ホーム > 書籍詳細:「律」に学ぶ生き方の智慧

釈迦が考えた「生き甲斐」を手に入れる意外な方法とは?

「律」に学ぶ生き方の智慧

佐々木閑/著

1,210円(税込)

本の仕様

発売日:2011/04/22

読み仮名 リツニマナブイキカタノチエ
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 190ページ
ISBN 978-4-10-603675-0
C-CODE 0314
ジャンル 宗教
定価 1,210円
電子書籍 価格 880円
電子書籍 配信開始日 2011/10/28

「本当にやりたいこと」を実現するには、どうすればよいのか――? 日本仏教から失われた釈迦の教え「律」には、現代社会を幸せに生きるヒントが隠されている。理系出身の仏教学者が、古代インドの宗教界から、現代日本の科学や政治の問題まで、縦横無尽に行き来しながら、「律」に秘められた釈迦の哲学をわかりやすく読み解く。

著者プロフィール

佐々木閑 ササキ・シズカ

1956年、福井県生まれ。花園大学文学部仏教学科教授。京都大学工学部工業化学科および文学部哲学科仏教学専攻卒業。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。カリフォルニア大学大学院留学を経て、現職。文学博士。専門は仏教哲学、古代インド仏教学、仏教史。著書に『インド仏教変移論』、『日々是修行』、『科学するブッダ』、『別冊100分de名著 集中講義 大乗仏教こうしてブッダの教えは変容した』、『「律」に学ぶ生き方の智慧』等。

書評

波 2011年5月号より 仏教のサヴァイヴァル・マニュアル

宮崎哲弥

オウム真理教などのカルトが社会問題に発展するきっかけは、入信した若者の親が怒り始めることだ。彼らは口を揃えて「我が子を奪われた」と訴える。実は、これとそっくりの非難をブッダの教団も浴びせかけられていたのだ。
『律蔵・大品』には、マガダ国の王舎城で多数の男子を出家させたため、「沙門ゴータマがやってきて子を奪う。夫を奪う。家を断絶せしめる」と警戒されたという記録がみえる。この危難に対し、ブッダは「そうした声は長くは続かない」と予測したという。果たせるかな、親や妻らの抗議はしばらくして止んだ。
ブッダは社会との軋轢をいかに緩和したのか、『大品』は詳らかにしていない。だがヒントはある。王舎城における教団の拠点、竹林園が「都邑から遠からず、近からず」のところに位置した、という記述だ。市井に隣接してはいないが、離れてもいない、という微妙な距離だ。碩学、中村元氏は、この距離感を「原始仏教の社会性を理解するために非常に重要である」と評価している。
だが、世間と不即不離の関係を保つ工夫は本拠地の立地条件だけではなかった。
その工夫の核心が「律」である。「律」とはサンガと呼ばれる出家者集団内に設けられた規則の総称だ。先に引用した『律蔵』とは、本来「律」を集め編んだ文献を意味する。
ブッダの行状記が大半を占める『大品』はともかく、『律蔵』全体を研究する人は専門家でもなかなかいなかった。思想的価値が低く、無味乾燥で煩雑な規則集というイメージが強かったからだ。
しかし「仏教の社会性」を見極めるためには、「律」の目的と内容を精査するしかない。これが著者の問題意識である。そうして得られた実践知はサンガのみならず、「生き甲斐のための組織」のすべてに適用できる可能性を秘めている。
「生き甲斐のための組織」は、企業などの「営利のための組織」に比べて非妥協的で、独善に陥りやすい。営利目的ならば利益が上がらないときには改革改善を余儀なくされる。
然るに「生き甲斐組織」はそういう開かれ方をしていない。放置すればどんどん閉鎖的になり、最悪の場合、反社会性を帯びてしまう。
そこでブッダや教団指導者たちは「律」を定め、サンガ内に社会の視点を導入した。
最も重い四つの禁制のうち、一般社会でも犯罪である殺人や窃盗はいうに及ばず、性行為の禁止や「悟った」と嘘を述べることの禁止も、布施をしてくれる市井の人々の目にサンガがどう映っているか、という意識を抜きにしては考えられない。著者はそう指摘する。
本書は、社会と適切な距離を取りながら「生き甲斐組織」を持続させていくための智慧を仏教の伝統に求めた、サヴァイヴァル・マニュアルである。

