ホーム > 書籍詳細:貝と羊の中国人

金もうけと共産主義が矛盾しない不思議な国。気鋭の学者が放つ画期的中国論。

貝と羊の中国人

加藤徹/著

864円(税込)

本の仕様

発売日:2006/06/20

読み仮名 カイトヒツジノチュウゴクジン
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 256ページ
ISBN 978-4-10-610169-4
C-CODE 0222
整理番号 169
ジャンル 人文・思想・宗教、社会学、地理・地域研究、経済学・経済事情
定価 864円
電子書籍 価格 648円
電子書籍 配信開始日 2012/08/31

財、貨、賭、買……。義、美、善、養……。貝のつく漢字と羊のつく漢字から、中国人の深層が垣間見える。多神教的で有形の財貨を好んだ殷人の貝の文化。一神教的で無形の主義を重んじた周人の羊の文化。「ホンネ」と「タテマエ」を巧みに使い分ける中国人の祖型は、三千年前の殷周革命にあった。漢字、語法、流民、人口、英雄、領土、国名など、あらゆる角度から、斬新かつ大胆な切り口で、中国と中国人の本質に迫る。

著者プロフィール

加藤徹 カトウ・トオル

1963(昭和38)年東京都生まれ。広島大学大学院総合科学研究科助教授。東京大学文学部中国語中国文学科卒業。同大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学。1990~1991年、北京大学留学。著書に『京劇』(サントリー学芸賞受賞)『漢文力』『西太后』『漢文の素養』など。

加藤徹 KATOU,Toru (Japan) (外部リンク)

目次

はじめに
第一章 貝の文化 羊の文化
漢字の字源と国民性
二種類の祖先
八百万の神と至高の神
孔子が象徴する中国文化の深層
「貝」と「羊」の使い分け
第二章 流浪のノウハウ
「泊まる」と「住む」の区別
太平天国の残党と旧会津藩士
流民が作った国
流民の存在感
日本にはいないタイプの英雄
華僑・華人と在外日本人・日系人
新華僑と中国の戦略
第三章 中国人の頭の中
病院前の葬儀店
お茶はひとりでに入らない
ODAと希望小学校の違い
ニーハオ・トイレと銭湯は同じか
「彼は嬉しい」と言えるか
和魂洋才と中体西用
遠く離れていても「この子」
無私物の範囲
「小諸なる古城のほとり」は砂漠?
大づかみ式合理主義
「外向性」に富む中国語
第四章 人口から見た中国史
文明と人口
幸運だった日本人
始まりは戦国時代
中華帝国の誕生
六千万人の壁
歴史は繰り返す
「命の値段」の暴落
一人を批判したため三億人増えた
人口増減と王朝の寿命
中華人民共和国の予想寿命
政治的文明
第五章 ヒーローと社会階級
英雄の条件とヒーローの条件
初代皇帝の出自
周辺出身型ヒーローとエリート英雄
中国三千年の黒幕
坊主めくりができぬ国
一階級による文明の独占
オトコのいろいろ
曹操が悪役に転落した理由
『三国志』の真の勝者
人間粗製濫造神話
ヒーローつぶし
悪役の必要性
第六章 地政学から見た中国
村長の愚痴
万里の長城というくびき
千年に三度だけ
東西分類と南北分類
中国旅行はタイムマシン
シルクロードから海へ
黄河文明と長江文明
北は力、南は思想
首都は国土の片隅にある
中華帝国のアキレス腱
愛国心と緯度
東アジアの国際関係
現代中国人の領土意識
万里の長城は復活するか
第七章 黄帝と神武天皇
自然国家と人工国家
英語名では「普通の国」
漢人、唐人、中国人
地域名称「支那」の発見
支那とジパング
戦争と「支那人」
「中国」の普及は戦時中から
フビライ以来の伝統
神武・黄帝・檀君
加上説とナショナリズム
「交流」はなかった
競合的協力者の不在
幻の日中連合軍
真の「交流」はこれから
終 章 中国社会の多面性
意外な類似性
戦前の日本社会と比べると
ホンネとタテマエの使い分け
東京は北京のとなり
抗日戦争六十周年の裏側
おわりに

年表

インタビュー/対談/エッセイ

波 2006年7月号より 中国人の「あ・うん」  加藤 徹『貝と羊の中国人』

加藤徹

 今から十六年前、北京大学に一年間、留学したことがある。
知り合いの中国人が、町を案内してくれた。天安門の西の、赤い城壁に面したほりばたの小さな公園に来たとき、彼女はポツリと語った。
「文化大革命(一九六六~七六)のころ、北京の町じゅうの壁という壁は、文革推進のスローガンやら壁新聞やらで、びっしり埋め尽くされました。町中のラジオのスピーカーからは、毛主席をたたえる歌やシュプレヒコールが、朝から晩まで、ガンガン流れていました。しかし、そんな北京のなかで、この公園の一画だけは、昔どおり静かでした。文革推進派も、この一画の城壁だけには、スローガンの垂れ幕を下げなかった。当時、私たちは、文革に疲れると、この小さな公園のベンチにすわり、何も書いていない赤い城壁と、みどりのほりの水をぼんやりとながめ、ひそかに、ほっと息をついたものです。紅衛兵も、紅衛兵に糾弾された人たちも……」
そう語った彼女は、紅衛兵世代だった。
あの激しい文革のさなかも、人々の黙契によって、泡のように小さな「平和領域(アジール)」が生まれていた。私は、中国社会の機微を一つ、かいまみた気がした。
中国人が暮らしている社会は、今も昔も、こうした空気のような機微の無数の積み重ねのうえに成り立っている。彼らが、こうした暗黙知的な機微を本に書くことは、あまりない。そのため、いまの若い世代は、過去の中国社会の機微を、よく知らない。ましてや外国人には、そうした黙契的な機微は、わかりにくい。
しかし、中国人を理解するうえで、かんどころとなるのは、往々にして、このような暗黙知的な機微である。
中国人もよく自覚していない彼らの暗黙知を掘り起こし、それを明快な言葉で叙述すること。それが、私たち中国研究者の仕事である。
日本人にとって、中国人は、異質な外国人であると同時に、同じ東洋人でもある。日本人は、彼らを突き放して遠くから眺めることができるだけでなく、同じ東洋人として、彼らの義理、人情、面子、腹芸などの世界を、理解することができる。
日本人論でも、アメリカ人のルース・ベネディクトが第二次大戦中に書いた『菊と刀』(一九四六刊)より、中国人である戴季陶が書いた『日本論』(一九二八刊)のほうが面白い。その一因は、日中両民族の距離の絶妙さにあるのだろう。
筆者は、長年、中国社会の機微について考えてきた。それは、期せずして、日本社会の機微を見つめ直す作業にもなった。日本自身を見つめなおすための「鏡」としても、中国は、興味深い国であると思う。

(かとう・とおる 広島大学助教授)

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