温泉文学論
748円(税込)
発売日:2007/12/17
- 新書
- 電子書籍あり
漱石、川端、賢治、清張……名作の源泉ここにあり!
幸田露伴が問い、川端康成が追究した「温泉文学」とは何か? 夏目漱石、宮澤賢治、志賀直哉……名作には、なぜか温泉地が欠かせない。立ちのぼる湯煙の中に、情愛と別離、偏執と宿意、土俗と自然、生命と無常がにじむ。本をたずさえ、汽車を乗り継ぎ、名湯に首までつかりながら、文豪たちの創作の源泉をさぐる異色の紀行評論。
書誌情報
読み仮名 | オンセンブンガクロン |
---|---|
シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 208ページ |
ISBN | 978-4-10-610243-1 |
C-CODE | 0295 |
整理番号 | 243 |
ジャンル | 文学・評論、ノンフィクション |
定価 | 748円 |
電子書籍 価格 | 660円 |
電子書籍 配信開始日 | 2012/04/27 |
蘊蓄倉庫
火山国の温泉文化
近代文学と温泉の濃密な関係は本書に書いてある通りですが、日本人と温泉、となると、日本書紀や万葉集まで遡ります。古代は王族貴族のリゾートであったり、近世にはキリシタン弾圧の舞台となったり、温泉は耽美と癒しの場にもなれば、苦痛と拷問の場としても使われました。別府や雲仙、八幡平や恐山――、各地の源泉はしばしば地獄にも模されます。温泉文化の奥深さは、火山国・日本に固有であるのは確かなようです。
近代文学と温泉の濃密な関係は本書に書いてある通りですが、日本人と温泉、となると、日本書紀や万葉集まで遡ります。古代は王族貴族のリゾートであったり、近世にはキリシタン弾圧の舞台となったり、温泉は耽美と癒しの場にもなれば、苦痛と拷問の場としても使われました。別府や雲仙、八幡平や恐山――、各地の源泉はしばしば地獄にも模されます。温泉文化の奥深さは、火山国・日本に固有であるのは確かなようです。
掲載:2007年12月25日
担当編集者のひとこと
温泉の文学的効能
日本文学の名作・佳品は、なぜか温泉地を舞台にしたものが多い――、本書は、それを豊富な教養と深い文学的洞察をベースとして追究しています。
ただ、ひとつ付け加えれば、かつては出版社が作家を「カンヅメ」にするのは温泉旅館が定番だったこともあるでしょう。現在では、通信環境の発展、書き手の嗜好、版元の経済的事情など諸般すっかり様変わり、そうした機会はほとんどなくなりました。
人里離れた閑寂の地で、終日、一人で原稿用紙に向かうという光景は、もはや過去の定型となりましたが、他方で温泉が持つ心身への様ざまな効能を考えれば、総じてプラスの方が大きかったのかもしれません。著者も、これまでになく筆がよく進んだそうですから……。
2007/12/25
著者プロフィール
川村湊
カワムラ・ミナト
1951(昭和26)年北海道生まれ。文芸評論家・法政大学国際文化学部教授。『南洋・樺太の日本文学』(平林たい子文学賞)『満洲崩壊―「大東亜文学」と作家たち―』『補陀落―観音信仰への旅―』(伊藤整文学賞)など著書多数。1993年から毎日新聞で文芸時評を担当。
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