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思索する書家・石川九楊が日本書史のダイナミックな流れを解き明かす!

説き語り 日本書史

石川九楊/著

1,100円(税込)

本の仕様

発売日:2011/12/22

読み仮名 トキガタリニホンショシ
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 174ページ
ISBN 978-4-10-603694-1
C-CODE 0371
定価 1,100円

空海の書「益田池碑銘」に多発する奇怪な表現は何を意味するのか? 藤原行成の「白氏詩巻」はなぜ日本文化の精髄といえるのか? 藤原俊成・定家の親子が書にもたらした革命とは何か? 聖武天皇から近代の書家まで、日本の書の歴史の全貌をやさしく語る。一読すれば、書に対する見方が大きく変わること間違いなし!

著者プロフィール

石川九楊 イシカワ・キュウヨウ

書家、評論家、京都精華大学客員教授。1945年、福井県生れ。京都大学法学部卒業。評論活動、創作活動を通じ、「書は筆蝕の芸術である」ことを解き明かす。著書に『中國書史』(京都大学学術出版会)、『日本書史』『近代書史』(名古屋大学出版会)、『日本語とはどういう言語か』(講談社学術文庫)、『やさしく極める“書聖”王義之』『ひらがなの美学』(新潮社)、『石川九楊著作集』全12巻(ミネルヴァ書房)、編著に『書の宇宙』全24冊(二玄社)など。

目次

はじめに 途中乗車し、途中下車した日本の書史
日本の書史の特徴
第一章 書史への途中乗車――中国時代の書
(1) 日本以前の弧島
徐福伝説
(2) 金印と上表書
第二章 漢字の中核化――擬似中国時代の書
(1) 肉筆の遺品――「法華義疏」、聖武天皇「雑集」、光明皇后「楽毅論」
(2) 日本最古の石碑――「宇治橋断碑」
(3) 写経――国を挙げての識字運動
(4) 三筆――大陸への違和
三筆と雑体書/同時代中国への違和感――空海「風信帖」/空海「益田池碑銘」の雑体書表現/究極の三筆――伝橘逸勢「伊都内親王願文」/三筆には入らない最澄「久隔帖」/美学をもって立国した日本
第三章 日本文字の誕生――日本時代の書
(1) 三筆から三蹟へ
(2) 三つの日本文字
片仮名と平仮名の違い/和様漢字とは
(3) 三蹟と日本文字の生成史
本格的な和様文字の始まり――小野道風「屏風土代」/日本文化の精髄――藤原行成「白氏詩巻」
(4) 日本文字の特質
(5) 日本文字誕生の背景
(6) 女手(和)の古典美の構造――古今和歌と書
女手の書の美――「寸松庵色紙」「継色紙」「升色紙」/絵画的な書
(7) 和歌の新段階――古今和歌後と後期上代様
(8) 作者の誕生――千載和歌と新古今和歌
藤原俊成「日野切」の革命/批評の書――藤原定家「近代秀歌」
第四章 中世の書――大陸禅の亡命と流儀書道
(1) 古代から中世へ
(2) 宋の書の亡命――禅僧=文官空間の書
(3) 墨蹟の日本化
無法の書・一休宗純
(4) 「五山」の落とし物
(5) 墨蹟の大衆化
親鸞、日蓮の漢字仮名交じり文
(6) 和様の万世一系化――流儀書道
スタイルを欠いた書――後鳥羽天皇「熊野懐紙」/流儀書道の特徴/流儀書道の系流
第五章 近世の書――西欧文明との出会い
(1) 寛永の三筆と近衛家煕
垂直筆の登場――近衛信尹/意匠化の拡張――本阿弥光悦/三筆風と三蹟風の合流――松花堂昭乗/近世古典学習法の成立――近衛家煕
(2) 公用基準書体の成立
(3) 墨蹟の変質
僧様(日本的墨蹟)の成立/唐様の出現
(4) 都市市民の興隆と、「散文的」なる書の誕生
唐様の「散文化」――池大雅、仙がい/近世の分岐点――芭蕉と蕪村/書の近代性――良寛
(5) 幕末の三筆――市河米庵、巻菱湖、貫名海屋
(6) 唐様と明治の革命
第六章 書史からの途中下車――世界段階への扉
(1) 東アジアの書の近代
(2) 近代革命の書――西郷隆盛、大久保利通
(3) 近代の書
(4) 石刻の書の受容
(5) 漢字の六朝化――副島種臣、中村不折、河東碧梧桐
(6) 習字手本の変革――西川春洞、日下部鳴鶴
(7) 平仮名の革命――上代様の復権

