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「民主主義」が戦争を生んだ。常識が次々と覆る、圧倒的リアリティ!

昭和史の逆説

井上寿一/著

748円(税込)

本の仕様

発売日:2008/07/17

読み仮名 ショウワシノギャクセツ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 207ページ
ISBN 978-4-10-610271-4
C-CODE 0221
整理番号 271
ジャンル 政治、日本史
定価 748円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2012/03/30

昭和史は逆説の連続である。希望はいつの間にか絶望へと変わる。夢と思えたものが悪夢に転ずる。平和を求めたはずが戦争になり、民主主義の先にファシズムが生まれる。一筋縄では進まない歴史の奔流のなかで、国民は何を望み、政治家はどのような判断を下していったのか? 田中義一、浜口雄幸、広田弘毅、近衛文麿など、昭和史の主人公たちの視点に立って、「かくも現代に似た時代」の実相を鮮やかに描き出す。

著者プロフィール

井上寿一 イノウエ・トシカズ

1956年、東京都生まれ。一橋大学社会学部卒業。学習院大学法学部教授。法学博士。専攻は日本政治外交史。主な著書に、『危機のなかの協調外交―日中戦争に至る対外政策の形成と展開―』(山川出版社、吉田茂賞)、『日中戦争下の日本』(講談社選書メチエ)、『昭和史の逆説』(新潮新書)、『山県有朋と明治国家』(NHKブックス)、『吉田茂と昭和史』、『戦前昭和の社会 1926-1945』(共に講談社現代新書)。

目次

まえがき
第一章 山東出兵は国際協調が目的だった
決断を迫られた田中義一/田中の基本姿勢/出兵に消極的だった三つの理由/出兵なしで収まった南京事件の先例/沸き上がる田中外交批判/田中、苦渋の決断/英米との協調出兵/出兵、そして迅速な撤兵/英米が歓迎した山東出兵/再出兵での不測の事態/それでも基本姿勢を崩さなかった田中/田中外交に対する評価
第二章 軍の暴走は協調外交と政党政治が抑えていた
一九三〇年三月、ロンドン/日米英、三国の協調/一九三〇年三月、東京/浜口、正面突破を試みる/海軍、貴族院、枢密院/浜口、凶弾に倒れる/外からのクーデタ/若槻首相、まき返しに出る/軍部に対抗するための大連立内閣構想/日米連携プレーで現地軍を抑制/大連立内閣構想の挫折/日米連携が裏目に
第三章 松岡洋右は国際連盟脱退に反対していた
一九三二年末、ジュネーヴ/「十字架上の日本」演説/ジュネーヴと東京の対立/退けられた松岡最後の訴え/連盟脱退は誰も望んでいなかった/暗転するジュネーヴの空気/国際協調のための国際連盟脱退/孤立無援の日本代表団/「英雄」に似つかわしくない帰国報告/松岡報告とは異なる外務省調書
第四章 国民は〈昭和デモクラシー〉の発展に賭けた
広田外交の開始/「皇道派」対「統制派」/広田弘毅と高橋是清/政党による軍部批判の台頭/広田の決意表明/広田を窮地に追い込んだ「東亜モンロー主義」/斎藤内閣から岡田内閣へ/「私の在任中に戦争は断じてない」/政争に利用された天皇機関説/四年ぶりの総選挙の結果/二・二六事件/広田暫定政権の成立
第五章 戦争を支持したのは労働者、農民、女性だった
辞めたくても辞められない……/歳末商戦というもう一つの「戦争」/戦争によって進む国内改革/和平工作の挫折/「国民政府を対手とせず」/軌道修正を迫られた近衛/宇垣、ハシゴを外される/近衛、計算ずくで辞任を決断/近衛後の三内閣/「新体制」に賭けた社会大衆党/松岡洋右外相が選ばれた理由/日独伊三国同盟/矛盾をはらんだ大政翼賛会/三国同盟は「一生の不覚」/未完の革新
第六章 アメリカとの戦争は避けることができた
昭和一六年一〇月/東条内閣の布陣/東条に期待したグルー駐日アメリカ大使/軍部の制御に苦心する東条/「お上」という切り札/挙国一致体制確立のための開戦論/勝ち目がないことは承知していたものの……/戦争の「大義名分」は何か/東郷外相、最後の決断/開戦へ/戦争目的のあいまいさ
第七章 降伏は原爆投下やソ連参戦の前に決まっていた
敗戦の予感/「挫折者」たちの再起/ソ連の仲介に期待/和平条件、方法、タイミング/国内対策のシナリオ/アメリカに送りつづけたシグナル/広田・マリク会談/ポツダム宣言の解読/「科学戦に負けたるものなり」/聖断のシナリオ/動揺する鈴木
あとがき
参考文献

