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国家の成熟

榊原英資/著

748円(税込)

発売日:2013/09/14

書誌情報

読み仮名 コッカノセイジュク
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 188ページ
ISBN 978-4-10-610535-7
C-CODE 0233
整理番号 535
ジャンル ノンフィクション
定価 748円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2014/03/21

「成長幻想」と訣別せよ! 世界史的展望を踏まえた渾身の日本論。

先進国経済はすでに充分に成熟しており、急成長はもはや不可能である。デフレは「問題」というよりも、成長がたどり着いた必然の結果なのだ。成長幻想と訣別し、「成熟」という尺度でみれば、むしろ日本こそ世界ナンバーワンの先進国である。この強みを生かし、成熟の果実を広く国民が共有できるようになれば、日本は再び輝きを取り戻せる──。異色の元官僚が、世界史的展望も踏まえて放つ渾身の日本論。

目次
まえがき
第一章 「成長の時代」はもう終わった
日本はすでに「世界一豊かな国」である/格差も少ない/デフレは先進国共通の現象
第二章 円安よりも円高を
円安は本当に望ましいのか/円高の進行と経済成長はパラレル/食糧、エネルギー価格は上昇トレンド/実質実効為替レートでは円高ではない/日米には常に二%のインフレ格差/輸出と設備投資が日本経済を支えてきたが……/いずれは経常収支の赤字も
第三章 もはや「貿易立国」には戻れない
減り続ける製造業就業者/競争力は弱体化する?/「輸出基地」から「市場」に変わった中国
第四章 TPPより東アジアの経済統合を
TPPの五つの特徴/二四の作業部会/反対する必要はないが、急ぐ必要もない/アメリカやオーストラリアの方が必死/日本の輸出の半分以上はアジア向け/アジアが再び世界経済の中心に/政治的にはアメリカと、経済的には中国と/「リオリエント」の時代/中国とインドの成長率逆転も/長期的には東アジアより南アジア/インドの厚いエリート層
第五章 「大きな政府」を恐れるな
人口減のもたらす問題/モデルとするなら欧州諸国を/「大きな政府」を恐れるな/財政規模も公務員数も先進国最小/フランスの社会保障の充実/子育て世帯への優遇策/出産費用もほとんどかからない/子供を預けることに対する意識の違い/日本も「高福祉・高負担」を目指せ/家族手当や教育支援は「経済活性化策」/男性が育児や家事に参加
第六章 成熟社会のリーダー像
「プロジェクトX」から「プロフェッショナル」へ/中産階級の二極分化/貧困大国アメリカ/日本にとって特に厳しい変化/平等主義の緩やかな解体/格差の是正は国の役割/信頼に足るリーダー層が必要/日本の政治家は「素人」がほとんど/キャリアとノンキャリア/政治を「家業」にするなかれ/ゆとりという名の悪平等/戦前にはあったエリート育成の視点/次世代リーダー養成塾/学校はすべて文科省の規制の下に/教員免許制度は廃止を/学校設置基準も緩和を/英語教育の問題点/青とブルーは意味が違う/留学生の減少/ディベート能力を上げよ/文部卿、大木喬任の見識/公平な試験で選ばれたエリート/官僚たちの夏
第七章 レッツ・エンジョイ・ジャパン!
「成熟社会」は「停滞した社会」ではない/森と水に恵まれた国/稲作漁撈文明と畑作牧畜文明/海は世界第六位の広さ/観光業には伸びる余地が大あり/世界一安全な国/世界一健康な国民/「成熟」という点では日本が一番/欧州並みの長期バカンスを検討せよ

蘊蓄倉庫

21世紀に人口がいちばん増える国

 経済が成熟した先進国は軒並み人口の停滞に見舞われていますが、これから成長のステージに上がろうという国々では猛烈な人口増加が予想されています。2011年の国連の予測推計によると、2100年に世界最大の人口を擁する国はインドで、2010年の12億2500万人から15億5100万にまで増加するとのこと。
 しかし、「増加率」に注目すると、もっとすごい国があります。例えばタンザニアは2010年の人口4500万人が2100年には3億1600万人になるとされていて、その増加率はなんと600パーセントを超えます。ちなみに2100年時点の日本の予測人口は9100万人でタンザニアの3分の1以下。あくまで予測ですが、先進国の「成熟」と途上国の「成長」の差が際立つデータではあります。
掲載:2013年9月25日

担当編集者のひとこと

「ありのままの日本」の魅力

 本書は、昨年6月に刊行された『財務省』に続く、榊原英資さんの二冊目の新潮新書。今度のテーマは「国家論」です。
 読者の中には、早口で時折「カカカッ」と笑いながら話す榊原さんの姿をテレビなどでご覧になった方もおられるでしょう。私がいいなと思うのは榊原さんのこの明るさ、ご本人が醸し出す楽しそうな雰囲気です。日本の知識人は悲観論が好きですが、榊原さんは悲観論を持てあそぶことなく、いつも日本にできることを具体的に考え、必要ならばそれを外国に対し主張し続けてもいます。
 実際、「成熟」という視点で見れば、日本ほど進んだ国はありません。先進国で最も平均寿命が長く、肥満率も最低の健康な国民。低い犯罪率と落ち着いた社会。水と緑に恵まれた豊穣な大地。健康でおいしい日本食。長い歴史が培った独特の文化……。世界から見たら、相当に恵まれた国であることは間違いないでしょう。近年、湾岸の産油国が世界有数の金持ち国家に成長しましたが、カネで買えるものを買いつくした後の彼らは、欧米の美術館や大学を呼び寄せて「文化国家」の体裁を整えるのに必死になっています。いくらおカネがあっても、文化や風土を根付かせるのは容易ではない。その意味で、「おカネで買えない」資産に恵まれた「ありのままの姿」をよく見直せば、日本が極めて魅力的な国であることは明らかです。
 榊原さんは言います。この豊かな成熟した国家を維持し、その魅力に磨きをかけていけば、私たちは再び「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言える国を作れる、と。
 良薬口に苦し。榊原さんの提言は、耳あたりのよいものばかりではありません。この成熟国家を維持していくには財政の問題と向き合わねばならず、そのためには消費税率は20%以上が必要とおっしゃっています。それでも、「成熟の果実」を広く国民が享受し続けていくためには、それが最善の方法である、と。
 本書で提示されているのは「アベノミクス」とはだいぶ違った国家モデルですが、日本の行く末を考えるための、よい思考材料になることは間違いありません。

2013/09/25

著者プロフィール

榊原英資

サカキバラ・エイスケ

1941(昭和16)年東京都生まれ。青山学院大学教授。財団法人インド経済研究所理事長。東京大学経済学部卒。大蔵省に入省し、国際金融局長、財務官を歴任。1999年に退官後、慶應義塾大学教授、早稲田大学教授を経て現職。経済学博士(ミシガン大学)。著書に『財務省』など。

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