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医師のミスは「犯罪」か? 患者は消費者か? 『医療崩壊』の現場から鋭く問う!

医療の限界

小松秀樹/著

756円(税込)

本の仕様

発売日:2007/06/18

読み仮名 イリョウノゲンカイ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 220ページ
ISBN 978-4-10-610218-9
C-CODE 0247
整理番号 218
定価 756円
電子書籍 価格 648円
電子書籍 配信開始日 2011/12/28

日本人は死生観を失った。リスクのない治療はない。患者は消費者ではない――。医療の現場を崩壊させる、際限のない社会の「安心・安全」要求、科学を理解しない刑事司法のレトリック、コストとクオリティを無視した建前ばかりの行政制度など、さまざまな要因を、具体例とともに思想的見地まで掘り下げて論及する。いったい医療は誰のものか? 日本の医療が直面する重大な選択肢を鋭く問う。

著者プロフィール

小松秀樹 コマツ・ヒデキ

1949(昭和24)年香川県生まれ。東京大学医学部卒業後、山梨医科大助教授などを経て、現在、虎の門病院泌尿器科部長。2006年に『医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か―』で、病院医療の危機を克明に描き、発言する第一線の臨床医として注目される。

目次

はじめに
第一章 死生観と医療の不確実性
死を受容できない/『渋江抽斎』の時代/不老不死という幻想/不確実性を許容できるか/十時間を超える説明/武士道からみた現代人/割り箸事件/期待と結果の混同
第二章 無謬からの脱却
医療と検察の「無謬」/「過つは人の常、許すは神の業」/治療は常にリスクを伴う
第三章 医療と司法
賠償命令は非難を含む/判決は過誤を反映しない/賠償金とモラル/自白を強要する慣習/過失は罪か/架空の「免許皆伝モデル」/警察、検察の能力の質/異状死ガイドライン/暴走する世論/合理性をめぐる衝突/誘発されたエラー
第四章 医療の現場で~虎の門病院での取り組み
山梨医大での問題提起/医師の行動規範と安全のかなめ/インシデントとオカレンス報告制度/精神的負担のない「密告」制度/「死に至ることもある」という一文/〈医師のための入院診療基本指針〉
第五章 医療における教育、評価、人事
インパクト・ファクターという仮想現実/大学院は責任感を希薄にする/医局制度の落とし穴/「不等なるものは不等に扱わるべし」/医局は過去には戻れない
第六章 公共財と通常財
コストとクオリティ/患者は消費者ではない/開放系倫理と閉鎖系倫理/市場原理の医療の怖さ/アメリカの思想的起源/機会均等という国是と幻想/結果平等をめざす村社会/過大な自由と適切な自由/日本人は競争に耐えられるか/立ち去り型サボタージュ
第七章 医療崩壊を防げるか
医療事故を防止する/医療事故はなくならない/組織整備と法制度の改正を/『全体主義の起原』と『大衆の反逆』/医師の応召義務と緊急避難/緊急に国民的議論を
あとがきに代えて――「厚労省に望むこと」

担当編集者のひとこと

医療は誰のものか

 本書が指摘しているように、人間がすることである以上、常に無謬(けして誤りがないこと)を前提とするのは無理があります。前半、医療を崩壊に追いやっている様々な要因を的確に分析にしていますが、そのひとつが「過失」をめぐる医科学と司法制度の根本的な齟齬です。民事訴訟での損害賠償請求もさることながら、刑事事件として「犯罪者」扱いされ、マスコミで報じられることの重圧は、大半は善意の職業人である医療関係者にとって、相当なものであるのは想像にかたくありません。
 少し前まで日本の警察・検察は、検挙率と起訴後の有罪確定率の高さから、世界的に優秀であるとされていました。しかし一面では是が非でも「自白」をさせ、灰色も、ときには白も黒にぬり替えてきたことは多くの例が証明しています。私自身、かつて担当した取材に関して民事裁判だけでなく、刑事訴追の対象にされた経験がありますが、狭い部屋で朝から晩までくりかえし続く事情聴取というのは、理屈抜きでシンドイものです。何より、「無謬」である捜査当局がいったん方針を決めてしまうと、太刀打ちするのはなかなか困難です。
 後半、瀬戸際にある医療現場からの重い問いかけは、患者は「消費者」なのか――医療は対価を支払って購入する「通常財」か、それとも病者のために社会が維持すべき「公共財」か――というものです。構造改革の“成果”なのでしょう、メディアでも前者、つまりアメリカ型の市場原理をふまえた論調が目立ちます。
 出版業は英語でpublisherですが、これは物事を公にするというだけでなく、public=公共のものであるという考えがもとになっているそうです。本書は、多忙な第一線の臨床医が、限界に来た医療の現状を明らかにしたうえで、すべての日本人に「緊急に国民的議論を」と呼びかけています。いささか大げさに聞こえるかもしれませんが、読めば納得いただけるものと思います。

2007/06/25

蘊蓄倉庫

「世論」の危うさ

 著者は無責任なメディアの自動反復現象が、世論の暴走を生んでいることを危惧しています。優れたアフォリズムを数多く残した芥川龍之介は、『侏儒の言葉』の中で、「輿論(よろん)は常に私刑であり、私刑は又常に娯楽である。たといピストルを用うる代りに新聞の記事を用いたとしても」と記しています。90年代末から急増した医療事故報道、ひいては医師バッシングは、このところ、外科系医志望者の激減、医師や看護師の不足など、医療の窮状を伝えるものに変わりました。芥川はまた、「輿論の存在に価する理由は唯(ただ)輿論を蹂躙(じゅうりん)する興味を与えることばかりである」とも書いていますが、『医療崩壊』の危機はすでに限界にきているようです。

掲載:2007年6月25日

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