ホーム > 書籍詳細:リーダーシップ―胆力と大局観―

為政者の覚悟を問う。時に激しく、時に臆病に、危機にこそ積極策を、人事に情けは無用。

リーダーシップ―胆力と大局観―

山内昌之/著

748円(税込)

本の仕様

発売日:2011/10/15

読み仮名 リーダーシップタンリョクトタイキョクカン
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 191ページ
ISBN 978-4-10-610441-1
C-CODE 0231
整理番号 441
ジャンル ビジネス実用
定価 748円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2012/04/06

強いリーダーシップの不在が叫ばれて久しい。それは、目先の議論にばかり惑わされ、リーダーシップの本質を考えることを避けてきたツケに他ならない。では、いまリーダーにとって真に必要な能力とは何か。吉田松陰の歴史的思考法なのか、山口多聞のような危機に積極策をとる胆力なのか、リンカーンのような戦略的思考に基づく大局観なのか……。国家と国民を守るために必要な覚悟を説く、歴史家からの警世。

著者プロフィール

山内昌之 ヤマウチ・マサユキ

1947(昭和22)年札幌市生まれ。東京大学名誉教授。学術博士(東大)。国際関係史とイスラーム地域研究で、サントリー学芸賞、毎日出版文化賞、吉野作造賞、司馬遼太郎賞などを受賞。2006年、紫綬褒章。近著に『歴史の作法』『歴史のなかの未来』『幕末維新に学ぶ現在』など。

目次

はしがき――国家と国民を結ぶ政治家
第一部 リーダーの責任
 第一章 宰相の責任のあり方は不変

 第二章 危機に直面したリーダーとは
 政治家の自然災害処理
 明暦大火と保科正之
 安政大地震と堀田正睦
 リスボン大地震とカルヴァーリョ
 宰相の資質と課題
 第三章 変革期のリーダーシップ
 山岡鉄舟の赤心
 西郷隆盛の「正義」と「正道」
 「敬天愛人」の政治
 安藤信正の平常心
 福沢諭吉の「瘠我慢」
 勝海舟と榎本武揚の寡黙
 東海散士の会津魂
 大久保利通の為政清明
 第四章 歴史に学ぶ戦略的思考
 平和のリーダーシップ
 トゥキディデスのリアリズムと歴史の罠
 ローマ人の勇気と臆病
 源義経の機動力
 サラディンの騎士道精神
 リンカーンの決断
 クラウゼヴィッツとビスマルクの政治と戦争
 石原莞爾の見通す力
 毛沢東の詩的弁証法
 秋山兄弟と「アラビアのロレンス」の柔軟さ
 大山巌の「将に将たる器」
 過去は知の宝庫
第二部 偉人のリーダーシップ
 第五章 歴史的思考法をもつリーダー・吉田松陰
 すべて歴史の故事や偉人に学ぶ
 前向きに、悲観せず
 歴史的観察力と先駆性
 「空言」より「行事」
 第六章 危機に積極策をとる鋭将・山口多聞
 冷静と激情
 判断力と大局観
 闘魂と勇猛心
 責任感と出処進退
 仮定のミッドウェー
 第七章 悪のリーダーシップ・織田信長と松永弾正
 真の「梟雄」とは
 弾正の芸術性と先進性
 頼むべきは己のみ
第三部 民主党リーダーの置き土産
 第八章 アルキメデスの点を求めた鳩山由紀夫
 政治家と歴史家の共通項
 常識力と現実感覚
 直感力と洞察力
 運が尽きるのも「実力のうち」
 第九章 黒幕か僭主か、小沢一郎のリーダーシップ
 公然と姿を現わした「グレー・エミネンス」
 法や公正を守らない「現代の僭主」か
 原敬の清廉
 第一〇章 退却と責任回避の達人、菅直人
 国民守る気概
 官僚の声聞く謙虚さ
結び――リーダーの資質

あとがき

インタビュー/対談/エッセイ

波 2011年11月号より ノーベル平和賞とリーダーの条件

山内昌之

今年のノーベル平和賞は、イエメンのタワックル・カルマンら3人の女性に与えられた。今回の選考は、指導者の資質とリーダーシップの条件を考える上でも示唆に富んでいる。
「アラブの春」と通称される民主化の推進者らが平和賞に選ばれるのではないか。こうした噂は少し前から流れていた。実際に、イエメンの女性活動家が受賞すると、いかにもジェンダー論を重視する欧米人の嗜好らしいという印象を受けた。
しかし、女性の権利拡大が課題であるイスラーム世界での民主化と女権拡大を結びつけた地道な活動を評価した平和賞委員会の着眼も鋭いと感じた。それは、カルマンが男女を問わずリーダーとして必要な勇気ある先駆性と堂々とした胆力に恵まれていたからだ。
エジプトやチュニジアでアラブ民主化の先陣を切った者たちが受賞を逸したのは何故かと、訝しく思う人もいるはずだ。しかし両国での反政府潮流はあまりにも多様であり、一人にしぼるのに困難を感じたようだ。
これに反して、カルマンはエジプトやチュニジアで民主化運動が始まる以前の2007年から、イエメンで民主化と女権拡張のために活動していた。日本や欧米のように、何を語っても咎められることもなく、時には気楽な言説を垂れ流せる国ぶりとは違うのだ。独裁者の専制と性差の偏見が社会にゆきわたっている国で、粘り強く改革を求め平和デモを続けてきた女性のリーダーシップは評価に値する。
実際に、平和賞委員会は、彼女を「イエメンで非常に勇気のある女性」と讃えている。アラブの人びとは「春」のなかで、自由、法の支配、豊かさの三つを求めてきた。これは女性の権利拡大への要求と不可分の関係にある。この接点に彼女がいたということだろう。
2003年にもイランの人権活動家シリン・エバディがノーベル平和賞を受賞している。残念ながら、彼女の活動はイラン社会では孤立しがちであり、国内では衝撃も広がらなかった。
カルマン受賞の背後に、イエメンの民主化運動と「アラブの春」という大きなうねりが広がっている点は、シリン・エバディの時と違うところだ。カルマンの活動への評価が孤立せず、アラブ全体に波及するとすれば、彼女は21世紀のアラブ民主化と女権拡大の象徴的なリーダーとして活躍する可能性がないとはいえない。
どのリーダーでも歴史に名を残すには、その人間が初めて独創的な仕事に手を染めたという先駆性と大局観、あらゆる圧迫や偏見をはねのける胆力と勇気が必要とされる。この意味で、『リーダーシップ』という書物を著した者として、副題の「胆力と大局観」を実地に示す女性が私の専門領域の中東イスラーム世界から現れたことを心から喜んでいる。

(やまうち・まさゆき 東京大学大学院教授)

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