ホーム > 書籍詳細:「痴呆老人」は何を見ているか

われわれは皆、程度の異なる「痴呆」である。

「痴呆老人」は何を見ているか

大井玄/著

770円(税込)

本の仕様

発売日:2008/01/17

読み仮名 チホウロウジンハナニヲミテイルカ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 223ページ
ISBN 978-4-10-610248-6
C-CODE 0247
整理番号 248
ジャンル 哲学・思想、思想・社会、暮らし・健康・料理
定価 770円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2012/03/30

「私」とは何か? 「世界」とは何か? 人生の終末期を迎え、痴呆状態にある老人たちを通して見えてくる、正常と異常のあいだ。そこに介在する文化と倫理の根源的差異をとらえ、人間がどのように現実を仮構しているのかを、医学・哲学の両義からあざやかに解き明かす。「つながり」から「自立」へ――、生物として生存戦略の一大転換期におかれた現代日本人の危うさを浮き彫りにする画期的論考。

著者プロフィール

大井玄 オオイ・ゲン

1935(昭和10)年生まれ。東京大学名誉教授。東大医学部卒業後、ハーバード大学公衆衛生大学院修了。東大医学部教授などを経て国立環境研究所所長を務めた。著書に『「痴呆老人」は何を見ているか』『人間の往生』『病から詩がうまれる』など。現在も終末期医療全般に取り組む。

目次

はじめに
第一章 わたしと認知症
なぜ怖がられるのか/ぼけと「痴呆」/佐久平での宅診/急性抑うつ反応/「申し訳なさ」と癒し/精神症状と人間関係
第二章 「痴呆」と文化差
異質なものへのラベル/沖縄の「純粋痴呆」/世間的イメージの誤解/「一水四見」という文化差/「生かされる」と「生かされている」だけ/アメリカ人にとっての自立性喪失
第三章 コミュニケーションという方法論
ゲラダヒヒの平和社会/偽会話となじみの仲間/「理解する」は大事ではない/笑顔はなぜ大切か/ブッシュ大統領の「痴呆老人」的反応/個人史をたずねる/体の位置と敬語/相手の世界へのパスワード
第四章 環境と認識をめぐって
彼らの原則/環境と環境世界/見ているもの、ではなく、見たいもの/コトバで世界を形成している/最小苦痛の原則/「思いこみ」を支える深層意識/思いが生む虚構現実/現実を構成する経験/現実は「事物」でなく「意味」/外向きの世界仮構
第五章 「私」とは何か
二つの「私」/《Me》と「Mine」/《私》と目先の利益/がん患者と無常の自覚/「私」を統合する/自己とは記憶である/「つながり」への情動/『蜘蛛の糸』の不安/ほどけていく「私」
第六章 「私」の人格
相手の数だけ人格がある/『24人のビリー・ミリガン』/社会病理を映す多重人格/生きるための言語ゲーム/若返り現象/住みやすい過去へ/暴流のようなエネルギー/「いのちが私をしている」/実体的自我は存在しない
第七章 現代の社会と生存戦略
生命と年齢の関数/長く伸びたグレイゾーン/上手なつながり/「病気」の増殖/苦痛を病気化してしまう/自由と不安/言語習得の心理ステップ/日本特有のひきこもり/失神するほどの無力感/自分vs.世界/自立とつながりの自己/甘える理由/生存戦略の大転換のなかで/キレる理由/自立社会の呻き声
最終章 日本人の「私」
つながりの心性/班田収授の精神/江戸の循環型社会/強権と個人的自由/心と私心/「自己卑下」と先祖の智恵
参考文献・註記

おわりに

担当編集者のひとこと

つながりの師弟

 福田首相が掲げるキャッチフレーズは「自立」と「共生」です。どちらも聞こえの良い言葉ですが、本書を読むと、この二つは心理的に深刻な矛盾を孕んでいることが分かります。「自律と独立」を重んじるアメリカ的倫理観と、「つながり」つまり集団として共に生きることを優先する日本の伝統的価値観を並べるところに、現代社会と政治の自家撞着が窺われるようです。
 さて、つながりといえば、大井氏は話題作『医療の限界』(07年6月刊)の著者・小松秀樹氏の恩師にあたります。ともに医療を社会全体の中でとらえる視座を持っていますが、他方で大井氏は、一昨年91歳で他界した伝説的小説家・小島信夫氏の教え子でした。芥川賞を受賞した「アメリカン・スクール」は、敗戦後の日米関係を戯画化した傑作ですが、その小島さんの口癖だったのが「常に全体を見なさい」。医師として古稀を過ぎた現在も、ずっと頭に残っているそうです。

2008/01/25

蘊蓄倉庫

今も昔も西洋かぶれ

 明治維新後、東大医学部で四半世紀余り教鞭をとったドイツ人医師ベルツは、日本のエリート達が、祖国の過去を野蛮なものとして全否定するさまに強い違和感を覚えました。同様に夏目漱石も、「地道にのそりのそりと歩くのでなくって、やッと気合を懸けてはぴょいぴょいと飛んで行く」、「皮相上滑りの開化」(「現代日本の開化」)を痛烈に批判、その心理的影響に危惧を表明しました。著者は二人の大先輩に倣うかのように、西洋の価値基準を無批判に受け容れる日本人の危うさを指摘しています。
掲載:2008年1月25日

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