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仏教と資本主義

長部日出雄/著

748円(税込)

発売日:2004/04/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

1300年前、行基。資本主義のルーツは日本にもあった!

奈良東大寺の大仏建立に重要な働きをした行基は、「地獄」の思想を庶民に広め、利他の菩薩行を推し進めて、革新的な労働倫理を作り出した。これはマックス・ヴェーバーが、西欧の近代資本主義の精神的な推進力としたカルヴィニズムの倫理と同じもので、つまりわが国には、八世紀の天平時代、すでに〈資本主義の精神〉が存在していた……。この衝撃の一冊で、あなたと日本の進路が決まります。

目次
まえがき
第一章 「天職」という考え方
不可解な逆説
職業はすべて平等
恐ろしい「予定説」
救いを確信するために
修道士のごとき事業家
信仰から生まれた革命
経済は神の宇宙計画
経済学は倫理学
神の賜物としての富
「資本主義の《精神》」
「時は貨幣なり」
人権思想の淵源はアメリカ
第二章 最初の宗教改革者・行基
謎の前半生
根本論典『瑜伽師地論』
衆を惑わす妖僧
「地獄」の恐怖
菩薩行が生み出す活力
反僧尼令運動
光明皇后の仏教崇拝
未曾有の難事業
大仏開眼
最初で最大の巨人
第三章 欧州より早い宗教改革
「地獄」を広めた書物
太宰治の地獄極楽
M・ヴェーバーが見た日本仏教史
法然の過激思想
既成仏教からの攻撃
堕落した既成仏教
日本にもあった宗教改革
第四章 日本における「天職理念」
三河武士出身の「私度僧」
「農人日用」
「職人日用」
「商人日用」
「武士日用」
第五章 商人の哲学
不遇に学ぶ
向学の志
石門心学の成立
革新的な商業哲学
商業の国際性
第六章 資本主義の運命
ドストエフスキーの予言
神にかわる個人崇拝
最後に登場する「末人たち」
神神の闘争が日常となる世界
「運命的な力」
第七章 二十一世紀の資本主義
世界の宝庫・正倉院
興福寺の阿修羅像
元興寺の瓦
「空」の現場
大乗仏教の可能性
夕暮れの行基堂
あとがき

書誌情報

読み仮名 ブッキョウトシホンシュギ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 208ページ
ISBN 978-4-10-610063-5
C-CODE 0230
整理番号 63
ジャンル 文学賞受賞作家、宗教、経済学・経済事情
定価 748円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2011/11/25

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日本版、資本主義のルーツ

 悪行をなした者は地獄に堕ち、善行を積んだ者は菩薩となる。つまり利他の善行を積めば、恐ろしい地獄行きを免れることができるという教え。
 新都平城京の建設の折、行基はそう説いて、豪族に資本を出させ、布施屋を建てて粥を施し、集まって来る大勢の窮民の力を集め、師の道昭が唐で学んできた灌漑や土木の新技術を用いて、農業用の池や溝を掘り、堤を築き、道を開き、橋を架けました。すると、土地が潤って、豪族には出した元手以上の利益がもどって来ます。
 行基には、宗教的指導者のカリスマ性だけでなく、合理的な技術者、経営者、政治家の天分も、豊かに備わっていたのでしょう。かれにしたがう民衆は、菩薩になるための行と信じてよく働くので、見る者が驚くほどの速さで土地改良の工事が進んだといいます。それがやがて国家的大事業、東大寺建立に繋がったのです。
掲載:2004年4月23日

著者プロフィール

長部日出雄

オサベ・ヒデオ

1934(昭和9)年、青森県生れ。新聞社勤務を経て、TV番組の構成、ルポルタージュ、映画評論の執筆等に携わる。1973年『津軽世去れ節』『津軽じょんから節』で直木賞、1980年『鬼が来た 棟方志功伝』で芸術選奨、1987年『見知らぬ戦場』で新田次郎文学賞を受賞。おもな著書に『密使 支倉常長』、太宰治を描いた『辻音楽師の唄』『桜桃とキリスト』、『反時代的教養主義のすすめ』などがある。

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