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4割は打てる!

小野俊哉/著

748円(税込)

発売日:2014/03/15

  • 新書
  • 電子書籍あり

【▲右投手に強い ▲「俊足の好打者」より「鈍足の長距離砲」 ▲安打よりも四球】超絶的データ分析から見えてくる「夢の4割」の現実性。

バース(・389)、イチロー(・387)、内川(・378)……。「あと少し」まで行った打者は何人かいるが、戦後プロ野球で「夢の4割打者」は誕生していない。しかし、日米の歴代ヒットメーカーの成績を徹底調査すると、決して不可能な数字ではないことが分かってくる。「俊足」は絶対条件ではなく、キーポイントは「対右投手」「四球」「固め打ち」だ。超絶的なデータ分析から見えてくるプロ野球の奥深い真実。

目次
はじめに
第1章 最後の4割打者テッド・ウィリアムズ
最終戦で正真正銘の4割に/わすか185安打/四球の多さが決め手/イチローは四球を選ばないし、選べない/長距離砲+鈍足が四球を呼び込む/チームで孤高の強打者であること/「35%」を巡る攻防/初球を95%打たなかった理由/ウィリアムズ式「バッティングの3原則」/自分を変えないこと
第2章 「対右投手」と「固め打ち」
ウィリアムズ2度目の4割が阻まれた理由/右投手が得意な左打者が有利/21世紀最高の打率を残した内川聖一/ディマジオの4割挑戦/“打撃のカリスマ”ロジャース・ホーンスビー/4打数以上の試合でマルチヒットを重ねること/投手の分業化が4割を困難に/ボールの質も変化/本塁打、三振、4割のトレードオフ/変化球の進歩/ヤシエル・プイーグの予測された失速/ロッド・カルー、ラリー・ウォーカー/惜しくも4割を逃したトニー・グウィン/「四球を持てるイチロー」/野球に尽くした人生
第3章 「巨人の4番」に4割は無理
4割不在の日本プロ野球/右を打ったバース、左を打った長嶋/長嶋は右投手を打てなかった/左足を後ろに引く打法/クソボールを打ってこその長嶋/クロマティの4割未遂は「騒がれない」のが原因?/広瀬、金城、内川/4割が射程内だったバース/数字が語る王貞治の凄さ/V9は「飛ばないボールの時代」だった
第4章 メジャーリーグのヒットメーカーたち
「4割を打っていた」ウェイド・ボッグスとトニー・グウィン/盗塁が少なく四球が取れた2番打者/スプレーヒッターが四球を選んでも限界が/試合数、打席数の少ないほうが有利/「もっとも嫌われたプレーヤー」タイ・カッブ/ナポレオン・ラジョイの4割/史上初のルーキーで4割を残したシューレス・ジョー・ジャクソン/ベーブ・ルースは4割を打てた?/「鉄人」ルー・ゲーリック/規定打席を満たし戦後唯一の4割を打ったトッド・ヘルトン/打者有利の本拠地/セーフコ・フィールドで打てなかったイチロー/敬遠四球禍に遭ったバリー・ボンズ
第5章 イチロー、そして4割の可能性を秘めた打者たち
1994年に打順1番で・402/2004年の後半戦では4割/高校時代の成績/左腕より右腕を攻略せよ/高打率打者のヒットは追い込まれる前が70%/ファーストストライク打ち精度が落ちている/0ストライクで・520を打ったバース/2ストライクの打率で3割5分を目指せ/2ストライクでも高打率を残した張本と落合/好対照な長嶋茂雄と王貞治/2013年の対右腕打率1位は楽天・岡島/三振しない青木宣親/ジーター、A・ロッド、プホルス/対右腕4割を打っているジョシュ・ハミルトン/4割にもっとも近いメジャーリーガー、マウアー
第6章 プロ野球黎明期の4割打者
プロ野球初代のリーディングヒッター/タイガースの4割打者小川年安/失敗の外国人第1号は4割打者/中島治康の三冠王/アジアで唯一の4割を残した白仁天
4割達成の可能性を秘めた現役打者リスト

書誌情報

読み仮名 ヨンワリハウテル
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-610562-3
C-CODE 0275
整理番号 562
ジャンル スポーツ
定価 748円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2014/09/19

蘊蓄倉庫

4割を3回達成した男

 近代メジャーリーグで1人だけ、4割を3回も達成した打者がいます。カージナルスなどで活躍したロジャース・ホーンスビー。この選手は徹底した努力の人で、酒、たばこをいっさいやらず、野球一筋の人生を送りました。「目に悪いから」という理由で映画を見ることすら拒んでいたといいます。
 このホーンスビーにあこがれ、彼にアドバイスを求めてつけ回したのが、マイナーリーガーだった頃のテッド・ウィリアムズ。1941年に4割を達成した、今のところ「最後の4割打者」です。ウィリアムズは、ホーンスビーに教えられた「打ちやすいボールを待つことだ」との教えを忠実に実行。四球攻めにあっても腐らず、「打ちやすいボール」をひたすら待ち続け、三冠王を2度達成するなどの偉大な成績を残しました。
 後年「打撃の神様」と言われたウィリアムズの名声は、こちらも三冠王を2度達成した、もう1人の偉大な4割打者に負うところが少なくないと言えます。
掲載:2014年3月25日

担当編集者のひとこと

「4割」は夢ではない

 バース(.389)、イチロー(.387)、内川(.387)……。「あと少し」まで行った打者は、戦後のプロ野球にも何人かいます。さらに言えば、1989年のクロマティ(巨人)は、96試合を消化した8月20日時点でも4割を維持しており規定打席にも到達。しかし、優勝を争っていたチーム事情もあり試合に出続け、最終的には.378で終わりました。
 戦後のメジャーリーグ最高打率は、1994年のトニー・グウィン(パドレス)による.394。やはり4割には到達していません。
 1941年に、レッドソックスのテッド・ウィリアムズが達成して以降、4割を達成した打者はひとりもいない。近代プロ野球において、4割はやはり無理なのでしょうか?
 実は、そんなことはありません。日米の好打者たちのデータをつぶさに検証すれば、4割達成のための条件が浮かび上がってきます。そして、その条件とは、決して無謀な挑戦を意味するものではないのです。キーワードは「対右投手」「固め打ち」「四球」です。現役打者の中にも、4割の可能性を秘めたバッティングスタイルの持ち主がいるのです。
 本書では、超絶的なデータ分析で「夢の4割」の可能性を真剣に追求しました。結論もさることながら、分析の過程で浮かび上がってくる歴代ヒットメーカーたちのバッティング傾向の分析も興味深いものがあります。「悪球打ち」を証明する、長嶋茂雄の3ボールカウント打率4割超え。ホームランの数が三振の数をしばしば上回った王貞治の選球眼。2ストライクカウントでハイアベレージを残している落合博満の勝負強さ。4割を達成したテッド・ウィリアムズの意外なほどの安打数の少なさ……。野球ファンが読めば、必ずや「目から鱗」の発見があるはずです。
 もうすぐシーズンが始まるプロ野球を、さらに面白く見られるようになる一冊です。ぜひご一読ください。

2014/03/25

著者プロフィール

小野俊哉

オノ・トシヤ

1961(昭和36)年岡山県生まれ。早稲田大学理工学部卒業。大学時代にインドをサイクリング走破。味の素、住友金属工業での勤務を経て、2003年にスポーツアクセス社を設立。日米プロ野球の歴史・記録に詳しい。著書に『プロ野球解説者の噓』など。

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