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日本はどう報じられているか

石澤靖治/編

748円(税込)

発売日:2004/01/21

書誌情報

読み仮名 ニホンハドウホウジラレテイルカ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書
判型 新潮新書
頁数 206ページ
ISBN 978-4-10-610052-9
C-CODE 0225
整理番号 52
ジャンル 政治、社会学、ビジネス・経済
定価 748円

今の日本は世界でどう思われているのか? 各国メディアが伝える「日本像」を徹底検証!

「ジャパン・バッシング(日本叩き)」や「日本異質論」が横行した時代も今は昔。「空白の10年」を経て、なおも経済の無策と政治の迷走を繰り返す日本に注がれる視線には、憐れみや嘲笑のニュアンスさえ混じり始めている。いったい、今の日本は世界の人々の目にどのように映っているのか。各国メディアの報道を通して、現在の「日本像」を探る。

目次
はじめに
第1章 イギリス──────────土生修一
ハイテク・トイレに驚き、痴漢を笑う
──日本の社会風俗に「未来」を見る
第2章 フランス──────────吉田 徹
「経済の国」と「文化の国」の逆転
──消えゆく“幸福なエキゾチズム”
第3章 ドイツ───────────福田直子
「日本の二の舞」にはなりたくない
──経済無策への冷ややかな視線
第4章 アメリカ──────────石澤靖治
小泉は「沈みゆく船」の船長だ
──「日本叩き」から「日本無視」へ
第5章 アラブ世界─────────池内 恵
アラブは「ヒロシマ」をどう理解したか
──通じない「戦後平和主義」
第6章 中国────────────高井潔司
メディアが煽る「反日感情」
──ネット上でも広がる「歪んだ日本像」
第7章 韓国────────────黄 盛 彬
新世代が主導する「新しい反日」
──過去にとらわれないナショナリズムの出現

コラム 基礎知識・各国のメディア(各章末尾)
著者紹介

蘊蓄倉庫

日本の文化と風俗は最先端!?

 誤解、偏見、無視、蔑視に始まって、驚愕から憧憬までと世界各国での日本の報じられ方は今でもさまざまですが、傑作なのはイギリス。日本の社会風俗に関心が集まっていて、こんなルポまで書かれているそうな。
「男性優位の日本社会では、バイアグラ受け入れに半年しかかからなかったが、ピル解禁には四十年もかかった」(イブニング・スタンダード)
「英国では、トイレはトイレだ。しかし日本のトイレは、多くの小道具が詰まった未来に向けての声明書のようなものだ。かなりみすぼらしい家庭でも、電気で温められる便座付きトイレが当たり前になっている。洗浄後は温風乾燥装置まである」(サンデー・ミラー)
 大きなお世話という感じもしますが、良きにつけ悪しきにつけ、彼らは日本の社会風俗の中に「文明の未来」を見ているようなのです。
「近年、訪日した人間は、ヘアスタイルから建物やテクノロジーまで、日本人のエネルギーや創造性に感心する。日本は、今こそ旬である」(オブザーバー)
 経済や外交ではうだつが上がらなくても、文化や風俗は最先端!――日本という国に対しては、そんな見方もあるのです。

掲載:2004年1月23日

担当編集者のひとこと

片想いの国

 いったい今の日本は世界ではどう見られているのだろうか? 本書は、そんな素朴な疑問を編者の石澤さんと話している中から生まれた企画です。
「とにかく日本についての各国の報道を徹底検証してみよう」と話し合ったのがちょうど1年前。といっても世界中の国を取り上げるわけにもいきませんから、日本人にとって関心の高い米英独仏、お隣の中国・韓国、そして世界の注目が集まるアラブ世界の7地域に絞って、それぞれの専門の方に執筆をお願いしたのでした。
 次々と集まってくる原稿を読んで実感したのは、当たり前のことですが、国によって日本を見る目もメディアの状況もかなり違うということ。アメリカではかつての「日本叩き」はすっかり影をひそめ、むしろ「無視」や「憐れみ」のトーンが滲んでいますし、ドイツでは「日本の二の舞にだけはなりたくない」という冷ややかさ。かと思えば英仏では日本を経済の国というより、「先端文化・先端風俗の国」と捉える視点が目立ちますし、中韓ではいかにして「反日」のムードが作られているのかがよくわかります。 まさに様々ではあるのですが、共通するのは「日本人が関心を持っているほどには、相手の国は日本を見ていない」ということです。例えば昨年、イラクで日本人外交官2名が殺された時、日本ではあれだけ大きな扱いでしたが、アメリカではむしろ同じ日に起きたスペイン人7名殺害事件の方がメインの扱いで、日本人の方は見出しにすらならない新聞もあったそうです(石澤靖治「はじめに」より)。私など、「そりゃないだろう。こっちも同盟国だぞ」と思ってしまいましたが、まあそんな「片想い」が日本を取り巻く現実なのです。
 それが最も顕著なのがアラブ世界でしょう。アラブの国々では、まず日本についての報道は極めて少ないそうです。日本ではイラク、バグダッド、フセインという固有名詞は小学生でも知っていますが、アラブ世界では日本はあくまで「極東の遠い国」。ただ、面白いことに、ヒロシマ、ナガサキだけは誰でも知っているのだそうです(池内恵「第5章 アラブは『ヒロシマ』をどう理解したか」より)。
 池内さんの論考によれば、アラブ世界ではアメリカに対するテロリズムを正当化する論拠として「ヒロシマ」が使われているそうなのです。「アメリカはヒロシマで無辜の一般人を何十万人も殺した。だから我々もアメリカに対抗するためには一般人を殺していい」という論理ですね。
「唯一の被爆国である日本だから、核兵器は決して保有しない」「過ちは繰り返しません」などという理屈は全く通用しません。「過ちは繰り返さないというのは、二度と投下されないように力を蓄えるということか?」と思うのがアラブ世界の論理。「そうか、日本はそうやってアメリカを油断させて復讐の機会を狙っているのか」などという反応が返ってくることもあるそうです。これはまたずいぶん買いかぶられたものですが、日本の「戦後平和主義」もまったくの片想いなのです。
 結局、誰もちゃんとわかってはくれないわけですね。そりゃそうです、よその国なのですから。そんなキビシイ現実を直視しつつ、驚いたり、あきれたり、腹を立てたり、苦笑したりしながら、ぜひ読んでいただきたいと思います。ほんとに一読の価値あり、です!

2004年1月刊より

2004/01/21

著者プロフィール

石澤靖治

イシザワ・ヤスハル

[アメリカ]1957年生まれ。学習院女子大学教授。ハーバード大学ケネディ行政大学院修了後、「ワシントン・ポスト」極東総局記者などを経て現職。著書に『日本人論・日本論の系譜』『大統領とメディア』など。

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