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世紀のラブレター

梯久美子/著

748円(税込)

発売日:2008/07/17

書誌情報

読み仮名 セイキノラブレター
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書
判型 新潮新書
頁数 206ページ
ISBN 978-4-10-610272-1
C-CODE 0295
整理番号 272
ジャンル ノンフィクション
定価 748円

気恥ずかしくなるほど正直で、それゆえに胸を打つ――。「しめ殺す程抱きしめたい」石原裕次郎、「なぜこんなにいい女体なのですか」斎藤茂吉、「ああ、シスターKissして」鳩山一郎

甘える裕次郎、渇望する鳩山一郎、死を目前に想いを託した特攻兵や名将たち。平民宰相は妻の不貞をかこち、関東軍参謀はその名を連呼した。「なぜこんなにいい女体なのですか」と迫る茂吉、「覚悟していらっしゃいまし」と凄んだ美貌の歌人。ゆかしき皇族の相聞歌から、来世の邂逅を願う伴侶の悲哀まで――明治から平成の百年、近現代史を彩った男女の類まれな、あられもない恋文の力をたどる異色ノンフィクション。

目次
まえがき
第一章 「しめ殺す程抱きしめたい」――青春の恋
大スターの相聞歌/裕次郎の「謝罪」/ああ、シスターKissして/リベラリストの口づけ押し花/幸福な時に、一番不幸な事を/「一生を棒に振る」という冒険家/百鬼園先生のもどかしさ/気おくれする『男性自身』/特攻命令の夜に
第二章 「あなたの懐ろに飛びこみたい」――今生の別れ
肉体関係なくても夫婦とは/『クロォチェ』に記された特攻兵の暗号文/紙くずに残された蹶起将校の初恋/後事を託して何ら憂いなし/日常を案じる硫黄島からの手紙/遺髪を同封した五十六元帥の純情/戦犯法廷で誓った夫への愛
第三章 「なぜこんなにいい女体なのですか」――作家の口説き文句
『新生』から『夜明け前』へ/たましひはぬけてしまひます/僕がのんだ君の樹液、君のひこばえ/嫁姑不和を憂う家長鴎外/神経衰弱を支えた漱石の妻/名文調で罵倒の連打/仏足石に踏まれたい
第四章 「モチロン アイシテル!」――夫婦の絆
関東軍参謀が溺愛した内気な妻/平民宰相と不貞の妻/共産党のドンと女流作家/貧しき劇団俳優とその妻/賢夫人へ、元総理のワンフレーズ/アニメーターが書いた百通の手紙/がん闘病の妻から夫の誕生日に
第五章 「幼な日よりのわが夢かなふ」――皇室の相聞歌
昭和天皇と香淳皇后/大正天皇と貞明皇后/明治天皇と昭憲皇太后/今上天皇と美智子皇后/皇太子と雅子妃
第六章 「こんな怖ろしい女、もういや、いやですか」――女たちのドラマ
生活の細部をつづる向田邦子/いかに生きるかを問う須賀敦子/覚悟していらつしやいまし――白蓮事件/愛新覚羅慧生の「天城山心中」/「流転の王妃」の娘とバンカラ学生
第七章 「来世も一緒に暮らしましょ」――天国のあなたへ
稀代の漢文学者の挽歌/「死後愛妻家」と呼ばれた経団連会長/劇作家の「ママ恋し帖」/看取られるはずを看取って/「パンツ一枚で」「部分」/最期のラブレター「別れの言葉」
あとがき
 写真提供及び出典一覧
 主要参考文献及び出典一覧

蘊蓄倉庫

絶滅が危惧される「恋文」

 本書でもふれているように、メール全盛の近年、封書(手紙)の数は減るばかりです。2001年からの5年間だけみても、年間132億通から112億通へと15パーセント以上も減りました。この傾向はおそらく今後も変らないでしょうし、メールの次は何か分かりませんが、書き手が万感こめて表現を凝らし、他にひとつとない肉筆で書き、封緘、投函されて相手に届くラブレターというのは、もはや絶滅危惧種でさえあるかもしれません。
掲載:2008年07月25日

担当編集者のひとこと

共産主義者と個人主義者のラブレター

 今年は小林多喜二の『蟹工船』が大ブームです。若い世代のワーキング・プアと格差が背景にあるというのですが、著者の多喜二は、短い生涯に実に多くのラブレターを書き残しています。中でも有名なのは、「闇があるから光がある」の一文で始まる、小樽時代の恋人・田口瀧子へ宛てた手紙で、「僕のスウィート・ハート」と呼ぶ「瀧ちゃん」を、料理屋の酌婦という境涯から救い出そうと奔走する様子が伝わってきます。
 最近のブームといえば永井荷風もそうで、老いてなお若い女性に囲まれたライフスタイルが、高齢世代を惹きつけているといいます。その荷風にも、アメリカ滞在当時、イデスという娼婦の恋人がありました。その後フランスで書かれた書簡には、「let me know where you are now!」といった率直な表現が羅列されていますが、未投函だったところに、結局は女性に背を向ける荷風のスタンスがしのばれます。
 社会変革を願い、29歳の若さで拷問死させられた多喜二と、個人主義に徹し、79歳で孤独死した荷風。青春時代に似たような境遇の女性を愛し、それぞれに名作を残していることは同様ですが、その後の人生は対照的なものでした。青春期の熱烈な恋愛は、その後の人生に大きな影響を与えるもののようです。

2008/07/25

著者プロフィール

梯久美子

カケハシ・クミコ

1961(昭和36)年熊本県生れ。北海道大学文学部卒業。編集者を経て文筆業に。『散るぞ悲しき』で2006(平成18)年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞、同書は米・英・仏・伊など世界8カ国で翻訳出版されている。2016年に刊行された『狂うひと「死の棘」の妻・島尾ミホ』は翌年、読売文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞、講談社ノンフィクション賞の3賞を受賞した。他の著書に『世紀のラブレター』『昭和二十年夏、僕は兵士だった』『昭和の遺書――55人の魂の記録』『百年の手紙――日本人が遺したことば』『廃線紀行――もうひとつの鉄道旅』『愛の顛末――純愛とスキャンダルの文学史』『原民喜――死と愛と孤独の肖像』など多数。

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