日本を愛した植民地―南洋パラオの真実―
858円(税込)
発売日:2015/09/17
- 新書
- 電子書籍あり
なぜ彼らは、戦後も日本を恨まなかったのか? 貴重な証言で甦る「日本統治時代」の実像。
大日本帝国の統治下にあったパラオ諸島を含む南洋の島々は、戦争で甚大な被害を受けた。それでも「日本の時代が一番良かった」と島民は言う。その前のドイツ支配下、あるいは戦後のアメリカの影響下とはどこが違うのか。古老の話から浮かび上がるのは、教育、経済、インフラ、文化をもたらした日本からの移民と島民との穏やかで豊かな日々だった──数多くの貴重な証言から、植民地支配に新たな視点を提示する一冊。
証言者
書誌情報
読み仮名 | ニホンヲアイシタショクミンチナンヨウパラオノシンジツ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 256ページ |
ISBN | 978-4-10-610635-4 |
C-CODE | 0221 |
整理番号 | 635 |
ジャンル | 日本史 |
定価 | 858円 |
電子書籍 価格 | 660円 |
電子書籍 配信開始日 | 2016/03/11 |
蘊蓄倉庫
大日本帝国の統治下にあったパラオ諸島を含む南洋の島々は、日本の戦争に巻き込まれて甚大な被害を受けました。それでも「日本の時代が一番良かった」と島民たちは言います。その理由は様々ですが、日本がインフラを整え、教育を広め、富をもたらしたことが大きかったのは事実でしょう。
戦前のパラオには、病院や学校はもちろんのこと百貨店、映画館、野球場までも日本の資本で作られていました。
もちろん、それだけならば同様の植民地は他にもあります。いまだに日本を恨んでいないのには他の要因もあるのです。そのへんはぜひ『日本を愛した植民地』で。
担当編集者のひとこと
「日本時代は楽しかった」
私が子供の頃、戦時中の人気漫画が復刻出版されていました。『冒険ダン吉』もその一冊です。
日本人のダン吉少年が乗っていた船が、難破したとか何とかそういう理由で南方の島に漂着。そこには肌の黒い原住民が多くいます。
ダン吉はあっという間に知恵で彼らを制圧し、その島の「王」となり、統治をします。たしかダン吉は住民のことを「蛮公」と読んでいた気がします。顔がみんな似たようなもんだということか、背中に番号を振って「1号」「2号」という調子で呼んでいました。名前ではなく番号で呼んでいたのです。人格も何もあったもんじゃありません。
あの頃はおおらかだったのでしょうが、今ではこんなストーリー、多分あまりにも政治的に正しくなさすぎるということになるでしょう。とても愉快な漫画『冒険ダン吉』を店頭で見かけることは今はありません。
このダン吉のストーリーに多大なインスピレーションを与えていたのは、戦前の日本によるパラオ等、南洋諸島の統治です。
『冒険ダン吉』は漫画ですから、ダン吉と蛮公たちは和気あいあいと仲良く暮らしていましたが、実際にはもっとギスギスしたものだったのではないか。
何となくそんな風に思っていましたが、本書『日本を愛した植民地』を読むと、実際にも驚くほど和気あいあいと暮らしていたことがよくわかります。
著者が取材した島の古老たちは、一様に日本の時代を懐かしみ、「あの頃は良かった」と語っています。「日本時代は楽しい時代だったのよ。私は本当に感謝してますよ」とまで言う人もいました。
ダン吉ほどひどくはないにしても、当時、日本人が島民の上に立っていたのは事実です。それでも彼らがなぜ日本を恨まず、好意を持ち続けてくれているのか。
丹念な聞き取りによって、その謎を著者は解き明かしてくれます。
植民地支配についての見方が変わる一冊です。
2015/09/25
著者プロフィール
荒井利子
アライ・トシコ
東京都生まれ。ニューヨーク大学大学院社会学部修士課程卒業後、外資系コンサルティング会社勤務を経てハワイ大学大学院社会学部博士課程修了。在学中同大学及び東西センターの助手として勤務。ハーバード大学及びカリフォルニア大学の学会にて本書のもととなる論文を発表。