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これが、日本の未来なのか? 世界最大の階層社会で苦しむアメリカ人を描いた渾身のルポ。

オバマも救えないアメリカ

林壮一/著

770円(税込)

本の仕様

発売日:2011/06/17

読み仮名 オバマモスクエナイアメリカ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 206ページ
ISBN 978-4-10-610424-4
C-CODE 0236
整理番号 424
ジャンル 社会学、地理・地域研究
定価 770円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2011/12/23

有色人種と弱者の期待を一身に背負って大統領となったオバマ。しかし底辺の人々は救われないままだ。「あそこの住民は簡単に人を殺す」「黒人はいつだって虫けらのように扱われる」「オバマは現実が見えていない」――物乞い、失業者、移民から元世界チャンプ、メジャーリーガーまで、筆者は丹念に、重苦しい現実と格闘する人々の声を拾って歩く。世界最大の階層社会で苦しむアメリカ人を描ききった渾身のルポ。

著者プロフィール

林壮一 ハヤシ・ソウイチ

1969(昭和44)年埼玉県生まれ。東京経済大学在学中にボクシングのプロテストに合格するが、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経てノンフィクションライターとなる。1996~2010年、アメリカで取材を重ねる。著書に『マイノリティーの拳』『体験ルポ アメリカ問題児再生教室』等。

目次

プロローグ
1 オレもオバマに投票したよ――2人の教え子との対話
2 あそこの住民は簡単に人を殺す――最も危険な街WATTSを歩く
3 ここはゴーストタウンになりかかっている――スプリングスティーンが歌った街で
4 メキシコナンバーの車には近づくな――国境にて
5 黒人はいつだって虫けらのように扱われる――オスカー・グラント事件
6 祖父のように警官になろうと思う――黒人格闘家ヴァーノン・ホワイトの志
7 トロントに観光で来られるなら金持ちだ――カナダの移民たち
8 このままだとデトロイトは地獄になるよ――物乞いたちの生活
9 まずは高校を卒業させてやりたい――10代のホームレスを見守る人たち
10 オバマは希望を与えようとしないじゃないか――故郷・シカゴを歩く
11 オバマは理想主義者で、現実が見えていないよ――移民たちの明暗
12 政治家が何を話そうが、オレは全く興味ないね。
  あんまり人間を信用すると、痛い目に遭うよ――元世界チャンプの諦念
エピローグ

インタビュー/対談/エッセイ

波 2011年7月号より 救世主か徒花か

林壮一

来年は、アメリカ大統領選挙の年である。
現職を務めるバラク・オバマ(民主党)に対抗する共和党候補者は、いずれもインパクトが弱い。とはいえ、オバマにも大統領就任時の支持率はもはや無い。
2008年の大統領選挙の折、まさしく彗星のように登場し、ブームを巻き起こしたオバマ。この黒い肌の元弁護士は、類を見ないほど話術に長けていた。経済が破綻し、無益なイラク戦争が長々と続いていたアメリカ合衆国民にとって、オバマは救世主と映った。弱者救済を繰り返し謳ったオバマに、中流以下の市民は夢を見たのだ。その結果、彼は人種の壁を突き破って第44代アメリカ合衆国大統領の椅子に座る。
しかし夢は夢に過ぎず、アメリカ社会に大きな変化は見られなかった。日本の首相や政権党がコロコロ代わったところで国民の暮らしが向上しないように、オバマ政権に希望を感じたアメリカンも、目の前の現実に虚無感を覚えている人が多い。
オバマ大統領誕生直後から私は、思いつくままアメリカの底辺で生きる層にインタビューした。オバマの自宅があるイリノイ州シカゴで出会った40代の黒人は話した。
「オバマに投票したけれど、今は何の期待もしていない。己が潤い、自分の家族が高い教養を得られれば、それでいいって野郎さ」
男はホームレス・シェルターで暮らし、ダウンタウンを徘徊しては行き交う人にカネをせびっていた。ホームレスは続けた。
「オバマはシカゴのシェルターなんて見向きもしないじゃないか。仕事が無くて苦しんでいる層に希望を与えようとしないじゃないか!」
雇用機会を充実させ、国民全員に健康保険を与えることを公約としながら、なかなか実現できないオバマ政権に、ある者は絶望し、ある者は憤りを隠さない。
人口285万強の大都会、シカゴの高級住宅街の一角にオバマ邸はあった。6199スクエアの土地に、7つのバスルーム。まさしく勝者の証と呼べるような豪邸だ。24時間体制で厳戒な警備が敷かれており、近付くだけでも一苦労だった。
そんな富裕層エリアから遠くない場所に、ゲットーも広がっていた。現在、トップシンガーとして活躍するジェニファー・ハドソンが育った地域にも寄ってみた。ハドソンは成功を手に入れた直後に、肉親3人を銃殺という形で失っている。レンタカーで殺害現場付近を運転していた際、私はギャングに囲まれた。難癖をつけられ、カメラを奪われそうになった。
本書は、地べたで生きざるを得ない弱者たちの叫びと現実をクローズアップした1冊である。彼らの声にほんの少し、耳を澄ませてほしい。
オバマ政権とは、単なる徒花に過ぎなかったのだろうか。

(はやし・そういち ノンフィクションライター)

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