インタビュー/対談/エッセイ

波 2012年1月号より 「朱船」が三度やって来た

石川九楊

「泰平の眠りをさます上喜撰たつた四杯で夜も寝られず」――西からの「黒船」の衝撃をトラウマとして近代の日本の歴史は語られてきた。だが、書の歴史を辿っていくと、もう少し違った日本史像が見えてくる。
紀元前二〇〇年頃、高度な文明をもつ大陸から東海の無文字の弧状列島に文字が伝わってきた。日本の書の歴史の始まりである。最初は中国文字そのものであった文字を手なずけ、ついには日本風の和様文字が生まれる、というだけならわかりやすいのだが、ことはそう単純ではない。実は、日本の書史は三度にわたって中国からの「朱船(あかふね)」の衝撃を受けてきたのである。
七世紀に律令国家・日本が成立する。そこでは、国家的な識字運動が行なわれた。写経である。当時の写経は、たんに経文を書写することにとどまらない。文字言語学習運動であり、高度な中国の思想や学問を学ぶことでもあった。当時の日本の書は、先進文字である楷行書を真似たものであり、いまだ擬似中国文字の段階に留まっていた。
平安時代初期の空海等、いわゆる「三筆」の時代になると、そうした中国風一辺倒の擬似中国文字に変化が生まれ、鳥の頭のような形をした起筆など中国書史の本流には見られない、奇妙な書きぶりが見られるようになる。さらに平安中期の小野道風等「三蹟」の時代を迎えると、平仮名が生まれ、これにつれて、本格的な「日本文字」も誕生し、日本書史は中国書史との連動をやめた。そして藤原俊成・定家親子になると、スタイル=書体をもった仮名の書まで生まれるに至った。
ところが、元が王朝を樹立すると、宋の禅僧や知識人が多数日本に亡命してくる。宋からの亡命僧を起源とする中世禅宗寺院・五山は巨大な輸入文化センターであり、日本の外交、貿易、文教などをつとめる政治機構となった。
彼らが日本に新たにもたらしたのが宋代の行書、なかでも黄庭堅の書。五山僧の書はほとんどが黄庭堅風である。高度な大陸の新文明にさらされた日本の書は、歴史的展開を止め、自閉して流儀書道へと堕していく。そののち江戸時代になると、禅院の墨蹟は極太の筆画、大きな文字形からなる無法の僧侶の書へと転じていく一方で、昌平黌や藩校など儒学者の周辺では中国写しの唐様を生むことにもなった。
明治になると、日清間の交流が活発となり、新たな書がもたらされる。明治十三年、清の地理学者・楊守敬が一万三千点の碑版法帖を携えて来日したのはその一例である。当時の清では碑学が盛ん。六朝、とくに北魏の石碑の文字に範をとる書に初めて接した日本の書家たちは、従来の和様、唐様、日本型墨跡から脱して、輪郭の明瞭な近代的な水準の書へと押し上げていったのである。
大陸からの三度の「朱船」、とりわけ第二の衝撃をぬきに日本書史も日本史も語れない。

(いしかわ・きゅうよう 書家)

担当編集者のひとこと

説き語り 日本書史

石川九楊ワールドを理解するために最適な一冊! 若い頃の石川九楊さんは、著名な書の文字の筆の動きを数限りなくなぞったそうです。夜中にふと目覚めたときにも、空中に自分の指でなぞったというから驚きます。
 その石川さんは書家として活躍する一方で、「筆蝕」をキー・ワードにして、世に流布する単なる印象批評とは一線を画する卓抜な書理論も精力的に発表してきました。その考察は書にとどまることなく、日本文化全般、さらには東アジアにまで及んでいます。
 石川九楊さんの代表作である『中國書史』『日本書史』『近代書史』の三部作は、書の歴史を解明する画期的な著作ですが、きわめて大部なものであり、読み通すのはなかなか骨がおれます。
 そこで、書のことを全く知らない人でも簡単に理解できるような本を企画しました。その第一弾が本書です。細かいことは省略して、日本の書の歴史の大きな流れが一望できるようにしました。 個々の作品については、100点以上ある図版のキャプションをたどるだけでも楽しめるように工夫しています。来年には、『説き語り 中国書史』の刊行も予定しています。

2016/04/27

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