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プラザ合意、ゴルバチョフ登場、阪神優勝、日航機墜落、金妻、スーパーマリオ……。この年、日本も世界も大きく姿を変えた――。

1985年

吉崎達彦/著

748円(税込)

本の仕様

発売日:2005/08/20

読み仮名 センキュウヒャクハチジュウゴネン
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 207ページ
ISBN 978-4-10-610130-4
C-CODE 0221
整理番号 130
ジャンル 日本史
定価 748円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2012/02/24

右肩上がりの発展を続ける戦後日本がたどり着いた「坂の上の雲」。それが1985年という年だった。プラザ合意、米ソ首脳会談、NTTの誕生……この年を境に日本と世界は確実に姿を変えていく。阪神優勝、日航機墜落事故を始め、忘れがたい出来事もたくさんあった。「過去」と言い切るには新しく、「現在」と言うには時間が経ちすぎた時代の記憶は、妙に苦くて懐かしい。愛惜の念と共に振り返る、「あの頃」の姿。

著者プロフィール

吉崎達彦 ヨシザキ・タツヒコ

1960(昭和35)年富山県生まれ。双日総合研究所チーフエコノミスト。一橋大学社会学部を卒業後、日商岩井(現・双日)に入社。ブルッキングス研究所客員研究員、経済同友会代表幹事秘書などを経て現職。著書に『アメリカの論理』『1985年』など。

目次

まえがき
第1章 政治~中曽根政治とプラザ合意
最後に見えた「坂の上の雲」
プラザ合意はバブルの入り口?
出る杭は打たれた
中曽根のパフォーマンス
アメリカ側の国内事情
田中角栄、脳梗塞に倒れる
「戦後政治の総決算」を目指して
内実は粗雑だったプラザ合意
景気対策は「ビックリするほどよく効いた」
バブルの真の原因は?
首都圏再開発
さようなら、ミドルパワーの日本
第2章 経済~いまだ眩しき「午後2時の太陽」
1985年の経済白書
見通されていた高齢化の未来
低成長、少子化、低金利
統計に見る1985年の日本経済
過去20年で何が変わったのか
万年中流国家
生活にはみんな満足
マル金マルビ
「中流家庭」の実像
渡辺淳一の日経連載小説
第3章 世界~レーガンとゴルバチョフの出会い
カリスマ政治家そろい踏み
アジアの民主化、いまだ遠し
マルコス追放に動いた二人の米国人
ゴルバチョフ登場
ソ連に止めを刺したサウジの決定
レーガン時代のアメリカ
米ソ首脳会談
スターウォーズ計画は「政治兵器」
ドイツの「戦後総決算」
レーガン、「ドイツの靖国」を訪問
第4章 技術~つくば博とニューメディア
『ブレードランナー』の中の日本
大阪? つくば? 愛知?
つくば博トリビア
演出はまだ素人くさかった
ロボットの実験場
「いったい、何を、するんだろう?」
電電公社、NTTに
アルファベット社名が続々と
大ブレイクしたファミコン
パソコン通信の登場
「ハイテク国家・日本」のあけぼの
第5章 消費~「おいしい生活」が始まった
「トレンド」の呪縛
西武百貨店のコピー
「自分探し」になった消費
電化製品もこんなに変わった!
日本車はまだ地味だった
高級アイスクリーム
マンガ『美味しんぼ』の衝撃
「究極」と「まったり」
食のカリスマ・山本益博
「食」は日本文化のテーマか?
第6章 社会~『金妻』と『ひょうきん族』の時代
主入公は「ダイヤル回して手を止めた」
1985年のヒット曲
凋落した『紅白歌合戦』と『ザ・ベストテン』
郊外に移り住んだ団塊世代
発見された専業主婦の不満と不安
不倫はまだ罪深かった
ひょうきん族、全員集合を倒す
タケちゃんマンとホタテマン
チャンネル権は大人の手に
第7章 事件~3つのサプライズ
日航機、御巣鷹山に墜落す
読み続けられた500人の名
記憶に刻まれる「8月12日」
戦後最大、三光汽船の倒産
「笑わん殿下」の静かな退場
阪神優勝までの長い道のり
バックスクリーン三連発!
神宮球場、10月16日
やっぱりいい時代だった

