草野球をとことん楽しむ
748円(税込)
発売日:2007/10/17
- 新書
- 電子書籍あり
振り遅れの流し打ちでも気分はイチローだ! オーダー作成から打ち上げまで。徹底的に楽しむコツを大公開。
草野球こそ最高の娯楽だ。中年男をこれほど熱くするものが他にあるだろうか。試合前夜は嬉しくて寝付けないし、オーダーを考えてはしばしば徹夜。運動不足もなんのその、グラウンドでは思わずハッスルし、プレーを肴に打ち上げは大盛り上がり。果ては試合後に新聞まで作ってしまう……。二つのチームでプレーする著者が語る「草野球の楽しみ」と、愛すべき「草野球バカ」たちの姿。
目次
プレーボール
一回 遠足前の小学生?
野球の神さま/野球神社/チーム名の由来/ゲンかつぎ/試合前夜は寝付けない……
二回 チーム愛
スコアとモチベーション/紅白戦の顛末/新聞発行/家族サービス/キャッチャーは威張っているやつに
三回 エースの条件
ピッチャー的性格/天才的なノーコン投手/裏門通り/軟弱エースの伝説/ポジションがバッティングピッチャー!?
四回 ダッグアウト
試合を始めるまでにひと苦労/相手チームの実力は練習で検分/ベンチのどこに座るか/「和気あいあい」も行き過ぎては……/プロとの試合
五回 ルールとエチケット
ワンマン監督/たかり屋集団/痛すぎるガッツ/草野球でバント?/区のリーグ参加をやめた理由/助っ人の使い方
六回 ジャーニーマン
一日に三試合かけ持ち/ユニフォーム代立て替え不払い事件/ウンチク男/ムードメーカーの意地/野球少年を大切に
七回 草野球に引退なし
球場管理人というやつは……/近鉄が消滅した日の草野球/自分の引退試合に遅刻した男
ゲームセット
書誌情報
読み仮名 | クサヤキュウヲトコトンタノシム |
---|---|
シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 208ページ |
ISBN | 978-4-10-610235-6 |
C-CODE | 0275 |
整理番号 | 235 |
ジャンル | スポーツ |
定価 | 748円 |
電子書籍 価格 | 660円 |
電子書籍 配信開始日 | 2012/03/30 |
インタビュー/対談/エッセイ
波 2007年11月号より 好きなんだから、しょうがない 降籏 学『草野球をとことん楽しむ』
過去に二度ほど海外で暮らしたことがある。
最初はイギリス第二の都市バーミンガム。これは学生時代の留学だ。二度目はいまの仕事を始めてからのことで、渡航先はオーストラリアだが、このとき一年かけて取材したものが私のデビュー作になった。
留学先では授業についていくのがやっとだったし、単行本を書くために滞在したオーストラリアでは取材活動に明け暮れていたものの、毎日はそれなりに充実していた。たったひとつ、いずれも“野球”がない国だったことを除いては――。
言うまでもなく、イギリスはサッカーの母国であり、かつてはその属国だったオーストラリアもサッカーが盛んなお国柄だ。
グラウンドのみならず、公園や路地裏を歩けば必ず草サッカーに興じている子供たちがいるのは微笑ましいのだが、誰に訊いても“ベースボール”というスポーツを知らないのである。
当然、キャッチボールをする相手もいない。
学生時代はもちろん、記者の仕事に就いてからも草野球を続けてきた私にはそれが大いに不満であり、大いなるフラストレーションになった。
そして知ったのである。身近に野球がない生活、あるいは野球ができない生活がどんなに寂しいものであるかを。
実は、いまも似たような状況にある。
三年前、郷里を大震災が襲った。さきの中越地震だ。通信網と交通網が遮断されて家族や友人の安否を確認する術を失った私は、地震発生から丸々四日間、眠った記憶がない。
そのときの過度のストレスが原因だろうと医者は言うが、私はホルモン分泌に異常をきたし、その負担が全て心臓にかかってきた。本当は手術が必要だったらしいのだが、私がケロイド体質だったことから投薬療法が選択された。
完全なドクターストップである。さりげなく野球はできるかと訊いてみたが、「死にたいのか、ばか者」と怒鳴られる始末だった。
私は二つの草野球チームをかけ持ちしている。プレーは許されなかったが、試合のたびにグラウンドには通った。チームメイトが白球を追っているのに、おめおめと家で寝てられるか、という心境からだった。
