
大本営参謀は戦後何と戦ったのか
880円(税込)
発売日:2010/12/17
- 新書
日本軍再建、吉田茂暗殺、トリプル・スパイ……。1945年、帝国軍人たちは新たな戦いを開始した。【CIA機密文書が示す驚愕の事実!】
大本営参謀たちにとって、敗戦は「戦いの終わり」を意味しなかった。彼らは戦後すぐに情報・工作の私的機関を設立し、インテリジェンス戦争に乗り出したのである。国防軍の再興を試みた者、マッカーサーの指示で「義勇軍」を作った者、そして吉田茂暗殺を企てた者……。五人の誇り高き帝国軍人は何を成し遂げようとしたのか。驚愕の事実がCIAファイルには記録されていた。機密文書から読み解く昭和裏面史。
そう考えたGHQは民主化に彼らの力を使うことにした。
しかし彼らの最大の目的は再軍備の主導権を握ることだった。
その裏で糸を引いていたのはマッカーサーだった。
その背後には再軍備にまつわる暗闘があった。
彼は「裏切り者」だったのか。それとも愛国者だったのか。
アメリカが手を焼き続けた男の失踪の裏には何があったのか。
年表
参考・引用文献
書誌情報
読み仮名 | ダイホンエイサンボウハセンゴナニトタタカッタノカ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 256ページ |
ISBN | 978-4-10-610400-8 |
C-CODE | 0221 |
整理番号 | 400 |
ジャンル | 日本史 |
定価 | 880円 |
蘊蓄倉庫
『大本営参謀は戦後何と戦ったのか』は、帝国陸軍のエリートたちが戦後何をしたかについて、CIA文書を元に解き明かした一冊です。「吉田茂暗殺計画」という物騒なものまで練られていたことが明かされています。ご存知の通り、計画はまったく実行に移されなかったのですが、それでもCIAはこの計画にかなり注目していました。そこには当時の政治情勢を巡る暗闘があったからです。その詳細はとてもここでは書ききれないので、本のほうでご覧ください。
担当編集者のひとこと
国防のために動いた人たち
『大本営参謀は戦後何と戦ったのか』では、主に5人の元エリート軍人を扱っています。河辺虎四郎、有末精三、服部卓四郎、辰巳栄一、辻政信。いずれも太平洋戦争で帝国陸軍において重要な地位にいた人たちです。
ということは当然、戦後は「戦争責任」を追及されかねない立場でした。にもかかわらず、彼らは戦犯とはならず、それどころか戦後早い時期からGHQなどと共同で仕事をすることになります。
占領する側からすれば、すべての元軍人を追放し、処罰していては治安維持も何もできません。有能な人材はある程度活かさざるを得なかったのです。
また、元軍人たちからすれば、GHQの資金や影響力を利用しながら、日本国の再建に力を尽くすという狙いがありました。実際に彼らは、警察予備隊や保安隊の創設に様々な形で関わっています。
著者は「あとがき」で、次のように述べています。
「彼らが戦後していたことを賛美したつもりも、貶めたつもりもない。だが、彼らが敗軍の将として無為に余生を過ごしていたなら、日本は現在の国防力すら持てなかった可能性があったと考える(略)
少なくとも、戦争放棄を自衛力放棄と履き違えて、なすべきことをなさず、今日の惨状を招いてしまったわれわれに(略)彼らを責める資格はないのではないか」 国防に関する政府の無策が露呈している今、先人たちが何をしようとしたのか、何ができて、何ができなかったのか、知っておくのに格好の一冊です。おそらく戦後史の見方が変わるはずです。
2010/12/25
著者プロフィール
有馬哲夫
アリマ・テツオ
1953(昭和28)年生まれ。早稲田大学社会科学総合学術院教授(公文書研究)。早稲田大学第一文学部卒業。東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得。2016年オックスフォード大学客員教授。著書に『原発・正力・CIA』『日本人はなぜ自虐的になったのか』など。