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テレビの秘密

佐藤智恵/著

814円(税込)

発売日:2015/04/17

  • 新書

人はなぜ、マツコ・デラックスを見てしまうのか? 経営学の視点から視聴率競争を徹底分析!

人はなぜマツコ・デラックスを見てしまうのか。テレビ東京に学ぶべき弱者の戦略とは何か。「半沢直樹」後継番組はなぜ「半沢化」に失敗したのか。池上彰さんはなぜ“最強”なのか――。国内外のテレビ事情を知り尽くした著者が、経営学の知見を踏まえて裏の裏まで徹底解説。過酷な視聴率競争の勝者と敗者を分析することで、ヒットのセオリーが見えてくる。「今さらテレビなんて」という人にこそ読んで欲しい一冊。

目次
はじめに
I ヒットの鍵は設定が握る
惜しい! 「半沢直樹」後継番組がズレている
「花子とアン」ヒットの裏に“アナ雪の法則”
NHK朝ドラ「マッサン」の“大いなる賭け”
失敗知らず! 「ドクターX」好調のナゼ
なぜ「相棒」の杉下右京は恋をしないのか
II キャスティングはバランス重視
“NHK顔”の勝利 「あさイチ」独走のワケ
W杯の高視聴率は、アイドルのおかげ?
「蛭子さんマネジメント」のスリルと達成感
なぜ『アナ雪』山男の鼻はでかいのか
III マスか、ニッチか、どちらかに決める
「マツコ&有吉」人気の裏に“二層構造”
ヒトはなぜマツコ・デラックスを見てしまうのか
男性がハマる 「孤独のグルメ」“黄金リレー”
迷走? 「ヨルタモリ」にガッカリする理由
なぜ「紅白」は“セット”としてアイドルを使うのか
IV 編成とは戦略のことである
新・お昼の顔 「徹子の部屋」成功のナゼ
困ったときは警察へ 犯罪ドラマ乱立の真相
ウェルチが予言 「からくりTV」終了の理由
真似るな危険! 13年ぶりの「HERO続編」
大増殖! 「世界系」番組が急増するワケ
V イノベーションは辺境から学べ
ノープラン? テレ東“ガチ番組”が起こす奇跡
ハーバード流は「アメトーーク!」で学べ
「池上彰特番」“終了5秒前の奇跡”を見たか?
なぜ池上彰は選挙になると燃えるのか

書誌情報

読み仮名 テレビノヒミツ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書
判型 新潮新書
頁数 224ページ
ISBN 978-4-10-610616-3
C-CODE 0276
整理番号 616
ジャンル マスメディア
定価 814円

インタビュー/対談/エッセイ

朝ドラに見る視聴率の方程式

佐藤智恵

 NHK朝の連続テレビ小説「まれ」がスタートしました。初回の視聴率は21・2%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)。2013年の「あまちゃん」のヒット以来、「ごちそうさん」「花子とアン」「マッサン」と、どの作品も高視聴率を連発し、朝ドラの人気は衰えるところを知りません。
 新しい朝ドラが始まるたびに筆者がチェックするのが、「王道作品」か「変化球作品」かということ。王道作品とは真っ向から視聴率を取りにいくドラマで、変化球作品とは視聴率よりも新しい顧客層を獲得することを重視した冒険的なドラマのことです。
 王道作品は、「おしん」(1983~4年、平均視聴率52・6%を記録)が築いた次の方程式をもとに制作されます。

