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無力 MURIKI

五木寛之/著

748円(税込)

発売日:2013/04/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

さらば「力」よ! 末世を生き抜く究極の人間論。

ついに「力」と決別する時がきた。自力か他力か、人間か自然か、心か体か、生か死か――あらゆる価値観が揺らぎ、下降してゆくこの国で、私たちはどういう姿勢でこれからを生きていけばいいのか。絶対他力を説いた親鸞、楕円の思想を唱えた花田清輝、流民にたどる文化の源流、今日一日を生きる養生の実技、変容する死のかたち……。深化し続ける人間観の最終到達地を示す全十一章。

目次
はじめに
第一章 信と不信のあいだを生きる
「古京はすでに荒れて、新都はいまだ成らず。世の中浮き立ちて、人の心もをさまらず」と「方丈記」はいう。あらゆる価値観がゆらぐ時代をどうとらえるか。
第二章 ブレつづけてこそ人間と覚悟する
しばしば人は「ブレない」強さを讃える。だが混迷の時代、はたしてそれは正しいか。名僧から宗教の開祖まで、年齢とともに揺れる思想について考える。
第三章 悩みの天才・親鸞という生き方
人間は悪を抱えている。それをかくも徹底的に考えぬいた者がいるだろうか。「非僧非俗」の「愚禿」と称し、臨終を待たずして往生するという境地とは。
第四章 幻想的な認識にすがらず、明らかに究める
何事にも流行があり、時代には必ず盛衰がある。下りゆく時代に大切なのは、無力感におぼれることなく、優柔不断に動きつづけることではないか。
第五章 慈悲の心で苦を癒やせるか
つながりが連呼されている。しかし、悲しみや苦しみにあえぐ人々を励ますよりも、慈(マイトリー)と悲(カルナー)の本義に立ち返る必要があるのではないか。
第六章 人心と社会を動かす宗教、音楽
宮沢賢治はなぜ現世改革の熱に駆られたか。あの戦争でなぜ多くの人が玉砕できたのか。宗教と音楽の二つの側面から、人間の感情と行動について考える。
第七章 転換期には「楕円の思想」で中庸を行く
ルネサンス以来の人間中心主義と近代合理主義を問い直さなくてはならない。花田清輝が説いた「楕円の思想」にみる、中庸という深い智慧とは。
第八章 日本的心性を抱いて生きる
数十年に一度は大災害に見舞われる。この国で日本人はどのような心性と文化を生み出してきたか。「わび、さび」の源流にさかのぼり、その意義を考える。
第九章 それぞれの運と養生の道
人生には才能もあれば努力もある。そして、あらがえない時代の流れもついて回る。今日一日を生きるための養生の技法を通して、無常とどう向き合うか。
第十章 死をめぐる思想的大転換点に立って
時代の主旋律は「生」から「死」へと移ろうとしている。しかし、それは自然な流れなのだ。死生観をめぐる長い歴史をふまえ、人間の逝き時を見つめる。
第十一章 無力の思想で荒野をゆく
絆に幻想を抱かない。絶望も希望も虚妄であることは同じである。自力でも、他力でもない、第三の道――末世の荒野を人はどう歩んでいけばいいのか。
あとがき

書誌情報

読み仮名 ムリキ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-610514-2
C-CODE 0210
整理番号 514
ジャンル 文学賞受賞作家、哲学・思想
定価 748円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2013/10/18

著者プロフィール

五木寛之

イツキ・ヒロユキ

1932(昭和7)年、福岡県生れ。1947年に北朝鮮より引き揚げ。早稲田大学文学部ロシア文学科に学ぶ。1966年「さらばモスクワ愚連隊」で小説現代新人賞、1967年「蒼ざめた馬を見よ」で直木賞、1976年『青春の門』で吉川英治文学賞を受賞。著書は『朱鷺の墓』『戒厳令の夜』『風の王国』『風に吹かれて』『親鸞』『大河の一滴』『他力』『孤独のすすめ』『マサカの時代』『こころの散歩』『背進の思想』『捨てない生きかた』など多数。バック『かもめのジョナサン』など訳書もある。

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