インタビュー/対談/エッセイ

波 2008年8月号より スティーヴン・キングが書く昭和史?

井上寿一

「S・Kにこの本を捧げる/T・I」
この本の献辞として書く予定だった文章である。しかし担当編集者のY氏に笑われるのがおちだったから、最初から載せるのをあきらめた。せめてこの場で記すことをお許し願いたい。
「S・K」とは、アメリカの作家「モダン・ホラーの帝王」スティーヴン・キングのことである。
私は、新潮文庫のスティーヴン・キング『ダーク・タワー』全16巻を読みながら、自著の新潮新書を書いた。すると〈暗黒の塔〉探索の旅と〈昭和史〉探索の旅とが重なるようになった。
夜、キングが乗り移ったかのように猛スピードで書き進めた昭和史は、スリルとサスペンスに満ちあふれていた。書くのが楽しかった。
ところが翌朝、読み返してみると、そこにあるのは紛う方無き自分の文章だった。前夜の高揚感は、キングの『ダーク・タワー』が与えてくれたのであり、一夜の夢にすぎなかった。
夢と現実の落差は、〈暗黒の塔〉と〈昭和史〉の違いでもある。時空を超えて暗黒の塔への無限の旅をつづけるローランドたちの受難は、たしかに想像を絶している。しかし昭和史は、現実に起きた出来事の歴史である。運命の過酷さを較べても意味があるとは思えない。
しかもこの時間旅行の結末は、あらかじめわかっている。どんなに大胆な解釈をもってしても、ノンフィクションである限りは変えようがない。〈昭和史〉探索の旅の結末は、帝国日本の滅亡と決まっている。
人は誰でもハッピー・エンドを好む。失敗の歴史を物語るのは気が重い。それでも〈昭和史〉探索の旅をつづけることができたのは、キングの励ましがあったからである。キングは言う。「ためらうことはない。恐れずに敵情を偵察して、詳細な報告を持ち帰ればいい」。この本は、私が昭和史を「偵察」してきた報告書である。
私は、探索の旅の途中で出会った作中の主人公たちに同情するようになった。歴史の逆説の奔流のなかで、窮地に陥っている彼らがなんとか脱出できるようにと願った。
しかし願いは叶わなかった。彼らに落ち度がなかったとは言わない。せっかくうまくいきそうだったのに、策におぼれて失敗する。猜疑心や野心が災いする。危機の時代において、昭和史の主人公たちはあまりにも人間的すぎた。判断のミスを重ねた彼らの政治指導の責任は重い。
それでも責任を追及する気になれなかったのは、彼らとともに生きていた国民の姿を垣間見てしまったからだ。体制の崩壊を予感しながらも、新しい政治社会が生まれる可能性に賭けつづける。国民が希望を捨てることはなかった。帝国日本は滅びる。しかし国民の希望は死ななかった。国民は、新しい政治社会が実現する可能性を戦後に託した。
〈昭和史〉探索の旅から帰ってきた私は、自分が当時の日本国民の末裔であることを確信したのである。

(いのうえ・としかず 学習院大学法学部教授)

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近衛文麿の猜疑心

 1938年5月、当時の近衛文麿首相は内閣を改造し、外務大臣に陸軍出身の宇垣一成を据えます。中国大陸に派遣された現地軍の行動を抑え、対中外交を立て直すのが目的でした。宇垣は近衛の期待に応えますが、わずか4ヶ月後にはその近衛によって辞任に追い込まれます。理由はどうやら、「成功したら手柄をとられるのでは……」という猜疑心でした。際だって政治的な人物だった近衛の行動をつぶさに見てみると、この猜疑心があちこちに顔を出します。
掲載:2008年07月25日

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