(貧しい出自+戦中・戦後+職業)×有名女優=高視聴率

「梅ちゃん先生」「花子とアン」などは、まさにこのパターンを踏襲し、成功しました。
 さて、今回の「まれ」。現代劇なので、もちろん変化球作品です。ところが第一週を視聴して、驚きました。何と構造が、「あまちゃん」そっくりなのです!
 3世代の女性がひとつ屋根の下、漁村に住む。主人公の生活は貧しい。父親は頼りなくて、一緒に住んでいない。芸能人(モデルやアイドル)を志す友人がいる。途中から都会編が開始する。主人公は最終的に、小学生女子の憧れの職業(「あまちゃん」ではアイドル、「まれ」ではパティシエ)をめざす……。
 書き出せばキリがありませんが、ここまで「あまちゃん」路線をきっちり踏襲しているとは。もしかして「あまちゃん」は、現代劇の王道作品として位置づけられているのかもしれません。
 このように筆者は、テレビ番組を見ながら、ついつい「この番組は視聴率を獲得するために、どういう戦略をとっているか」を分析してしまいます。NHKと米テレビ局で編成と制作を担当してきたからか、経営コンサルティング会社でメディア企業を担当してきたからか、テレビ番組の裏側を読み解くのが習慣になっているのです。
「なぜマツコ・デラックスさんは視聴率女王となったのか」
「なぜ池上彰さんの選挙番組は高視聴率なのか」
「なぜ『相棒』の人気は衰えないのか」
 ……等々。本書は、テレビの「なぜ」に経営学の視点から答える本です。人気番組にはすべて、視聴者を離さないための戦略が隠されています。反対に、うまくいかない番組には、うまくいかないなりの理由があるのです。
 ドラマからバラエティ、選挙報道まで、分析した番組は約20。筆者のようにテレビが大好きという方から、テレビはあまり見ないという方まで、テレビ番組の意外な奥深さを再認識していただければ幸いです。

(さとう・ちえ コンサルタント)
波 2015年5月号より

蘊蓄倉庫

ハーバード流と「アメトーーク!」の関係

「アメトーーク!」といえば、2003年に放送開始し、深夜枠ながらも10%を超える視聴率を獲得しているお笑い番組です(テレビ朝日系)。アメリカの経営大学院の面接官も務める著者によれば、あの人気番組と名門ハーバードビジネススクールの授業には、実は大きな共通点があるのだとか。
 その共通点とは、雛壇でのトーク。雛壇とは階段状になっているゲスト席のことですが、ハーバードビジネススクールの教室にも同様のレイアウトで90人の学生が並びます。司会=雨上がり決死隊の役割を務めるのが教授です。
 学生たちは80分間、ひとつのテーマでひたすらトークし、発言によって採点されます。仮に出川哲朗さんのような役目であっても、何も話さないよりはずっとマシ、なのだとか。「自分の役割を理解して、議論に積極的に参加する」という姿勢を守れば、会社の会議でも一目置かれる存在になれそうです。
掲載:2015年4月24日

担当編集者のひとこと

テレビ愛×経営学

 本書の著者・佐藤智恵さんは、これまで『外資系の流儀』『ゼロからのMBA』『世界のエリートの「失敗力」』など、多数のビジネス書を上梓してきました。今回のテーマは、毛色が変わって「テレビ」。
 実は、「子どもの頃からテレビが大好きだった」という佐藤さん。テレビ好きが高じて、新卒でNHKのディレクターになりました。アメリカでMBAを取得した後も、経営コンサルタントを経て、外資系のテレビ局で経営や編成に携わっています。現在は、コメンテーターとしてテレビに出演するようにもなり、日米のテレビ業界をあらゆる角度から見ることになりました。
 そんな著者の「テレビ愛」と経営学の知識が遺憾なく詰め込まれたのが本書です。したがって、巷にあふれるテレビコラムとは、ひと味もふた味も違う、ビジネス書としても読める一冊となっています。
 ハーバードビジネススクールと「アメトーーク!」、ジャック・ウェルチと「からくりTV」がそれぞれ関連づけられたかと思うと、「孤独のグルメ」の通な楽しみ方や、「相棒」の杉下右京が恋をしない理由が語られる――といった具合です。
 硬軟取り混ぜた5章23本のコラムには、どちらかというとテレビをあまり見ない部類に入る担当者も、ひざを打つことしきり。新書読者にぴったりのテレビ本です。

2015/04/24

著者プロフィール

佐藤智恵

サトウ・チエ

1970(昭和45)年兵庫県生まれ。東京大学教養学部卒業後、NHK入局。2001年コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。ボストンコンサルティンググループなどを経て作家・コンサルタントとして独立。『ハーバードでいちばん人気の国・日本』など著書多数。

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