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文豪たちの大陸横断鉄道

小島英俊/著

770円(税込)

発売日:2008/09/13

  • 新書
  • 電子書籍あり

漱石、荷風、芙美子……。そこには贅沢な車窓風景があった。

満州を珍道中した漱石、女一人でシベリアを横断した林芙美子、憧れの都パリを目指した荷風、利一、開戦間際のアメリカ大陸を駆け抜けた野上弥生子……明治以来、海外旅行は日本人にとって憧れだった。特に世界各地で張り巡らされつつあった鉄道は人々の旅愁を誘ったのである。そこには今とは対照的にスローテンポな車窓風景があった――。紀行文をひもとき、もはや忘れてしまった贅沢な時間、近代旅行史を振り返る。

目次
まえがき
第一章 戦前日本の徒花・満州・東亜旅行圏
「いざ行かん、朝鮮へ、満州へ、支那へ」/漱石の満韓旅行珍道中記/是公自慢の豪華車室にて/日本最大の会社「満鉄」/大陸旅行への警鐘/一等船客の里見・志賀、三等の芙美子/白樺派が魅かれたハルピン/周遊券の誕生/伝説の名列車「あじあ」号/満州の観光地人気ランキング/満州その後の「片道切符の旅」/「ジャパン・ツーリスト・ビューロー」
第二章 航路よりも速い欧州への道・欧亜連絡ルート
時刻表に載った東京――欧州便/十九世紀に遡る歴史/シベリアへのリレー走者/“ゲージ”は面白い/芙美子、女一人で欧州へ/満州里のその先へ/利一の西洋コンプレックス/空しい架け橋/列車の等級
第三章 文人はみな華の都を目指す・フランス紀行篇
利一、マルセーユからパリを目指す/ルアーブルから上陸した荷風/「トラン・ブリュ:青列車」/パリから一時間、郊外の贅沢/戦時下、弥生子の落人日記/「避難船」と「交換船」
第四章 鉄道のパイオニア・イギリス紀行篇
スティーブンソンの蒸気機関車/旅行代理店の元祖「トマス・クック」/弥生子が見た英国の田舎/「オックスブリッジ」
第五章 海峡をはさんだ二都連絡路の歴史・英仏連絡ルート
駅馬車からトンネルまで従来の今昔/芙美子、女の目で見た海峡風景
第六章 河沿いの風光明媚・ドイツ紀行篇
空前絶後の豪華特急「ライン・ゴルト」/弥生子の河紀行
第七章 ルネッサンスの発信地・イタリー紀行篇
湘南電車も新幹線もイタリーがお手本/南北の境はフィレンツェ/「ナポリを見ずして死ぬことなかれ」
第八章 広大なる横断の試み・アメリカの鉄道篇
「九・一一」に重なる弥生子の摩天楼幻影/四二万キロに張り巡らされた鉄路/七ルートもあった北米大陸横断列車/戦争直前の車窓風景/荷風が目にした黄金期の列車/日本の私鉄の祖、インターアーバン
あとがき
主要参考文献

書誌情報

読み仮名 ブンゴウタチノタイリクオウダンテツドウ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 224ページ
ISBN 978-4-10-610281-3
C-CODE 0291
整理番号 281
ジャンル 鉄道
定価 770円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2012/03/30

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明治期にあった海外旅行ブーム「東亜旅行圏」

「ふらんすへ行きたしと思へども、あまりに遠し」――朔太郎の詩は戦前までの日本人が抱いた「洋行」への憧れを象徴していたといえましょう。でも、未だ海外渡航が一部の人以外、夢のまた夢だった明治末期、洋行とまではゆかないまでも、ある近隣諸国への海外旅行熱が一般の人にも盛んになっていたことがあったのをご存知でしょうか。
 いわく「東亜旅行圏」。日露戦争が終結した一九〇五年から、行く先も満州各地を始め、朝鮮、中国へと広がっていました。その背景には、政府と軍部による日露戦争の戦跡巡拝、豊富な資源見学といった、富国強兵を煽る国家戦略があり、満州旅行を大々的に奨励したことがありました。折りしも、満鉄による幹線鉄道が一斉に開通していった頃、列車旅は日本人の旅愁を誘い、観光旅行客が急速に増えていったのです。その中には、夏目漱石、里見とん、志賀直哉、あるいは林芙美子といった面々の姿もありました。好奇心旺盛な彼ら彼女らに、その車窓風景は一体どのように映ったのでしょうか……。
掲載:2008年09月25日

著者プロフィール

小島英俊

コジマ・ヒデトシ

1939(昭和14)年、東京生まれ。東京大学法学部卒業。三菱商事(株)で国内外勤務を経てサウディ石化室長を以て退職。(株)セ・デ・べ・ジャポン代表取締役。世界鉄道史や近代旅行史を趣味とする。著書に『流線形列車の時代―世界鉄道外史―』『「世界の鉄道」趣味の研究』。

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