日本人に生まれて、まあよかった
858円(税込)
発売日:2014/05/16
- 新書
- 電子書籍あり
自虐よ、さらば。比較文化史の大家が送る渾身のメッセージ【爽快辛口、本音の日本論!】
日本人に生まれて、まあよかった――夏目漱石の言葉は、昭和を生き抜いた著者の実感でもある。ところがいつの間にか、日本人は自信を失い、日本は「もてない」国になってしまった。戦後の言論界はどこが間違っていたのか? この国を守り、再生させるための秘策とは? 教育、外交、歴史認識、国防……あらゆる分野で求められるのが、自己卑下的な思考からの脱却である。碩学の比較文化史家による、本音の日本論!
書誌情報
読み仮名 | ニホンジンニウマレテマアヨカッタ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 272ページ |
ISBN | 978-4-10-610569-2 |
C-CODE | 0236 |
整理番号 | 569 |
ジャンル | 社会学、ノンフィクション |
定価 | 858円 |
電子書籍 価格 | 660円 |
電子書籍 配信開始日 | 2014/11/21 |
インタビュー/対談/エッセイ
波 2014年6月号より 「もてない日本人」から「世界にもてる日本人」へ
私たちは世界の中の一国民として生きることを余儀なくされている。国際主義に対する反動としての精神の鎖国は許されない。グローバル化の時代に必要な知性とは、内外の人と交際し自分の位置を「三点測量」できる力――相手を知り自分を知り、しかもその上で相手の言葉を使って自己の立場をきちんと説明する力である。外国語による自己表現こそ、これからの日本のエリートに求められる役割だ。日本の死活はそこにかかっている。
近現代史の解釈にしても、理由を明示し、修正すべきは修正せねばならない。西洋本位がすべてではない。ましてや中・韓本位の歴史観が正しいわけでもない。相手の価値基準に従うだけが「良心的」であるはずはない。多くの日本人は「歴史認識」問題の正体がわかり出して苛立ち始めた。ではなぜ今まで上手に反論できないでいたのか。
日本人が陥りやすい精神の落とし穴とは何か。それは外国との接触を強いられると表面化する。
一、世界の中の日本の位置がわからない。日本語でもよく説明できないから、ましてや外国語ではとても相手を納得させることは出来ない。
二、ただ単に自己主張できないばかりか、その場凌ぎに相手の言い分に従ってしまう(国際会議で反対すると意見を求められるので、ついYESと一言で済ませてしまう)。
三、自己の正義を主張するどころか、日本は悪い国だ、という相手の説にうなずく。とりあえずその場は謝っておけばいいという無責任な人にその傾向は顕著である。
四、外国に向けて自己主張は出来ないが、日本国内に向けては「国際派」として国際主義を説く。そうした人は、学者にせよ記者にせよ、日本は劣っているから外国に学べと主張する。それは結構だが、中には日本が悪いから謝罪しろ、と相手の主張に盲従する人も出て来る。この種の「良心的知識人」は、実は右にあげた一、二、三の「不完全日本人」の延長線上の存在で、外国人の日本叩きに協力することで内外に認められようとする。
――そんな「もてない日本人」では精神面でも軍事面でも独立は維持できない。「世界にもてる人材」を養成するにはどうすればよいか。本書では生存戦略としての外国語教育についても説いた。英語も日本人としてのアイデンティティーも身につける事の可能な、一石二鳥の語学教育法をご覧いただきたい。
蘊蓄倉庫
本書のタイトルは、明治42年に夏目漱石が満州と朝鮮を旅して書いたエッセイ「韓満所感」にちなんでいます。そこに、「余は幸にして日本人に生れた」「支那人や朝鮮人に生れなくつて、まあ善かつた」という言葉があるのです。これは、昭和を生き抜いた著者の実感でもあります。
漱石は朝日新聞の社員として日本の植民地を訪ね、『朝日新聞』に「満韓ところどころ」という見聞記を連載しました。同じ時期に、大連で発行されていた『満州日日新聞』に掲載されたのが、この「韓満所感」です。
長年埋もれていた「韓満所感」が昨年、作家・黒川創氏によって公表された時、朝日新聞は先のくだりについて「この当代きっての知識人さえもがこうした無邪気な愛国者として振舞っていたのか、といううそ寒い感慨」に囚われたという、松浦寿輝氏の文芸時評を載せました。
ちなみに本書の終章は「『朝日新聞』を定期購読でお読みになる皆さんへ」と題し、戦後の日本を覆った朝日新聞的な思考パターンに疑義を呈する内容です。本書をご一読いただいた上で、皆様どちらに共感なさるでしょうか。
担当編集者のひとこと
82歳・東大名誉教授による、辛口本音の日本論
かつてヨーロッパ留学のためインド洋を船で3回横切った平川祐弘氏は、「洋行世代」の“生き残り”であり、最後の旧制一高生でもあります。それでも、白髪のほとんどまじらない髪を丁寧になでつけた、英国紳士を思わせる佇まいからは、とても御年82歳の昭和6年生まれには見えません。
また、柔和な笑みを浮かべつつ繰り出す言葉の日本人ばなれした率直さ・激しさは、その美しく平易な翻訳文体と照らし合わせても、意外なものです。ただしそれは、フランス・イタリア・ドイツへの留学を経て、北米・中国・台湾などでも教壇に立ち、常に内と外から日本を見続けてきた比較文化史家、という経歴に鑑みれば違和感はないのかもしれません。
国防、歴史認識、外交、教育――。新刊『日本人に生まれて、まあよかった』では、「人間誰しも国家の基本問題に思いをいたすべきだ、書斎の人間だからといって政治や社会に無関心であってはならない」と考える著者が、昭和の激動を生き抜いた経験と豊かな学識に裏打ちされた思索を、本音のままに綴りました。
「戦後民主主義」と「自虐」、あるいは『朝日新聞』が大好きな向きには耳に痛いことも多々書かれていますが、「右」でも「左」でもない、痛快辛口の日本論です。
2014/05/23
著者プロフィール
平川祐弘
ヒラカワ・スケヒロ
1931(昭和6)年、東京生まれ。東京大学名誉教授、比較文化史家。第一高等学校入学以来、駒場で約半世紀を送る。フランス・イタリア・ドイツに留学し、北米・中国・台湾などで教壇に立つ。著書、訳書多数。主著に『竹山道雄と昭和の時代』『和魂洋才の系譜』など。