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奇妙なアメリカ―神と正義のミュージアム―

矢口祐人/著

1,320円(税込)

発売日:2014/06/27

書誌情報

読み仮名 キミョウナアメリカカミトセイギノミュージアム
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 222ページ
ISBN 978-4-10-603751-1
C-CODE 0395
ジャンル 社会学、地理・地域研究
定価 1,320円
電子書籍 価格 1,056円
電子書籍 配信開始日 2014/12/26

やっぱりあの国はちょっとヘン――!? ディープな博物館を徹底調査。

アメリカ人は、なぜ「進化論」を否定し、「核兵器」を賞賛するのか。「真珠湾」と「9・11」はいかに語られるのか。どうして辺境に巨大な「成金美術館」が作られ、首都に凶悪犯が集う「犯罪博物館」が作られたのか。八つの奇妙なミュージアムを東大教授が徹底調査、超大国の複雑な葛藤を浮き彫りにする。異色のアメリカ論。

目次
はじめに
第一章 進化論を「科学的に」否定する
――創造と地球の歴史のミュージアム(カリフォルニア州サンディエゴ)
第二章 「核のボタンを押してみよう!」
――全米原子力実験ミュージアム(ネバダ州ラスベガス)
第三章 田舎町の巨大美術館は「成金趣味」か
――クリスタル・ブリッジズ・ミュージアム(アーカンソー州ベントンビル)
第四章 アメリカ人が考える「罪と罰」
――犯罪と罰のミュージアム(ワシントンDC)
第五章 日系人が「アメリカ人」になるとき
――全米日系アメリカ人ミュージアム(カリフォルニア州ロサンゼルス)
第六章 ハリケーンは「天災」か「人災」か
――ルイジアナ州立ミュージアム(ルイジアナ州ニューオリンズ)
第七章 「九・一一」はいかに記憶されるべきか
――ナショナル・九・一一メモリアル(ニューヨーク州ニューヨーク)
第八章 真珠湾に浮かぶ「正義」と「寛容」
――戦艦アリゾナ号メモリアル(ハワイ州ホノルル)
おわりに
付録

書評

波 2014年7月号より ユニークな現代アメリカ論  

渡辺靖

以前、講義のゲストにお招きしたアメリカの政府高官が学生たちにアメリカのイメージを訊ねたところ、銃犯罪、好戦的、原爆投下、格差社会、キリスト教原理主義といった答えが続き困惑されたことがあった。しかし、日本で根強いイメージであることは確かだ。
では、アメリカ人はこうした点について、どう考えているのだろうか。日本人のハワイ観などの研究で知られる著者は、全米八つのミュージアムを訪れ、その歴史や展示に注目しながら、米国人の自画像を探った。
なぜアメリカほどの科学技術大国で進化論を否定する人が四〇%もいるのか。その手掛かりを得るため、著者は聖書の天地創造をモチーフにしたサンディエゴのミュージアムを訪れる。なぜ核大国が世界の平和や民主主義を謳い上げることができるのか。著者はラスベガスのミュージアムへと向かう。真珠湾攻撃から日系アメリカ人の強制収容、九・一一同時多発テロ、ハリケーン「カトリーナ」の来襲に至るまで、何が記憶され、どう意味づけされているのか。米国の「正義」はどう表象されているのか。ホノルル、ロサンゼルス、ニューヨーク、ニューオリンズで著者は思索する。ワシントンDCでは大人気の「犯罪と罰のミュージアム」を訪れ、一体、不気味な展示の何が多くのアメリカ人を魅了しているのかを探る。ウォルマート創設者の娘がカネの力に物を言わせて有名アートを買い漁ったことは正しいのか。著者ははるばる南部の田舎町ベントンビル(アーカンソー州)へと足を伸ばす。「(本書は)ミュージアムと……筆者のあいだで何年にもわたって行われた『対話』の産物」であると著者は述べているが、まさにミュージアムをフィールドにしたユニークな現代アメリカ論となっている。
私自身、八つのミュージアムはすべて訪れたことがあるが、「保守」や「リベラル」のどちらにも偏ることなく、そして、単純な「親米」でも「反米」でもなく、アメリカの多面的な現実をバランスよく、フェアに描き出そうとする姿勢に好感を抱いた。優れた研究者のみがなし得る技だ。個人的には、高校の同窓であり、同じくアメリカ研究を専門とする著者が、やはり同じくベントンビルをも訪れていたと知り、思わず微笑んでしまった。
全米には一万六〇〇〇~二万ものミュージアムがあるという。まさにミュージアム大国だ。学芸員の地位も日本とは比較にならないほど高い。扱うテーマも奴隷制やホロコーストといった重いものから、大リーグからハリウッド、ジャズといった明るく華やかなものまで百花繚乱。その一つ一つにアメリカの自画像が投影されている。そうした社会の自画像を読み解くのもミュージアムの楽しみ方の一つだ。巻末付録には著者オススメのミュージアムも紹介されている。是非、本書をアメリカ旅行の友としたい。

(わたなべ・やすし 慶應義塾大学教授)

担当編集者のひとこと

奇妙なアメリカ―神と正義のミュージアム―

親米でも反米でもない「違和感」の正体とは? 皆さんはアメリカが好きですか、嫌いですか?
 マスコミの論調を見ていると、何となく日本では反米のトーンが強いような気がしますが、内閣府の「外交に関する世論調査」によれば、意外なことに、アメリカに「親しみを感じる」とする人の割合が83.1%にも達しています(平成25年度)。
 では、日本人が手放しでアメリカを称賛しているかといえば、どうでしょう? おそらく、「基本的には好きなんだけど、やっぱりちょっとヘンな国だよな……」と感じている人が多いような気がします。
 著者もその一人で、「知れば知るほど、奇妙な国だという思いが強くなる」と言います。高校卒業後、アメリカの大学、大学院に進み、その後もアメリカ研究者として、ずっとアメリカと向き合ってきた著者をして、なお「奇妙だ」と言わしめる違和感の正体とは何なのでしょうか?
 本書で著者は、全米各地にある8つのユニークなミュージアムから、アメリカが持つ「奇妙さ」を巧みに浮き彫りにしていきます。この本を読み終える頃には、親米や反米という単純な言葉では括れない、アメリカに対する微妙な違和感の正体が、きっと見えてくるはずです。

2016/04/27

著者プロフィール

矢口祐人

ヤグチ・ユウジン

1966年、北海道生まれ。ゴ シェン大学教養学部卒業。ウィリアム・アンド・メアリ大学大学院アメリカ研究科博士課程修了。北海道大学助教授等を経て、東京大学大学院総合文化研究科教授。著書に『ハワイの歴史と文化―悲劇と誇りのモザイクの中で―』『ハワイとフラの歴史物語―踊る東大助教授が教えてくれた―』『憧れのハワイ―日本人のハワイ観―』(ヨゼフ・ロゲンドルフ賞受賞)『現代アメリカのキーワード』(吉原真里との共編著)など。

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