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人の価値は棺を蓋(おお)いて定まる――。週刊新潮名物コラム『墓碑銘』から昭和を生きた54名を厳選。

昭和の墓碑銘

週刊新潮/編

792円(税込)

本の仕様

発売日:2006/02/20

読み仮名 ショウワノボヒメイ
シリーズ名 新潮新書
雑誌から生まれた本 週刊新潮から生まれた本
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 255ページ
ISBN 978-4-10-610155-7
C-CODE 0223
整理番号 155
ジャンル 倫理学・道徳、ノンフィクション
定価 792円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2012/07/27

時代を担った物故者を取り上げてその生涯を振り返る、『週刊新潮』の名物コラム「墓碑銘」。三十年の連載の中から昭和を生きた五十四名を厳選する。吉田茂に「曲学阿世」と罵られた東大総長、「天皇・マ元帥会見」の秘密を漏らした通訳、オギノ式避妊法を見出した町医者、新宿・尾津組の親分、脱税していた熊沢天皇……正史では窺えぬ「生きた昭和史」の数々。

著者プロフィール

書評

波 2006年3月号より 葬式は貴重な取材源  週刊新潮 編『昭和の墓碑銘』(新潮新書)

尾嶋義之

 往年の名アナウンサー志村正順氏は、結婚式は好きだが葬式は大嫌いだと、かつて私に語ったことがある。親類や先輩の葬式に招かれてもサボったことが幾度もあり、そのたびに関係者に恨まれたという。私も葬式は嫌いだ。どうしても故人への惜別の念を禁じ得ずに駆けつけたことは数回あるが、もっぱら義理や付き合いで大勢集まるような葬儀にはできるだけ出ないようにしている。
その私が、週刊新潮編集部で働いていたころ、『墓碑銘』欄の担当を仰せつかり、喪服(実は喪服とは似て非なるミッドナイト・ブルーのスーツ)と黒タイを常に用意して葬式取材に走り回ったのだから妙な巡り合わせである。だが、記者としての取材であるから、葬儀に参加しても故人とは距離があるので気が楽であることはたしかだ。一般参加者から見ればとんだ闖入者であろう。目的は葬儀場で関係者に話を聴く、あるいは取材のヒントを得ることにある。また告別式の雰囲気から故人について理解が深まる場合も多々ある。ある著名な美術評論家が死去した。教会で行われた葬儀で、一様に涙を流しながら続々と献花する中年の美女が十人を下らないのを見て驚いたことがある。故人の生活についてある程度の予備知識はあったものの、こんなに女性にもてる男だとは知らなかったのだ。
しかし、記事の締切日の関係で、取材が葬式や通夜当日とぶつかるとは限らない。その前後のケースが多い。葬式前の時には準備などのため遺族が慌ただしく、短時間の取材にも協力を得られないことがある。焼香だけして、別の取材先を教わって退去することもしばしばある。一ページの『墓碑銘』が読者の目に触れるまでには様々な難関があるのだ。昭和のころはインターネットがまだなく、経歴などの基本的なデータを得ることさえ困難なことがあった。
そんな時代に刻まれた『墓碑銘』の数々が一冊の本にまとまった。私も微力ながら編集作業のお手伝いをしたが、ここで取り上げられた昭和の列伝は、恐らく読者にとって初めて聞く名前の方が多いと思われる。何しろ、日本がアメリカと戦争をしたことさえ知らない若者もいる昨今である。日本人はあきらめがよく、過去を早々と忘れる淡泊さが民族性の一つで、これを一種の美徳と見る人もいる。しかし平和で未来が洋々と開けている時にのみ、この美徳は美徳たりうるのではないか。『昭和の墓碑銘』を機に、現代人からすれば二世代前の、現代に似て道標なき時代を歩んだ人たちの足跡に改めて思いを巡らせたいと思う。
最後にまた葬式の話になるが、葬式とは、故人にそこらへんをウロウロされたくないから早く成仏させ、みなが忘れて未来へ向かうためのけじめの儀式だそうだが、だとすれば、葬式が嫌いな私のような人間は、どちらかと言えば過去にこだわるタイプなのかもしれない。

(おじま・よしゆき ジャーナリスト、元「週刊新潮」編集部)

