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明治めちゃくちゃ物語 勝海舟の腹芸

野口武彦/著

814円(税込)

発売日:2012/02/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

「政権交代」で大混乱! 教科書にのらない「明治維新」の真実。

維新の志士はみな傑物、明治は華やかな新時代――というのは教科書の中の幻想。デタラメな新政府と死に損ないの旧幕府がせめぎあい、実情はまさに大混乱! 家来を捨てて逃げ出す慶喜、奸計を巡らす岩倉具視、世間知らずの公卿たち……。その間を取り持って勝海舟は孤軍奮闘! 敗者は非情な淘汰で歴史から消え、勝者は好き勝手に国を創る。最終決戦・戊辰戦争を軸に、「めちゃくちゃ」な政権交代劇を描く。

目次
まえがき
第一部 明治回天録
その一――明治のメの字はめちゃくちゃのメ
その二――江戸湾の海戦
その三――討薩の表
その四――鳥羽街道の開戦
その五――伏見奉行所の攻防
その六――酒樽台場
その七――千両松の血戦
その八――裏切りの砲撃
その九――慶喜逃亡
その十――神戸事件
その十一――堺事件
その十二――太政官札
その十三――歩兵隊反乱
その十四――明治天皇の国際デビュー
その十五――赤報隊の悲劇
その十六――高松隊始末
その十七――衝鋒隊の奮戦
その十八――五箇条の御誓文
その十九――トコトンヤレナ
その二十――江戸無血開城
その二十一――川路聖謨切腹
その二十二――廃仏毀釈
その二十三――大鳥脱走隊の活躍
その二十四――近藤勇斬首
第二部 明治滅法録
その一――歴史の回り舞台
その二――小栗上野斬首
その三――会津藩追討
その四――官軍は官賊なり
その五――世良参謀殺害
その六――奥羽列藩同盟
その七――上野彰義隊玉砕
その八――徳川家処分
その九――士族の商法
その十――榎本艦隊脱走
その十一――仙台藩降伏
その十二――母成峠の戦闘
その十三――三斗小屋の惨劇
その十四――武装中立の悲劇
その十五――会津落城
その十六――水戸藩血風録
その十七――蝦夷共和国の夢
その十八――東京奠都
その十九――宮古湾の海戦
その二十――土方歳三の最期
その二十一――箱館湾の海戦
その二十二――明治維新の収支決算
主要人物一覧
年表

書誌情報

読み仮名 メイジメチャクチャモノガタリカツカイシュウノハラゲイ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 256ページ
ISBN 978-4-10-610455-8
C-CODE 0221
整理番号 455
ジャンル 日本史
定価 814円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2012/08/17

蘊蓄倉庫

もともと首都は大阪だった

 明治新政府の首都はなぜ京都でなく江戸に置かれたのでしょう? よくよく考えてみれば、天皇は京都御所にいましたし、江戸は徳川家のお膝元です。
 実は当初、京都に佐幕派の残党や宮廷側の人間が多かったため、しがらみのない新天地に遷都しようと考え、大阪が候補にあがっていました。京都と近く商業も発展しているとして、「浪華遷都」案が着々と進行していたのです。
 ところが京都人は大反対! 「都が移るなんて許さない」と騒がれ、首都移転計画は頓挫しかけます。そこで浮上したのが「江戸」プラン。「北海道をいれれば江戸が日本の真ん中」「大阪は土地も港も道も狭い」「江戸はこのままだと荒涼してしまう」などの利点も加味されて、新政府は「よし、江戸に遷都しよう!」とひそかに決定します。
 しかし遷都がバレては、京都人にまた騒がれます。そこで「首都を二つ置く」とごまかし、地名も「東側の京」という意味で「東京」としました。天皇は、あくまで「関東への行幸」という名目で江戸城へ連れていく。そうやってごまかしながら、東京に首都機能をすべて移転し、実質的な首都としてしまったのです。
掲載:2012年2月24日

担当編集者のひとこと

教科書にのっていない! 明治維新の真実

 政治家は明治維新がやたらと好きなようです。勝手に自分と維新の志士を重ねあわせたり、自身の政策を「維新」と呼びたがります。
 目新しいところでは大阪市の橋下市長がその一人。「大阪維新の会」を立ち上げ、改革案を坂本龍馬の「船中八策」になぞらえています。過去を振り返れば、離党する際に「坂本龍馬をやりたい」と言って失笑を買った鳩山邦夫、龍馬の「日本を洗濯致し申し候」から議員連合「せんたく」を立ち上げた野田総理なんかもその一人です。
 明治維新には華やかで革新的なイメージがあり、政治家もその威を借りたいのでしょう。維新を描いた小説やドラマは人気ですし、教科書には近代の幕開けだと書かれています。
 しかし、幕末研究の第一人者・野口武彦氏はこうした歴史観に異を唱え、本書を記しました。「もうそろそろ『歴史そのまま』が書かれてよい頃だろう」――幕末から明治時代への移行期、それは「維新」などと程遠い、無法・無秩序の大混乱だったのです。
 家来を見捨てて逃げた将軍、新政府に乗り換える幕臣、浮世離れした公卿、奸計をめぐらす維新の志士……。その政権交代劇は、政治家が憧れる「維新」とは程遠く、むしろ2009年の民主党の政権交代とよく似ています。世間知らずの民主党議員や突然逃げ出す首相、未練がましい自民党議員などと似たような面々は150年前からいたようです。いつの世も政権交代はうまくいかない。本書からはそんな政治の本質が見えてきます。

2012/02/24

著者プロフィール

野口武彦

ノグチ・タケヒコ

1937(昭和12)年東京生まれ。文芸評論家。早稲田大学文学部卒業。東京大学大学院博士課程中退。神戸大学文学部教授を退官後、著述に専念する。日本文学・日本思想史専攻。著書に『大江戸曲者列伝』『幕末バトル・ロワイヤル』『幕末気分』『幕府歩兵隊』など。

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