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潰れるか? 生き残れるか? 元大手紙幹部が明かす危機の実態。

新聞社―破綻したビジネスモデル―

河内孝/著

756円(税込)

本の仕様

発売日:2007/03/19

読み仮名 シンブンシャハタンシタビジネスモデル
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 220ページ
ISBN 978-4-10-610205-9
C-CODE 0236
整理番号 205
ジャンル マスメディア
定価 756円
電子書籍 価格 648円
電子書籍 配信開始日 2012/02/24

新聞という産業は今、様々な危機に直面している。止まらない読者の減少、低下し続ける広告収入、ITの包囲網、消費税アップ、特殊指定の見直し――そして何より、金科玉条としてきた「部数至上主義」すなわち泥沼の販売競争は、すでに限界を超えている。いったい新聞は大丈夫なのか。生き残る方策はあるのか。元大手紙幹部が徹底的に解き明かす、新聞が書かない新聞ビジネスの病理と、再生への処方箋。

著者プロフィール

河内孝 カワチ・タカシ

1944(昭和19)年東京都生まれ。慶応大学法学部卒業。元毎日新聞常務。全国老人福祉施設協議会および国際厚生事業団の理事を務める。著書に『新聞社―破綻したビジネスモデル―』『次に来るメディアは何か』『血の政治―青嵐会という物語―』など。

目次

まえがき
第一章 新聞の危機、その諸相
朝日と読売の「共闘宣言」/異常な販売コスト/毎日の悪戦苦闘/読売の拡張旋風/過ぎ去った「幸福な時代」/人口減という構造問題/広告売上は三〇年前の水準/明かされない収支決算/消費税アップの恐怖/特殊指定、公取との第三ラウンド
第二章 部数至上主義の虚妄
新聞は「あちら側」/言論と企業活動のギャップ/社長も知らない実売部数/ABCが非販売率を調査/販売店による残紙調査/公取の実態調査/広告主の猜疑心と『J-Read』/販売店と折込チラシ/補助金漬けの販売店管理/悪質な拡張団との腐れ縁/街宣車、玄関突入、拳銃/挫折し続ける販売正常化/残紙三七万トンの環境ダメージ
第三章 新聞と放送、メディアの独占
相次いだメディアの「不祥事」/空文化した「放送政策の憲法」/角栄の政治決断と行政の思惑/テレビ局の創設と「波取り記者」/メディアと役所の茶番劇/アメリカの視聴質、日本の視聴率/新聞、テレビの一体化と世論工作/政官、新聞、テレビで「最後の護送船団」/頓挫した「竹中懇」
第四章 新聞の再生はあるのか
産経新聞の実験――夕刊廃止と低価格/携帯電話と読者の高齢・無職化/再生に向けた二段式ロケット/毎日、産経が中日新聞に「無血開城」/締切りという呪縛からの解放/なぜ、共同通信に戻れないのか/三社提携を全国に拡大
第五章 IT社会と新聞の未来図
新聞版のロングテール/ポータルサイト争いで完敗/IT先進国、アメリカと韓国の苦戦/「eプラットフォーム」と「EPIC2014」/「受け手発想、多品種、少量、安価」/瓦版という原点から
あとがき