だが、グラウンドに行けば行ったで身体が疼くのである。試合に出たい。投げたい。打ちたい。せめて素振りだけでもと思い、ベンチ前でちょっとバットを構えただけでまた監督に叱られる。
まだ通院は続けているが、医者から「指名打者くらいなら」との言質を取りつけたのをいいことに、守りにもつく指名打者でフル出場している。チームメイトにも呆れられるが、好きなんだからしょうがない。本書にはそんな思いを綴った。
これは、野球が大好きなあなたと私の心のキャッチボールです。どうぞ、チームに一冊。
最初はイギリス第二の都市バーミンガム。これは学生時代の留学だ。二度目はいまの仕事を始めてからのことで、渡航先はオーストラリアだが、このとき一年かけて取材したものが私のデビュー作になった。
留学先では授業についていくのがやっとだったし、単行本を書くために滞在したオーストラリアでは取材活動に明け暮れていたものの、毎日はそれなりに充実していた。たったひとつ、いずれも“野球”がない国だったことを除いては――。
言うまでもなく、イギリスはサッカーの母国であり、かつてはその属国だったオーストラリアもサッカーが盛んなお国柄だ。
グラウンドのみならず、公園や路地裏を歩けば必ず草サッカーに興じている子供たちがいるのは微笑ましいのだが、誰に訊いても“ベースボール”というスポーツを知らないのである。
当然、キャッチボールをする相手もいない。
学生時代はもちろん、記者の仕事に就いてからも草野球を続けてきた私にはそれが大いに不満であり、大いなるフラストレーションになった。
そして知ったのである。身近に野球がない生活、あるいは野球ができない生活がどんなに寂しいものであるかを。
実は、いまも似たような状況にある。
三年前、郷里を大震災が襲った。さきの中越地震だ。通信網と交通網が遮断されて家族や友人の安否を確認する術を失った私は、地震発生から丸々四日間、眠った記憶がない。
そのときの過度のストレスが原因だろうと医者は言うが、私はホルモン分泌に異常をきたし、その負担が全て心臓にかかってきた。本当は手術が必要だったらしいのだが、私がケロイド体質だったことから投薬療法が選択された。
完全なドクターストップである。さりげなく野球はできるかと訊いてみたが、「死にたいのか、ばか者」と怒鳴られる始末だった。
私は二つの草野球チームをかけ持ちしている。プレーは許されなかったが、試合のたびにグラウンドには通った。チームメイトが白球を追っているのに、おめおめと家で寝てられるか、という心境からだった。
だが、グラウンドに行けば行ったで身体が疼くのである。試合に出たい。投げたい。打ちたい。せめて素振りだけでもと思い、ベンチ前でちょっとバットを構えただけでまた監督に叱られる。
まだ通院は続けているが、医者から「指名打者くらいなら」との言質を取りつけたのをいいことに、守りにもつく指名打者でフル出場している。チームメイトにも呆れられるが、好きなんだからしょうがない。本書にはそんな思いを綴った。
これは、野球が大好きなあなたと私の心のキャッチボールです。どうぞ、チームに一冊。
(ふりはた・まなぶ ノンフィクションライター)
蘊蓄倉庫
野球神社
埼玉県に、「野球神社」の異名を持つ神社があります。正式には「箭弓稲荷神社」。箭弓と書いて「やきゅう」と読みます。もともとは芸事の神様として奉られていたそうですが、いつの頃からか「野球がうまくなる神社」として知られるようになったとか。密かに参拝するプロ野球選手もいるそうです。
埼玉県に、「野球神社」の異名を持つ神社があります。正式には「箭弓稲荷神社」。箭弓と書いて「やきゅう」と読みます。もともとは芸事の神様として奉られていたそうですが、いつの頃からか「野球がうまくなる神社」として知られるようになったとか。密かに参拝するプロ野球選手もいるそうです。
掲載:2007年10月25日
著者プロフィール
降籏学
フリハタ・マナブ
1964(昭和39)年新潟県生まれ。神奈川大学法学部卒。英国アストン大学に留学。1996年、第三回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。主な著書に『残酷な楽園』『敵手』『松坂大輔 [証明]』他、剣崎学のペンネームで書いた『都銀暗黒回廊』などがある。
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