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怪盗ジゴマと活動写真の時代

永嶺重敏/著

748円(税込)

発売日:2006/06/20

  • 新書
  • 電子書籍あり

江戸川乱歩、寺山修司、伊丹万作……とりこになった者は数知れず。――大正元年、伝説の無声映画があった。

この映画のとりこになった者は数知れず、江戸川乱歩「怪人二十面相」の発想の原点にして伊丹万作や寺山修司を映画制作の道に進ませた――伝説の無声映画『怪盗ジゴマ』。大正元年、封切と共に小中学生を中心にして圧倒的な人気を呼び、日本中に一大ブームを巻き起こした。観客のあまりの熱狂ぶりについには上映禁止が通達されたほど……。実はこのブームの裏側には、現在に先駆けるメディア戦術があった。

目次
はじめに
序 章 〈映画都市〉東京の誕生
活動写真館の出現
映画都市東京の誕生
活動写真と子供観客
不良少年と〈暗黒の館〉
第一章 ジゴマ、帝都を震撼させる!
封切までの経緯
さて、封切当日は
現存するフィルムから
ノベライズされたジゴマ
奇想天外なストーリー展開
未曾有の大喝采?
福宝堂の興行戦略
後編も息つく暇ないストーリー
多発するジゴマ映画と類似もの
ついに和製版の登場
「日本ジゴマ」のストーリー
ジゴマの「日本化」
第二章 ジゴマ、地方都市を席巻する!
地方新聞の演芸欄
活動写真の地方興行
「頗る非常大博士」
駒田好洋の巡業ルート
「駒田好洋来たる」
各地で大入り満員
教育的で高尚な映画
地方常設館ルートでの上映
地方都市のブーム過熱化
第三章 ジゴマ探偵小説、氾濫する!
出版界への波及
ジゴマ探偵小説の特徴
活字による活動写真の再現
『探偵奇談ジゴマ芸者』
『探偵奇談新ジゴマ』
「赤本出版社」が相次いで参入
爆発的な売れ行き
読者層は全国の小中学生
第四章 ジゴマ、犯罪を誘発する?
地方都市でのジゴマ体験
東京の子供たちへの影響力
犯罪誘発効果はあったのか
「ジゴマごっこ」の流行
東京朝日の連載記事
第五章 ジゴマ、上映禁止となる!
上映禁止処分の概要
映画検閲主体としての警視庁・内務省
「ジゴマ及之に類する活動写真の興行取締の件」
各府県でも上映禁止へ
映画検閲方法の近代化
小説は処分なし
活動写真界への影響
その後のジゴマ
鼠小僧の墓の隣に紀念塔を
終 章 映画都市の変貌とジゴマの記憶
映画都市の繁栄
活動写真館からの子供の追放
ジゴマ探偵小説の影響力
あとがき

参考文献

書誌情報

読み仮名 カイトウジゴマトカツドウシャシンノジダイ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-610172-4
C-CODE 0221
整理番号 172
ジャンル 演劇・舞台、映画
定価 748円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2012/02/24

蘊蓄倉庫

中学生の江戸川乱歩がはまった幻の作品

 黒ずくめのいでたちに変装の達人、盗賊ではありながら人を傷つけたり野蛮な行為は決してしない……江戸川乱歩原作「怪人二十面相」の特徴です。好敵手、探偵の明智小五郎との推理活劇シリーズは、もはや語るまでもないでしょう。しかし、実はこの怪人二十面相にはそっくりな特徴を持つ“元ネタ”がありました。「怪盗ジゴマ」です。
 大正元年に公開された無声映画『怪盗ジゴマ』は、まだテレビはおろかラジオも普及していない時代、小中学生を中心に一大ブームとなった作品でした。そしてその頃、名古屋に暮らす中学生だった江戸川乱歩も『ジゴマ』の噂を聞き、早速見にいった一人だったのです。忽ちその面白さに魅せられてしまった乱歩は、連日連夜、劇場に通い詰めたといいます。怪盗ジゴマとその好敵手、探偵ポーリンとの大活劇は、中学生の乱歩の心に刻み込まれ、後年のヒット・シリーズ『怪人二十面相』に結晶していくことになるのでした。

掲載:2006年6月25日

担当編集者のひとこと

実は元ネタがあった江戸川乱歩の『怪人二十面相』

黒ずくめのいでたちに変装の達人、盗賊ではありながら人を傷つけたり野蛮な行為は決してしない……「怪人二十面相」といえば、江戸川乱歩が描いた昭和初期の推理活劇シリーズです。好敵手の名探偵・明智小五郎との推理合戦は、もはや語るまでもないでしょう。
 しかし、実はこの怪人二十面相にはそっくりな特徴を持つ“元ネタ”があったのです。「怪盗ジゴマ」です。大正元年に公開された無声映画『怪盗ジゴマ』は、テレビはおろかラジオもまだ普及していない時代、小中学生を中心に一大ブームとなった作品でした。あまりの観客の熱狂ぶりに、ついには当局によって上映禁止が通達されたほどです。
 そしてその大正元年、名古屋に暮らす一人の多感な少年がいました、江戸川乱歩です。中学生だった彼も『ジゴマ』の噂を聞き、早速見にいった一人でした。奇想天外なストーリー展開、躍動感溢れる活劇シーン――、乱歩少年は忽ちその面白さに魅せられてしまいました。連日連夜、劇場に通い詰めたほどだったといいます。怪盗ジゴマとその好敵手、探偵ポーリンとの大活劇は、中学生の乱歩の心に刻み込まれ、後年のヒット・シリーズ『怪人二十面相』に結晶していくことになるのでした。

2006/06/01

著者プロフィール

永嶺重敏

ナガミネ・シゲトシ

1955(昭和30)年、鹿児島県生まれ。東京大学駒場図書館に勤務。九州大学文学部卒業。勤務の傍ら、出版やメディア史の研究を行う。著書に『雑誌と読者の近代』(日本出版学会賞受賞)『モダン都市の読書空間』(日本図書館情報学会賞受賞)『〈読書国民〉の誕生』などがある。

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