インタビュー/対談/エッセイ

波 2007年4月号より 淋しげな恐竜たち  河内 孝『新聞社―破綻したビジネスモデル―』

河内孝

 一月末からニューヨークに滞在している。近く大学の講師を務めるので、三十六年間のサラリーマン生活ですっかり干からびた脳に少しでも水をやろうと短期ながら勉強中だ。が、評判のミュージカルも観たい。シティ・ホールにヒラリーが来るというと五〇ドルのチケットを買って出かけてしまう(タウン・ミーティングというのは市民が金を払ってゲストを招くものらしい)。勉強に専念するなら大学の中に街があるマサチューセッツ州ケンブリッジのほうがよかったかも知れない。いずれにしても六十二歳にして、「遊学」出来たのは家族の理解もさることながら、昨年、毎日新聞社を辞めて自由な身となったからだ。
 毎日新聞社では二つの人生を経験した。二十六年間は新聞記者として、残る十年間は経営者側として。後半で、業界最大の問題は、経営の素人である記者出身者が社長以下、大多数の役員を占めていることであると痛感した。本書でも詳述したが、今日の新聞産業構造は昭和十三年の戦時総動員体制の中で作られた。用紙割り当て、言論統制で生殺与奪の権を国家に握られた新聞業界は千四百社もの業界から約百社にまで集約、統合された。この寡占体制が戦後の民主化の中で、「反権力」を旗印に部数を伸ばした今日の大新聞社のもととなったのは歴史の皮肉である。
 しかも日本の新聞は世界の民主国家で例外的にテレビ兼営を認められた。新聞が斜陽化を深める中で新聞経営者は、「俺達にはまだテレビがあるさ」と思っているのである。
 新聞社を維持するには巨額な輪転機を据え付け、再販制度で守られた五千店以上の専売配達網を張り巡らせなくてはならない。テレビ局は希少な電波の利用だから国家からの許認可が必要だ。この二つのボトルネックがメディア産業を真の意味で競争的ではない政、官、業界が一体となった「護送船団」体制にしてきた。言い換えれば社長の資質は、組織を管理し生産性をあげるよりは、自民党に顔が利くか、役所を押さえられるのかで決まってきた。だから政治部、もしくは経済部出身の記者が各社社長ポストにおさまれたのだ。
 しかし、状況は変わった。新聞産業が直面する問題は多様で深刻だ。新しいビジネスモデルの創出と、それを具体化するための人材の導入が不可欠。この点でも記者出身経営者の存在と経験が改革を妨げる。なぜなら彼らは基本的にものをクリエイトし結果責任を取るのでなく、人が行った結果を評論し、批判するべく育てられてきたからだ。評論家に経営は出来ない。
 自己革新できないリーダーに率いられる新聞業の未来は、かくしてまことに暗い。自らの体重で滅びた恐竜になぞらえたタイトル案は、「小説みたい」で採用にはならなかったが……。


(かわち・たかし 元毎日新聞常務)

担当編集者のひとこと

相反する建前と現実

 減少傾向にあるとはいえ、日本の大手紙の部数は世界的にみると異常なほど多いのです。絶対的な紙数の少なさと独特の戸別配達制のおかげとはいえ、イギリスのタイムズが70万部、アメリカのニューヨーク・タイムズが110万部ですから、読売1000万部、朝日800万部とは比べものになりません。 広告主にとっては嫌な話でしょうが、ABC部数(公称)と実売部数がかけはなれているという指摘は、新聞だけでなく、雑誌についても時々なされます。それでも、返品(書店からの返本)があるかないかは、作り手にとっては大きな違い。少し前に『ハリー・ポッター』の版元が書店買い切りを実施して、ちょっとした話題になりましたが、あくまで例外です。最終的に、売れ残ったぶんの損は自ら負うことになります。新聞のように、販売店(出版なら書店)に残紙を押しつけるわけにはいきません。
 思い切って販売店が裁判に訴えても、なかなか勝てないようです。「社会の木鐸」たる新聞としては、売れ行き云々よりも理念がエライからそんなことは二の次なんでしょうか、新聞紙上で報じられることはまずありません。私自身、週刊誌にいた頃、新聞販売(勧誘を含めて)について取材したことがありますが、結局、新聞社と新聞販売店は別会社という建前のもとで、ヒソヒソ話としてしか語られない現実にすぎませんでした。
 本書では、当事者であった著者が、そのカラクリを内部から詳細に明かしていきます。著者の河内孝さんは、毎日新聞で社会部を皮切りに政治部、外信部長をへて編集局次長、その後、中部本社代表や東京本社副代表、営業戦略本部担当常務をつとめました。「もともと記者は人の弱みや落ち度を書くのが商売。経営には向いていない」というのが持論ながら、窮地にある自社を立て直すべく、また業界の正常化をはかるべく大改革に挑みましたが、昨年6月に退任を余儀なくされました。本の中では、幻と消えた改革プランも紹介されています。新聞はもちろんメディア産業に関わる人なら、一度は読んでいただきたいと思います。

2007/03/24

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