人間の浅知恵
814円(税込)
発売日:2013/08/10
- 新書
- 電子書籍あり
人は歴史に学ばない。当代随一の名文家による辛口コラムの集大成。
独裁者の私利私欲は時に人間くさく、庶民の振りかざす正義は時に傍迷惑なものとなる。歴史に深慮があったとしても、人間の浅知恵はそれを損なわずにはいられない。ベトナムの戦野を駆け、現代史を彩る指導者たちと渡り合ってきたジャーナリストにして希代の名文家が、透徹した視線で世界を見つめる。偽善の衣をまとっていても、著名な役者と名も無き衆生が織りなす歴史のタペストリーは鮮やかで美しい。
書誌情報
読み仮名 | ニンゲンノアサヂエ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 240ページ |
ISBN | 978-4-10-610531-9 |
C-CODE | 0231 |
整理番号 | 531 |
ジャンル | エッセー・随筆、ノンフィクション |
定価 | 814円 |
電子書籍 価格 | 660円 |
電子書籍 配信開始日 | 2014/02/21 |
蘊蓄倉庫
『人間の浅知恵』の著者、徳岡孝夫さんは、市ヶ谷に乗り込む前の三島由紀夫が「檄」を託した二人のジャーナリストの一人です。新潮学芸賞を受賞した『五衰の人─三島由紀夫私記─』という著書もあります。その三島由紀夫と、元総理大臣の鳩山由紀夫の間には、「由紀夫」という名前(三島の本名は平岡公威ですが)以外に、奇妙な共通点があります。詳しくは本書収録の「三島由紀夫と鳩山由紀夫」をご一読ください。
担当編集者のひとこと
当代随一の名文家の文章をお楽しみ下さい
『人間の浅知恵』は、新潮社の「ウェブ・フォーサイト」に連載されているコラム「クオ・ヴァディス」を集めて編んだ本です。
私は新入社員の頃、「ウェブ・フォーサイト」の前身である雑誌「フォーサイト」の編集部で働いていました。徳岡さんのコラムは、1990年の「フォーサイト」創刊から続く人気連載です。校了期間になると、200字詰めのペラ紙に特徴のある手書き文字が書き付けられた徳岡さんの原稿がファクスを介して届き、ほどなくして鳴る編集部の電話を取ると「トクオカです」と「ト」に強調のある関西弁の声が響いてきたのをよく覚えています。
当時の私は、徳岡さんの連載を担当していたわけではありませんが、門前の小僧よろしく届いた原稿を盗み読みしていました。実は、初めから共感しながら読んでいたわけではありません。かつて、「山本夏彦の文章に共感するようになったら立派な大人(あるいはオヤジ)」という言い方がありましたが、徳岡さんの文章にも似たようなところがあります。私の場合も、毎月読んでいる徳岡さんの文章のリズムに共鳴するようになったのは、ある程度仕事をするようになってからです。子供には良さが分かりにくいのです。
徳岡さんは、戦場ジャーナリストとして人の生き死にを見続けた経験、関西人らしいホンネ志向で、むき出しの真実をさらりと言い当てる。しかし、真実を「どれくらいむくか」にはその人なりの人間性が問われますし、「関西人らしいホンネ志向」も行き過ぎると下品になる(それこそ徳岡さんのお生まれになった街の市長さんのように)。「さらりと」言うには技術がいるのです。それを可能にしているのが、旧制高校世代の圧倒的な教養と、カトリック信仰に裏打ちされた人間愛です。徳岡さんの姿勢には、己を含めた愚かな人間を愚かなままで肯定しているようなところがあり、そこに独特の魅力があります。
後続の世代が逆立ちしても書けない品位のある文章を、一人でも多くの方に味わって頂きたいと思います。
2013/08/23
著者プロフィール
徳岡孝夫
トクオカ・タカオ
1930(昭和5)年、大阪生れ。毎日新聞社社会部、『サンデー毎日』、『英文毎日』の各記者を務め、1997(平成9)年に『五衰の人―三島由紀夫私記』で新潮学芸賞を受賞。著書に『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』、訳書に『第三の波』(A・トフラー)『日本文学史』(D・キーン)など。