(みやざき・てつや 評論家)

目次

まえがき
第一章 律とはなにか
「修行する」宗教/「三宝」とは/サンガと律/なぜ「集団」なのか/大乗仏教と日本仏教/上座仏教は「釈迦の仏教」か
第二章 「出家」という発想
出家とはなにか/好きなことだけやって暮らす/一般社会における「出家」/「食べていけない」リスク/「托鉢」という生活方法/組織存続の鍵
第三章 律が禁じた四つの大罪
律の構造/波羅夷という大罪/性行為はなぜ禁止なのか/もう一つの理由/経分別の解説/窃盗罪について/殺人/「悟り」を偽ること/俗世間との関係性/けん度について
第四章 オウム真理教はなぜ壊れたか
オウムと仏教の共通性/オウムの黎明期/ヨガ教室から宗教法人へ/特殊な出家制度/「殺人教団」への変貌/「真理党」の選挙惨敗/そして地下鉄サリン事件へ/人を不幸にする出家
第五章 生き甲斐の見つけ方
仏教との出会い/在家と出家/出家の手続き/師弟関係/出入り自由/財産と家族/オウムとの比較/「還俗の自由」の重要性/師の権力の制限/目的と運営/法臘による上下関係/組織の寿命/生活の基本となる四項目/「生き甲斐のための組織」のチェックポイント
第六章 出家的に生きるということ
出家としての科学/科学と科学技術/参入ハードルの違い/出家者の姿勢/生活共同体と情報共有体/科学界の「波羅夷罪」はなにか/科学における布教/出家としての政治/布施と見返り/出家的に生きる
あとがき

担当編集者のひとこと

「律」に学ぶ生き方の智慧

震災後の「生き方の智慧」「篤く三宝を敬え。三宝とは仏・法・僧なり」――。
 聖徳太子の十七条憲法のこの一節は広く知られていますが、「じつは日本仏教には三宝が揃っていない」という事実を知っている方は少ないのではないでしょうか。
 ちなみに「仏」とは釈迦のこと。「法」とは釈迦の教え。ここまでは問題ありませんが、じつは最後の「僧」が曲者なのです。「お坊さんなら日本にもいるじゃないか」と思われるかも知れませんが、「僧」とは「お坊さん」のことではありません。正確には「サンガ(僧伽)」と言って、「釈迦がつくった『律』という規則を守りながら修行生活を送っているお坊さんの集団」を指すそうです。日本の朝廷は、仏教を「国家統治の道具」として導入したので、「律」による自治権を僧侶に与えることを拒否しました。結果として、日本は世界で唯一、「僧」も「律」もない特殊な仏教国となってしまったのです。
 では、日本仏教から失われた「律」とは、どんな内容なのでしょうか? 本書は、「律」研究の第一人者が、その概要はもちろん、その裏に隠された釈迦の意外な哲学までをも、わかりやすく解説したものです。
 とは言え、本書は「仏教のお勉強」の本ではありません。タイトルにある通り、「生き方の智慧」について書かれた本であることを、声を大にしてアピールしておきたいと思います。
 たとえば、このたびの東日本大震災でその真価が問われた「科学者」「政治家」の在り方について。あるいは「世のため、人のため」を志す善意のボランティア集団が、災いをもたらす危険性について。そして、この無常の世の中において、確かな「生き甲斐」を手に入れる方法について……。
 本書には、震災後の日本人に役立つ「生き方の智慧」がたくさん詰まっています。ぜひご一読下さい。

2016/04/27

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