みとれる。
「まず、本堂の屋根の瓦を見て下さい」。著者は元興寺を案内する時にかならず、こう言うのだそうだ。「あの瓦は、明日香で焼かれた瓦が七一〇年以降この地に運ばれて、元興寺のお堂の屋根に今も載っているのです。明日香の瓦が現役で使われているんですよ……」。
 過去ではない一三〇〇年昔が現存するのだ。
「大極殿は、国会議事堂。朝堂院は、霞ヶ関の官庁街。朱雀門は、皇居前広場。佐紀・佐保は高級住宅街。春日野は、休日を楽しむ行楽地。男と女が出会う歌垣の場は、大阪難波の引っ掛け橋。そして古都である飛鳥は、永遠のふるさと……」。
 生活も、政治も、男女の出逢いも、たった一三〇〇年ではたいして変わらないのだ。万葉人たちも、花を植え鳥を飼育し池をつくって、庭を楽しんだ。勤務先への不満や昇進の遅さをぐちりながら同僚と酒を飲んだ。道で出あった人妻に一目ぼれして、ねむれない夜をすごした。私たちとおなじ日本語をしゃべり、短歌をつくって楽しんだのだった。
 単なる歴史の解説書ではない。万葉集の時代を現に生きていた人々をクローズアップした日本人論であり、それはそのまま現代日本人論でもあるようだ。

(ささき・ゆきつな 歌人)
波 2010年4月号より

目次

プロローグ
第一章 「ミチ」「ミヤ」「ミヤコ」
第二章 奈良に都がやって来た!
第三章 「奈良びと」の誕生
第四章 「ミヤコ」と「ヒナ」の感覚
第五章 半官半農の貴族たち、官人たち
第六章 女性・労働・地方
第七章 平城京の庭を覗く
第八章 渡来の僧・鑑真物語
エピローグ

あとがき
参考文献
本書を読むための平城京関連年表

キーワード

担当編集者のひとこと

あおによし奈良の都は咲く花の…

 近鉄線で京都から奈良に向かうと、だんだんなだらかな丘や畑や河の景色が広がって、「やまと」と平仮名で呼びたくなる懐かしさを覚えます。
 今年が平城遷都1300年という大きな節目の割に、浮いた様子もなく穏やかでのどかな奈良の街々。「鄙びた」という言葉を使いそうになりますが、奈良こそ、日本史上はじめての巨大都市・藤原京や国際都市・平城京を擁して都文化を極めた地です。それは当時の整然たる条坊の面影を今にのこす大路小路、飛鳥や斑鳩の寺々、東大寺大仏殿や唐招提寺、復元された朱雀門、平城京の東院庭園、そして大極殿正殿などの壮麗さをみれば一目瞭然。しかし、天平の都に生きた人々のこころと暮らしを知るためには、「うたを読んでほしい」と著者の上野誠さんはいいます。
「万葉集」約4500首のうち、奈良にちなんだものは900首もあり、和歌を詠み書き記すという文化が奈良時代の都において成熟していったことを明かしています。また、そこで詠われている、上は天皇、貴族から宮中人(ミヤビヲ)、下級官人、防人からはした女にいたる多様な人々の暮らし、恋やなやみや仕事のグチのリアルなこと。人のすること思うことは、いつの時代でも変わらない、とあらためて納得させられます。
 国のかたちを成し、外国との交流で膨大な知識と技術を得ようとした時代、稀にみる明るさと大らかさにみちた都をありありと描き出し、万葉学者の独自の視点で現在と1300年前とをつなぐ、かつてない奈良論。いま、奈良を訪ねるなら、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

2010/03/25

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