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ヘミングウェイの言葉

今村楯夫/著

748円(税込)

発売日:2005/07/20

書誌情報

読み仮名 ヘミングウェイノコトバ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 190ページ
ISBN 978-4-10-610126-7
C-CODE 0297
整理番号 126
ジャンル 評論・文学研究、ノンフィクション
定価 748円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2012/01/27

男の人生はかくも甘美で苦い――今も輝きを放つ77の言葉。

男の人生はかくも甘美で苦い――。「もしふたりが愛し合っていれば、そこにはハッピーエンドなどはない」「小説を書くときに作家は血の通った人間を創り出すのだ。人物ではなく人間を」など、ヘミングウェイが遺した言葉は今も魅力に富む。その数々を「人生」「異国・祖国」「自然」「楽しみ」「執筆」の五章に分けて収め、背景を鮮やかに読み解く。二十世紀を颯爽と駆け抜けた文学者の濃密な生涯がよみがえる一冊。

目次
はじめに──辺境・戦争・パリを経て
1 人生 His Life Story

失われた世代



悪女
青春
少年
お守り
ハードボイルド


道徳
戦争
神聖
水仙
ジャズ

結婚
フィッツジェラルド
ディートリッヒ
バーグマン
キャパ
パパ
老い
2 異国・祖国 Other Countries & His Home,America

パリ・(1)
パリ・(2)
ヴェネツィア
マドリード
キューバ
アフリカ・(1)
アフリカ・(2)
中国
日本
アメリカ・(1)
アメリカ・(2)
3 自然 Nature & His Inner Landscape








4 楽しみ His Ways of Enjoying Life

釣り
狩猟
闘牛

カヌー
料理・(1)
料理・(2)
料理・(3)
料理・(4)
ワイン・(1)
ワイン・(2)
ワイン・(3)
ワイン・(4)
ダイキリ
マティーニ
カクテル
アブサン
カフェ
ゴヤ
ブリューゲル
セザンヌ
ミロ
マンティーニャ
5 執筆 The Man as a Writer

秘密
トップニュース
外電・(1)
外電・(2)
外電・(3)
鉛筆
創造
省略
名作
永遠
あとがき

ヘミングウェイ年譜
本書で言及したヘミングウェイ作品及び関連図書

インタビュー/対談/エッセイ

波 2005年8月号より ヘミングウェイを初めて読んだころ  今村楯夫『ヘミングウェイの言葉』

今村楯夫

『ジャック&ベティ』が中学校の英語の教科書だった。“I am a boy.”と“You are a girl.”で始まる文を覚えている人はきっと大勢いるにちがいない。ただ、当時でもそんなやりとりが実際にあるとは誰も信じていなかったように思う。
外国語を習う新鮮さと喜びだけで充分だった時期が過ぎるころ、教科書の絵に描かれている白い家と広い芝生の前庭と車庫の車を見て「アメリカ」という未知の外国の豊かさに魅せられ、知らず知らずに憧れと羨望をいだくようになった。
やがて教科書の内容が希薄であることに気づくが、それは外国語を学ぶ者の宿命みたいなものなのだと諦め、本当に読みたいものは図書館で見つけ出すものだと思うようになった。
三年生の三月、卒業を数週間後に控えて、教科書を終えてしまった英語の先生はプリントでふたつの短編を読ませてくれた。ひとつがサマセット・モームの「傷のある男」、もうひとつがウィリアム・サローヤンの『わが名はアラム』の中の一編だった。モームはさして面白いとは思わなかったが、サローヤンには心を奪われた。それはカリフォルニアの田舎町に住む三人の子どもたちの物語で、雪を抱いたシェラ・ネバダ山脈を背景に広大な葡萄畑が広がる中を歩いていく子供たちの姿が描かれており、その風景の大きさに圧倒された。英語が文学作品として存在することを知ったのはそのときだった。
高校の入学を前に、本屋の洋書コーナーで偶然にもサローヤンの本を見つけ、同時にそこでヘミングウェイの『老人と海』を目にし、一緒に購入した。どちらの本も難しい単語や構文が少なく、あまり苦労することもなく読めた。ヘミングウェイの方は海の物語で、そこに私が育った田子の浦の海と重なる世界があるように感じた。私は海を眺めるだけで、舟に乗る機会もなければ漁師と話すこともなかったが、『老人と海』には私の知らない海の変幻と無限に広がる大きな宇宙があった。その下で孤高の時間を過ごすひとりの漁師に心を引かれたのである。
気づいてみると、このときの出会いから五○年近くの歳月が過ぎてしまった。いつしかヘミングウェイの世界に魅了され、作品の舞台となった様々な土地を訪ね歩き、描かれた情景や情感を自ら体験することが大きな喜びとなった。
そんな長い時を経て、心に刻まれてきた言葉や残影の断片を思い起こしながら、ヘミングウェイの人生と文学に向かう新たな旅に出てみた。その記録が『ヘミングウェイの言葉』である。
ヘミングウェイ的な「省略の技法」を意識しながら、全部で七七の断章をいずれも二頁という同じ大きさの空間に収まるように言葉を切りつめて書いた。言葉を削ぎ落とし、表現をより的確にかつ簡潔に書くことの楽しさをここでは体験したように思う。

(いまむら・たてお 東京女子大学教授)

蘊蓄倉庫

ヘミングウェイとディートリッヒ

 二人の出会いは実にシャレています。時は1934年、場所は大西洋上の豪華客船。船長主催の晩餐会でのことでした。ディートリッヒは自分の席が13番目であることを知り、迷信深く背を向けてしまう。そこで、ヘミングウェイは「私が14番目の席を作って差し上げましょう」と言って、彼女を引き止めることに成功。正餐後、デッキを散歩しながら、人気作家はサファリのことを話し、名女優は娘のことを語ったとか。それから十数年、この時の体験をディートリッヒはエッセイに書いています。タイトルは「わたしの知っている素敵な男」。

掲載:2005年7月25日

著者プロフィール

今村楯夫

イマムラ・タテオ

1943(昭和18)年、静岡県生れ。専門はアメリカ文学。東京女子大学名誉教授。日本ヘミングウェイ協会会長。著書に『ヘミングウェイと猫と女たち』『ヘミングウェイの言葉』の他、研究書・論文多数。日本におけるヘミングウェイ研究の第一人者である。

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