
国家の成熟
748円(税込)
発売日:2013/09/14
- 新書
- 電子書籍あり
「成長幻想」と訣別せよ! 世界史的展望を踏まえた渾身の日本論。
先進国経済はすでに充分に成熟しており、急成長はもはや不可能である。デフレは「問題」というよりも、成長がたどり着いた必然の結果なのだ。成長幻想と訣別し、「成熟」という尺度でみれば、むしろ日本こそ世界ナンバーワンの先進国である。この強みを生かし、成熟の果実を広く国民が共有できるようになれば、日本は再び輝きを取り戻せる──。異色の元官僚が、世界史的展望も踏まえて放つ渾身の日本論。
書誌情報
読み仮名 | コッカノセイジュク |
---|---|
シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 192ページ |
ISBN | 978-4-10-610535-7 |
C-CODE | 0233 |
整理番号 | 535 |
ジャンル | ノンフィクション |
定価 | 748円 |
電子書籍 価格 | 660円 |
電子書籍 配信開始日 | 2014/03/21 |
蘊蓄倉庫
経済が成熟した先進国は軒並み人口の停滞に見舞われていますが、これから成長のステージに上がろうという国々では猛烈な人口増加が予想されています。2011年の国連の予測推計によると、2100年に世界最大の人口を擁する国はインドで、2010年の12億2500万人から15億5100万にまで増加するとのこと。
しかし、「増加率」に注目すると、もっとすごい国があります。例えばタンザニアは2010年の人口4500万人が2100年には3億1600万人になるとされていて、その増加率はなんと600パーセントを超えます。ちなみに2100年時点の日本の予測人口は9100万人でタンザニアの3分の1以下。あくまで予測ですが、先進国の「成熟」と途上国の「成長」の差が際立つデータではあります。
担当編集者のひとこと
「ありのままの日本」の魅力
本書は、昨年6月に刊行された『財務省』に続く、榊原英資さんの二冊目の新潮新書。今度のテーマは「国家論」です。
読者の中には、早口で時折「カカカッ」と笑いながら話す榊原さんの姿をテレビなどでご覧になった方もおられるでしょう。私がいいなと思うのは榊原さんのこの明るさ、ご本人が醸し出す楽しそうな雰囲気です。日本の知識人は悲観論が好きですが、榊原さんは悲観論を持てあそぶことなく、いつも日本にできることを具体的に考え、必要ならばそれを外国に対し主張し続けてもいます。
実際、「成熟」という視点で見れば、日本ほど進んだ国はありません。先進国で最も平均寿命が長く、肥満率も最低の健康な国民。低い犯罪率と落ち着いた社会。水と緑に恵まれた豊穣な大地。健康でおいしい日本食。長い歴史が培った独特の文化……。世界から見たら、相当に恵まれた国であることは間違いないでしょう。近年、湾岸の産油国が世界有数の金持ち国家に成長しましたが、カネで買えるものを買いつくした後の彼らは、欧米の美術館や大学を呼び寄せて「文化国家」の体裁を整えるのに必死になっています。いくらおカネがあっても、文化や風土を根付かせるのは容易ではない。その意味で、「おカネで買えない」資産に恵まれた「ありのままの姿」をよく見直せば、日本が極めて魅力的な国であることは明らかです。
榊原さんは言います。この豊かな成熟した国家を維持し、その魅力に磨きをかけていけば、私たちは再び「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言える国を作れる、と。
良薬口に苦し。榊原さんの提言は、耳あたりのよいものばかりではありません。この成熟国家を維持していくには財政の問題と向き合わねばならず、そのためには消費税率は20%以上が必要とおっしゃっています。それでも、「成熟の果実」を広く国民が享受し続けていくためには、それが最善の方法である、と。
本書で提示されているのは「アベノミクス」とはだいぶ違った国家モデルですが、日本の行く末を考えるための、よい思考材料になることは間違いありません。
2013/09/25
著者プロフィール
榊原英資
サカキバラ・エイスケ
1941(昭和16)年東京都生まれ。青山学院大学教授。財団法人インド経済研究所理事長。東京大学経済学部卒。大蔵省に入省し、国際金融局長、財務官を歴任。1999年に退官後、慶應義塾大学教授、早稲田大学教授を経て現職。経済学博士(ミシガン大学)。著書に『財務省』など。