目次

はじめに
昭和四十九年
「帝国海軍」の大往生、野村直邦大将
長崎県大村市元市長・大村純毅「藩主」の死
美空ひばりファンだった「曲学阿世」の元東大総長
「悲劇の宮家」を支えた北白川房子さんの死
「カステラ人生」文明堂会長の金銭哲学
昭和五十年
天皇・マ元帥会見の秘密と奥村元外務次官
避妊の荻野博士の「町医者」としての生涯
『丸井』青井忠治会長の「月賦屋」五十三年
昭和五十一年
日米開戦時の嶋田海相の「沈黙の戦後」
パリの伝説的日本人、薩摩治郎八氏の生涯
「私は貝になりたい」加藤元中尉の運不運
最後の「明治貴婦人」元梨本宮妃波瀾の生涯
昭和五十二年
木戸・元内大臣が残した「非公開録音テープ」
「伜・三島由紀夫」の父の“にこやかな死に顔”
『赤札堂』小泉社長の「アイデア三十年」
「新宿マフィア」尾津喜之助親分の死
昭和五十三年
死亡が“確認”された「ドン・キホーテ」辻政信
「日本のラルフ・ネーダー」花森安治さんの“療養生活”
コンピューターの「先駆者」水品浩氏
最後の「シャーマン」北川ゴルゴロさん
昭和五十四年
大庭哲夫・元全日空社長の国会証人喚問の前と後
「青バット」大下弘選手の“伝説”と“素顔”
「転向の先駆者」鍋山貞親氏の“軌跡”
昭和五十五年
沢田美喜さん、混血孤児との三十四年
「発明家」早川徳次さん、ペンシルから翻訳機まで
近衛文麿公未亡人千代子さんの戦後
昭和五十六年
西尾末広氏の死と社会党の凋落
台湾上空に散った向田邦子さんと百九人
士魂商才、反骨の人 出光佐三氏の「石油人生」
『日刊アルバイトニュース』女社長「奮戦記」
昭和五十七年
東条英機未亡人カツさんの波瀾万丈
鳩山一族の“女主人”薫さん九十三歳の「大往生」
森コンツェルン終焉を告げる森暁氏の死
昭和五十八年
日本の黒幕・矢次一夫氏の「怪物伝説」
高英男に看取られた「美少女画」中原淳一さん
共産党『福本イズム』からフクロウ研究まで
昭和五十九年
『豊田一族』を束ねたトヨタ創業者の妻
歴代首相の師だった安岡正篤氏の「晩年」
大賛辞で送られた「永遠の二枚目」長谷川一夫さん
徹底したリベラリスト、文明批評家・竹山道雄さん
昭和六十年
『回天』特攻隊員の「母」倉重アサコさんの戦中戦後
脱税の判決前に病死した「熊沢天皇」
戦後に灯をともした「ブギウギの女王」
映画の最盛期を築いた「永田ラッパ」の終焉
GHQに抵抗した「従順ならざる日本人」
昭和六十一年
『永仁の壺』贋作事件の加藤唐九郎さん
長島、王を獲得した品川「元巨人球団社長」
西ドイツで客死した農地改革の生き証人
昭和六十二年
昭和の「嵐」に翻弄された愛新覚羅浩さん
息子を誘拐されたトニー谷の「芸と生活」
往年の人気女優、栗島すみ子さん
昭和六十三年
「東京ローズ」を育てた対米謀略放送の班長
天皇制存続を訴えたビッター元上智大院長
安らかな死を迎えた美智子妃「母堂」の三十年
あとがき

蘊蓄倉庫

伝説の編集者が作った週刊新潮の名物コラム

 時代を担った物故者を取り上げその生涯を1ページ分で描く、週刊新潮の名物コラム「墓碑銘」。昭和49年から始まり今日までも続く人気の欄です。毎週、対向ページには話題となった結婚を取り上げる「結婚」欄を掲載するのもユニークな特徴となっています。
 この「墓碑銘」と「結婚」のコラム欄を作ったのは、新潮社の伝説の編集者ともいわれる齋藤十一という人物でした。齋藤は、そもそもの週刊新潮の創刊に携わり、後には写真週刊誌「FOCUS」月刊誌「新潮45」を創った名編集者でした。彼の週刊誌作りのモットーは「金、色、権力の三つの欲に興味のない人間はいない」というもの。常に“人間臭い”角度から企画を考えていました。そうした齋藤が、ふと思いついたといいます、「昔の点鬼簿(お寺などで亡くなった人のことを記しておく帳簿)のようなもので何か読み物は作れないか」と……。そして「人の一生の節目といえば、死と結婚。この二つを並べて見開き2ページで表現しよう」とも。こうして二つの名物コラム欄は生まれたのでした。

掲載:2006年2月24日

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