ホーム > 書籍詳細:朝鮮人特攻隊―「日本人」として死んだ英霊たち―

20人の青年たちの苛酷すぎる運命――。歴史の狭間に埋もれていた「タブー」を掘り起こす。

朝鮮人特攻隊―「日本人」として死んだ英霊たち―

ベ・ヨンホン/著

748円(税込)

本の仕様

発売日:2009/12/17

読み仮名 チョウセンジントッコウタイニホンジントシテシンダエイレイタチ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書
判型 新潮新書
頁数 188ページ
ISBN 978-4-10-610342-1
C-CODE 0221
整理番号 342
ジャンル 日本史
定価 748円

第二次大戦末期、特攻隊の一員として日本軍に加わり、死んでいった朝鮮半島出身者たちがいた。その数およそ二十名。韓国という国が存在しなかった当時、半島出身者が「日本人」として生き、死んでいくのは当然のことだった。しかし、祖国独立後の反日的な世論の中で、彼らは「国賊」的存在としてタブー視されてきた。いったい彼らは、何のために死んでいったのだろうか。歴史の闇に埋もれた真実を掘り起こす。

著者プロフィール

ベ・ヨンホン ベ・ヨンホン

1955(昭和30)年東京生まれ。ジャーナリスト。神奈川大学法学部卒。AFP通信東京支局やAP通信ソウル支局のカメラマン、「サンデー毎日」記者などを経て独立。著書・訳書に『中朝国境をゆく』『朴正熙、最後の一日』などがある。

目次

まえがき
第一章 ある朝鮮人特攻隊員の死をめぐって
鹿児島訪問/口を濁す関係者たち/民族系エリート校/遺書に記された不可解な行動/特攻をせずに逃亡?/沖縄への着陸は出来たのか/特操出身の韓国人を訪ねる/「そっとしておいて」と語った遺族
第二章 親日派狩りであぶり出される「不都合な真実」
火付け役は盧武鉉大統領/386世代の天下/返り血を浴びた与党/「悪党の財産は没収されて当たり前」/糾弾された巨匠たち/国歌の作曲家まで!/自殺に追い込まれた親日派の巨頭/独立派から親日派に転向した文豪
第三章 「空への夢」に殉じた女性飛行士
血祭りにあげられた映画/親日から反日への展開/小泉元首相の祖父との関係/愛人スキャンダルの真相/日本に利用され、日本を利用し……/日本初の飛行操縦士
第四章 南方戦線の朝鮮人特攻隊員
植民地での志願制度/「半島の神鷲」松井伍長/神鷲は生きていた!/「騙されたようなもんだ」と語った近藤伍長/隊長機に同乗した林伍長/半分が高砂族だった薫空挺隊/薫空挺隊の朝鮮人下士官
第五章 沖縄戦線の朝鮮人特攻隊員
映画『ホタル』のモデル光山少尉/航空士官・高山昇/陸士五十六期生最後の参拝/沖縄戦に参加した朝鮮人航空隊員たちの名
第六章 特攻隊遺族が歩む隘路
B29に体当たり攻撃/六十年間放置された遺骨/「特攻死」を認めたくない遺族/特攻隊員は「民族反逆者」/親日的エリートの最期/生きていれば韓国空軍を創設/高山中尉の婚約者/桜の木の逸話
第七章 韓国空軍を作った日本軍人たち
韓国空軍初代参謀総長は日本軍大尉/日本軍の残党をかき集めて/空軍=空っぽの軍隊/「敵戦闘機を撃ち落としたことは一度もない」/金日成の首を取れ!/売国奴と英雄の間/現在の愛国者が未来の賊軍になる
あとがき
参考資料

インタビュー/対談/エッセイ

波 2010年1月号より 歴史の狭間に埋もれていた朝鮮人特攻隊員

ベ・ヨンホン

太平洋戦争末期、航空機による体当たり攻撃という悲劇的な任務を負わされた特攻隊員。敵艦船めがけ火だるまとなった一人一人の死に、国や家族を護るための悲壮な決意が込められていました。その中に、二十人近い朝鮮人特攻隊員の姿もありました。皇国軍人であると同時に被統治者でもあった彼らは、何のために、誰のために死ぬのかという、日本人以上に重い問いを負わされていました。
断片的に残された朝鮮人特攻隊員の足跡をたどると、自らの命を日本に捧げた潔さに、むしろ戸惑いさえ感じます。その死が潔いほど、逆に悲壮さが際立ち、彼らの存在を謎めいたものにしていたのです。三十五年に及んだ日本の植民地支配の最後になって、日本人としての死を選んだ朝鮮人特攻隊員たちは、時代が生み出した宿命的な存在だったのかもしれません。
日本の敗戦は、祖国に独立をもたらし、彼らに「親日派」という烙印を残しました。韓国では、親日派は売国奴と同義語で、悲劇的存在のはずの朝鮮人特攻隊員も、反民族行為を犯した者と考えられるようになったのです。宿命的な死を遂げた彼らの真意は、誰にも分からないし、理解しようとする人も現れませんでした。
親日派問題は韓国世論に根強く残る病のようなものです。国が滅んだのは親日派のためであり、独立後もその勢力が息づいているとして、ことあるごとに批判の対象になります。歴史の清算にこだわった盧武鉉政権時代は、まるで魔女狩りでもするかのように、過去の亡霊にすぎない親日派が吊るしあげられました。
沖縄で戦死した朝鮮人特攻隊員の遺族が、私にこう語ったことがあります。
「時代が変われば、現在の愛国者が未来の賊軍になることだってある」
独立後の韓国で、皇国日本への愛国的な行動が批判されるのは、やむを得ない現象です。英霊となった朝鮮人特攻隊員、そして残された韓国人遺族たちの苦悩は、今なお続いています。
しかし、朝鮮人特攻隊員の必死の体当たり攻撃は、必ずしも愛国心に裏付けられた行動ではありませんでした。反民族行為者でも救国の英雄でもない、一人の人間の尊厳をかけた命がけの行動だったはずです。
二〇一〇年は日韓併合から百年の節目に当たる年です。韓国では過去の歴史を教訓にした様々な行事が行われ、朝鮮人特攻隊員たちの死も再び注目されることになるでしょう。しかし、たとえ歴史の評価が変わっても、刻まれた事実は変わりません。日韓の歴史の狭間に埋もれてきた彼らの声に耳を傾け、歴史の真実を見据えて欲しいと思います。

(ベ・ヨンホン ジャーナリスト)

蘊蓄倉庫

映画『ホタル』のセリフを実際に発した軍人

 映画『ホタル』の中で、特攻隊員を演じた高倉健に、朝鮮半島出身の戦友・金山少尉が、「俺は天皇陛下のために死ぬのではない。朝鮮民族の誇りのために死ぬ。故郷にいる家族のために死ぬのだ」と告げる印象的な場面があります。
 このセリフを実際に発したとされる人物は、高山昇中尉という軍人でした。陸軍士官学校を卒業したエリートで、本名は崔貞根(チェ・ジョングン)と言いました。沖縄戦線で散った24歳の彼には日本人の婚約者がおり、その婚約者は生涯、彼のことを慕い続けたそうです。
掲載:2009年12月25日

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