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人間の浅知恵

徳岡孝夫/著

814円(税込)

発売日:2013/08/10

  • 新書
  • 電子書籍あり

人は歴史に学ばない。当代随一の名文家による辛口コラムの集大成。

独裁者の私利私欲は時に人間くさく、庶民の振りかざす正義は時に傍迷惑なものとなる。歴史に深慮があったとしても、人間の浅知恵はそれを損なわずにはいられない。ベトナムの戦野を駆け、現代史を彩る指導者たちと渡り合ってきたジャーナリストにして希代の名文家が、透徹した視線で世界を見つめる。偽善の衣をまとっていても、著名な役者と名も無き衆生が織りなす歴史のタペストリーは鮮やかで美しい。

目次
まえがき
第一章 かくも人間的な独裁者
スカルノ夫人が見たスハルト/革命を「保守」したカストロの退場/「権力とは力なり」と信ずる人々/むき出しの私利私欲が「面白い物語」を生む/古都ダマスクスの記憶
第二章 忘れがたき人々
エリザベス女王という光明/角栄発言をケネディに「裏取り」/寡黙なイタリア人/「同級生」アームストロング/シアヌークという「おめでたき人」/新ローマ教皇の清貧/サッチャーの揺るぎなき信念
第三章 アメリカの素顔
アメリカン・ドリームのオバマに一抹の不安/ウォール街で勝負!/ビッグ・スリーは救えるか/アメリカ大統領選「草の根」の声/たかが「ウソつけ」でなぜ怒る?
第四章 中国4000年の詭弁
聖火エベレスト越えの愚行/チベットを手放さない中国の「二つの理由」/空母という「オモチャ」/列車事故の苦しい言い訳/怒る文化と謝る文化/賄賂が「制度」となった国/やさしいオジサンと怖いオジサン
第五章 アジアの魑魅魍魎
「王朝」に治められたい人々/麻薬と武器と宝石/死刑の作法/オサマとオバマ/大洪水でもマイペンライ/オリエンタル・スマイルの裏側/恥を知れ、インド
第六章 一筋縄では行かぬ
キプロスの共存、チベットの分断/ハイチでのバカンスは不道徳か/見られずに散っていく桜/年寄りは持ってるなあ/文明の毒/キュリー夫人とラジウムブーム/女性に胸がある限り……/遺書は事実無垢なのか?
第七章 極北の人間性
香水の匂い、シャワー、うさぎのダンス/世界同時革命とはこのことか/満艦飾のおむつは今いずこ/救出された船員とダライ・ラマ/自爆テロを教えたのは日本人/買いたい物なんてある?/意外なベビーブーム/チャーチル時代の体罰
第八章 なに言うとんねん、このスカタン!
橋本くん、先輩として言わせてもらう/英語ペラペラになって何を喋るの?/アホなこと、やめとけ/歴史の面白い癖/鳩山由紀夫と三島由紀夫
初出時タイトル一覧

書誌情報

読み仮名 ニンゲンノアサヂエ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 240ページ
ISBN 978-4-10-610531-9
C-CODE 0231
整理番号 531
ジャンル エッセー・随筆、ノンフィクション
定価 814円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2014/02/21

蘊蓄倉庫

三島由紀夫と鳩山由紀夫

『人間の浅知恵』の著者、徳岡孝夫さんは、市ヶ谷に乗り込む前の三島由紀夫が「檄」を託した二人のジャーナリストの一人です。新潮学芸賞を受賞した『五衰の人─三島由紀夫私記─』という著書もあります。その三島由紀夫と、元総理大臣の鳩山由紀夫の間には、「由紀夫」という名前(三島の本名は平岡公威ですが)以外に、奇妙な共通点があります。詳しくは本書収録の「三島由紀夫と鳩山由紀夫」をご一読ください。
掲載:2013年8月23日

担当編集者のひとこと

当代随一の名文家の文章をお楽しみ下さい

『人間の浅知恵』は、新潮社の「ウェブ・フォーサイト」に連載されているコラム「クオ・ヴァディス」を集めて編んだ本です。
 私は新入社員の頃、「ウェブ・フォーサイト」の前身である雑誌「フォーサイト」の編集部で働いていました。徳岡さんのコラムは、1990年の「フォーサイト」創刊から続く人気連載です。校了期間になると、200字詰めのペラ紙に特徴のある手書き文字が書き付けられた徳岡さんの原稿がファクスを介して届き、ほどなくして鳴る編集部の電話を取ると「トクオカです」と「ト」に強調のある関西弁の声が響いてきたのをよく覚えています。
 当時の私は、徳岡さんの連載を担当していたわけではありませんが、門前の小僧よろしく届いた原稿を盗み読みしていました。実は、初めから共感しながら読んでいたわけではありません。かつて、「山本夏彦の文章に共感するようになったら立派な大人(あるいはオヤジ)」という言い方がありましたが、徳岡さんの文章にも似たようなところがあります。私の場合も、毎月読んでいる徳岡さんの文章のリズムに共鳴するようになったのは、ある程度仕事をするようになってからです。子供には良さが分かりにくいのです。
 徳岡さんは、戦場ジャーナリストとして人の生き死にを見続けた経験、関西人らしいホンネ志向で、むき出しの真実をさらりと言い当てる。しかし、真実を「どれくらいむくか」にはその人なりの人間性が問われますし、「関西人らしいホンネ志向」も行き過ぎると下品になる(それこそ徳岡さんのお生まれになった街の市長さんのように)。「さらりと」言うには技術がいるのです。それを可能にしているのが、旧制高校世代の圧倒的な教養と、カトリック信仰に裏打ちされた人間愛です。徳岡さんの姿勢には、己を含めた愚かな人間を愚かなままで肯定しているようなところがあり、そこに独特の魅力があります。
 後続の世代が逆立ちしても書けない品位のある文章を、一人でも多くの方に味わって頂きたいと思います。

2013/08/23

著者プロフィール

徳岡孝夫

トクオカ・タカオ

1930(昭和5)年、大阪生れ。毎日新聞社社会部、『サンデー毎日』、『英文毎日』の各記者を務め、1997(平成9)年に『五衰の人―三島由紀夫私記』で新潮学芸賞を受賞。著書に『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』、訳書に『第三の波』(A・トフラー)『日本文学史』(D・キーン)など。

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