茶―利休と今をつなぐ―
858円(税込)
発売日:2010/11/17
- 新書
茶の湯の怖さを、あなたはまだ知らない。利休の末裔、武者小路千家の若き異能茶人が語る。《内田樹氏感嘆!》
茶を「礼儀作法を学ぶもの」「花嫁修業のため」で片付けるのはもったいない。本来の茶の湯は、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の全領域を駆使する生活文化の総合芸術なのだ。なぜ戦国武将たちが茶に熱狂したのか。なぜ千利休は豊臣秀吉に睨まれたのか。なぜ茶碗を回さなくてはいけないのか。死屍累々の歴史、作法のロジック、道具の愉しみ――利休の末裔、武者小路千家の若き異才の茶人が語る、新しい茶の湯論がここに。
付録I 三千家の系譜
付録II 茶を学びたいあなたへ
書誌情報
読み仮名 | チャリキュウトイマヲツナグ |
---|---|
シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 240ページ |
ISBN | 978-4-10-610392-6 |
C-CODE | 0276 |
整理番号 | 392 |
ジャンル | 茶道 |
定価 | 858円 |
蘊蓄倉庫
茶は「闘茶」というギャンブルだった/社会の変革期にこそ流行るのが茶の湯/酒と茶のどちらが「ハイ」になるかの議論もあった/明治財界人のソサエティでは茶は必須の趣味/表千家、裏千家、武者小路千家の三千家の関係/利休は「侘び」とは言わなかった/秀吉の黄金の茶室の評価はいかに/漫画の『へうげもの』は案外事実に近い/茶を通して、普段話せない人とつながることができる →さあ、詳細は本書で!
担当編集者のひとこと
「茶」を知らずにいるなんて、もったいない。
とある雑誌の企画で、著者の千宗屋さんの茶事の末席を汚すことになりました。基本的な茶事は、炭手前、懐石、濃茶、薄茶、で構成され、四畳半の茶室に亭主一人、客五人ほどで行なわれるのですが、時間も手間もかかるため、部分的に行なわれる場合も多いようです。私が参加した際の茶事は、なんと5時間弱に及んだフルバージョン。大勢が濃茶や薄茶を順番にいただく、大茶会にしか参加したことがなかった私にとっては、驚きの連続でした。
何がいちばんの驚きだったか。それは、その道の方々には申し訳ない事ですが、茶事が「楽しかった」ことです。ずっと正座で、足が痛いのを我慢して、順番を間違えると睨まれそう……そんなイメージだったのに!?
答えはシンプルでした。本来の茶事の目的は、形式にはなく、参加者同士の距離を縮めるためのコミュニケーションだったのです。だから、「楽しい」。全員で炭の中の火を見つめ、美味しい懐石料理を共に食しつつお酒を楽しみ、凛とした空気の張りつめる場で濃茶をいただき、最後に薄茶で緊張を弛緩させていく――このメリハリを経ると、いつしか参加者同士が打ち解けていました。
「こんな面白いものを知らないのはもったいない」。そこから本書は始まりました。初心者の私の感想は、多くの方に通じるものだと思います。そうは言っても「順番を間違えると睨まれそう」? いやいや、そんな方にこそ「いいからだまされたと思って」と言葉を添えて、差し出したい一冊です。
2010/11/25
著者プロフィール
千宗屋
セン・ソウオク
1975(昭和50)年京都生まれ。本名は千方可(まさよし)。茶道三千家の一つ、武者小路千家15代次期家元として2003年、後嗣号「宗屋」を襲名。慶應義塾大学大学院修士課程修了(中世日本絵画史)。2008年、文化庁文化交流使に。茶道具のみならず古美術、現代アートにも造詣が深い。