年表・1985年

インタビュー/対談/エッセイ

波 2005年9月号より 20年前への旅  吉崎達彦『1985年』

吉崎達彦

 その昔、ケータイがなかった頃、渋谷で人と待ち合わせることは一苦労だった。「午後七時に忠犬ハチ公前」程度の大雑把な約束だと、あふれんばかりの人の群れから、目指す人物を見つけ出せないことがあった。当時の筆者の常套手段は、待ち合わせ場所を「ハチ公の尻尾の延長線上にあるコインロッカーの前」に限定することだった。
という話を、今時の若い女性にしたらビックリされた。彼女たちは「七時に渋谷でね」くらいのユルい約束を交わし、七時近くになってからケータイで居場所を教えあう。余計なお世話だが、ケータイがなくなったらどうするのだろう?
ところで、筆者がハチ公の尻尾を目印に使っていたのは、今からほんの二○年くらい前のことである。四○歳以上の人なら、その手のことは誰でも記憶しているだろう。今となっては無用な知識だが、あらためて当時を想起すると、意外なほどの距離感がある。
思うに、遠い過去のことは歴史として残っている。ちょっと前のことであれば、誰かに聞けば分かる。ところが二○年前は、ポテンヒットのような頃合いである。知っているはずなのに忘れている。あるいは正確に調べてみると、思いがけぬ記憶違いをしている。
二○年前といえば、政治、経済、社会のいろんな面で、日本が曲がり角を迎えていた時期である。この時代を検証する作業を始めて、その面白さに熱中してしまった。歴史は普通、タテに読むものだが、ある時代を切り取って、ヨコに見てみるのも興趣が尽きないのである。
一九八五年。世界はまだ冷戦の最中にある。ゴルバチョフがソ連の書記長になって、レーガンと首脳会談を行った。中曽根首相が八月一五日に靖国神社に公式参拝した。日米通商摩擦が激化して、プラザ合意があって、円高が始まった。ハイテク国家・日本を象徴する科学万博つくば'85が開催され、電電公社が民営化されてNTTになった。
日航機墜落事故があった。阪神タイガースが二一年ぶりに優勝した。テレビではドラマ「金妻」が流行って、小林明子の「恋におちて」がヒットした。団塊世代の先頭は当時三八歳。日本人は全体にまだ若く、経済は右肩上がりの途中。日本車は小型車が中心で、地下鉄には冷房が入っていなかったが、日本経済には午後二時の眩しさがあった。日本人が「坂の上の雲」を仰ぎ見た最後のときであったかもしれない。
二○年前への旅には、どこか不思議な幸福感がある。多くの日本人にとって、一九八五年はきっといい時代であったのだろう。そして当時を回顧するとき、人は今より二○歳若かった自分を懐かしく思い出すことができる。一人でも多くの読者に、二○年前への旅をお勧めする次第である。

(よしざき・たつひこ 双日総研副所長)

担当編集者のひとこと

20年前への時間旅行

「1985年」という新書を作るに際し、85〜86年頃の『フォーカス』(そう、当時はあったんです、この雑誌)を見たら参考になるかと思い、新潮社の資料室にこもって読んだことがあります。もちろん必要があっての仕事なのですが、最初から最後まで「へぇ〜」の連続で、仕事であることを忘れてしまいました。
 なにしろ誌面では、小佐野賢治と岸信介が笑いあってるわ、腹の出た江夏豊が大リーグに挑戦してるわ、本田宗一郎がF1カーを前に昭和天皇に説教たれてる(ように見える)わで、昭和の臭いが強烈に感じられるのです。藤圭子の暗かった人生について書かれた記事には「家には三歳の女の子がいる」なんて書かれているし(女の子はもちろん宇多田ヒカル)、初対局に臨む天才中学生・羽生善治クンの髪の毛はやっぱりはねてるし、松島トモ子はライオンとヒョウに食われています(あんまり時代とは関係ないですか)。 東宝の某女優が脱いだことを記した記事の「独身女性はクリスマスケーキ」とか、「ボケ老人保険発売」を伝える記事の「昭和85年には若者3人で老人1人の面倒を見る」などの表現にも、強烈に時代が感じられます。ちなみに広告を飾るのは誕生したばかりのNTTの「カエルコール」や、NECが売り出した「PC-9801」640Kバイト29万8千円など。その死が記事になっているのは夏目雅子と白洲次郎の二人でした。
 二十年前というのは、過去とも言い切れないし現在とも言えない、妙に愛惜を誘う時代です。当時高校生だった担当者にしてそうですから、いま四十代、五十代の方にとってはなおさらそうでしょう。この本の編集は、時として仕事であることを忘れさせてくれるような楽しい経験でした。
 とまれ、このようなネタをたっぷりと収集し、ふるいにかけてできあがったのが『1985年』という本なのです。斎藤孝さんが最近、「あの頃力」なることを言っておられますが、この本を読めば「あの頃力」が大いに鍛えられることと思います。出来るだけ多くの人に、この本を手に二十年前への時間旅行を楽しんで頂きたい──担当者としては、そう願っております。

2005年8月刊より

2005/08/20

蘊蓄倉庫

『化身』と『愛ルケ』

 1985年と今年の共通点に「日経新聞で渡辺淳一の小説が連載されていること」があります。20年前の『化身』の主人公は羽振りの良い文芸評論家で大学教授、現在の『愛の流刑地』の主人公は売れない小説家です。この間には、リストラ寸前の出版社社員が主人公だった『失楽園』が挟まります。
 主人公の落ちぶれ方は日本経済の低落傾向と見事にシンクロしているのですが、渡辺氏はこれを意識的にやってきたのでしょうか? 担当編集者が頂戴してきた渡辺氏の答えは、本書の65ページに紹介してあります。

掲載:2005年8月25日

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